カイルくんの三角関係(1)
「あーあ、どうすりゃ女にモテるのかなあ」
入鹿は、いつも下らないことばかり言っている。
おれはこいつの親友だと思うが、こいつの下品で短絡的で即物的なところにはうんざりだ。
おれの住み家までやってきて、またこれだ。おまえはそのことしか考えていないのか。
「口説き文句を洗練させればいいんじゃないか」
おれは呆れながらも、こうアドバイスした。
「そうなんだけど、ぼくって口下手じゃん。そんなにうまいこと言えないし」
「じゃあ、あきらめろよ」
「ぼく、考えたんだけどさ」
「ああ?」
「やっぱり、経験値が少ないのが問題だと思うんだよな。だから緊張しちゃうし」
「それはそうだな」
「だから、カイル、ぼくの練習相手になってくれ!」
「ま、待て待て! 男と女じゃちがうだろうが。わけのわからないことを言うな!」
「ぼくのことが嫌いなのか?」
「そうじゃないが……」
「だったらいいだろ。ぼくたち、親友じゃないか」
「親友だけど、そんな……」
「だって! このままじゃ、ぼく、一生童貞じゃないか。カイルはこんなぼくをかわいそうに思わないのかよ」
「それはおれだって同じだ」
おれにはまだ正式なパートナーがいない。そろそろ良い人を見つけたいと思っていたけれど。
「なあ、だからさ。お互い、なぐさめ合おうぜ。いいだろ」
入鹿はおれに体をすりつけ、熱い欲望をぶつけてきた。おれを相手に、女にしてやりたいことを全部してくる。
おれはそんな入鹿に触れられているうち、なんだかおかしな気分になってきた。
そして、おれたちは熱い一夜を過ごした……。
「なあ、どうだ。なかなか良かっただろ」
入鹿は得意げにいう。
「もう、こんなことはしないからな」
「どうして? おまえも良かったんだろ」
「練習はもうすんだだろ! 今度は女を相手にしろよ!」
「へっへー、ありがとな」
入鹿は軽くいい、さっさとおれの家を出ていった。
どうせ女の尻でも追いかけにいったのだろう。
はっ、バカバカしい。腹が減っただけだ。