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横須賀米軍基地のアメリカ空母で起きたタイムスリップ事件  作者: 伴野明 73歳(凄いでしょう)本業は町工場のオヤジ
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1:横須賀米軍基地、お地蔵さん

横須賀には米軍基地の正面に「ドブイタ通り」という、とても日本とは思えない場所があります。

そこは戦後、米兵が起こす事件、地元ヤクザの抗争、反米学生運動の騒乱、麻薬など、あらゆる抗争の坩堝でした。しかし本当に恐ろしいのは横須賀に根付いた霊力です。この話はその一端に過ぎません。

 基地の町、横須賀には、年に一回、「フレンドシップデー」という、米軍基地に一般人が入れる日がある。その日は毎年8月前半だが明確には決まっていない。無い年もある、それは世界情勢による。


「勇気、電車来たぞ」貴じいさんがオレを呼んでる。

「オッケー」、オレは買ったばかりのエナジードリンクを持ったまま電車待ちの列に並んだ。

「車で行こうぜ」と、言ったんだが、貴じいさんが「基地の周りには駐車場がねえ、あっても料金高いぞ」というので、電車で行くことになったんだ。


 京浜急行線「汐入駅」で降りた。

「基地はあっち」駅のホームで貴じいさんが指さす。

 貴じいさんが言うには、横須賀生まれの横須賀育ち、「通称、須賀(すか)っ子」ていう人種がいるらしい、「オレが須賀っ子の代表だ」って、じいさんは胸を張る。

「何が『須賀っ子』なんだよ」ってオレが聞くと、「そのうち分かる、いいから付いて来い」って駅の階段を駆け下りた。

「急げば基地まで歩って10分だけど、ドブイタ通りを見るか」って言うんで、付いてゆく。


「ドブイタ通り」って噂には聞いてた。「♪これっきり、これっきり、もう、これっきりーですか♪」って歌う、山口百恵の「横須賀ストーリー」の舞台だろ、オレでも知ってる。

 5分ぐらい歩いて貴じいが止まった。腰に手を当て、指さしてる。

「ここがドブイタの入り口だ」って貴じいが、ボソッと言った。

 左右に英語の看板がついた小さな店がずっと並んでる。確かに普通の町並みじゃねえ。

「ドブイタ通りはここからずっと続くの?」って聞くと、「通り、は言葉が余計だ、ただドブイタって言え」、貴じいはちょっとムカついてテンションが上がってるみたい。

「須賀っ子はただ『ドブイタ』って呼ぶのさ、『通り』はいらねえ」

「わかったよ、オレも貴じいさんの血を引いてるから『須賀っ子』です。

 オレはハイテンションの貴じいに合わせることにした。


「オッケー行くぞ」、じいさんに続いて50mぐらい歩くと、右側に屋根の付いたお地蔵さんがあった。

「ねえ、なんでこんなとこにお地蔵さんがあるのよ?」と言って足を止めた。

「米兵向けの店の並びに『お地蔵さん?』かよ、究極のミスマッチじゃん」と思う。

「それ、正直なところ、オレも歴史知らねえんだ、戦後出来たと思ったんだが、どうも江戸時代ぐらいから有るみたいだ、明治、大正、昭和、平成をずっとここでドブイタを見てきたんだな……」なんと貴じいさんも知らないみたい、オレはちょっと興味が沸いてきた。中央の石碑に何が書いてあるかのぞき込んだ。

「むやみに触るんじゃねえ、祟りがあるぞ」

 貴じいさんが焦ってる。「じいさんだなぁ、祟りがあったってお地蔵さんぐらいなら大した事はないんじゃない」と、オレは無視して石碑の裏に回り込んだ。

「裏にも何か書いてあるみたい、奥はちょっと暗いなぁ、何か照明が欲しい」と、思った時、「グラッ」と来た。

「地震だ」、「グラッ」、「グラッ」、だんだん揺れが大きくなってきた。

「おいっ勇気、すぐ出てこい、危ねえぞ」、貴じいさんが叫んでる。

 幸い揺れはすぐ止まった。

「震度3以上、4も越えたな……」オレはそう思いつつ、フラつきながらお地蔵さんを出た。

「フウッ、けっこうデカかったな」と、貴じいさんと顔を見合わせる。

 回りを見ると、バイクが倒れてたり、看板が傾いたり、被害というほどじゃないが、町中がワサワサしてる。


「一応収まったみたい、もうちょっと酷かったら危なかったな……」、オレはそう言うと、もう一度お地蔵さんに入った。なんとしても石碑の裏の文字を読みたかったんだ。

「バカ、止めとけ」と、貴じいさんが追って入ってきた。

「あとちょっとで見れるから」とオレは石碑のてっぺんに手を掛けて裏へ回ろうとした。

「止めとけ、っつうのに」貴じいさんがオレの腰のベルトを掴んで止めようした。

「ボンッ」何かが破裂したような音、その瞬間、「ドーン」と衝撃が走った。

「ドワーッ」という音と同時に地面が浮き上がったのを感じた。

「ドンッ、ドンッ、ドンッ」、揺れじゃない、突き上げだ、地面がもう、ムチャクチャに動いてる。

「第二波だ」と思った瞬間、石碑が「グラッ」と来た。

「危ねえ」の「あ」を言おうとした瞬間、石碑が倒れてきた。

「ウエッ」悲鳴とも言えない声を出して、オレとじいさんは石碑の下敷きになった。


「…………」、「…………」

 時間の観念が消えてる、どのくらい経ったのか、今が何時なのか分からない。

 意識はある。見ると、貴じいさんが倒れてる。ケガはないようだ。

「貴さん、貴さん」、オレはじいさんの肩を揺さぶった。

「ん……」程なくじいさんは目を覚ました。

「おう、勇気、大丈夫かよ……」

「大丈夫、貴さんこそ大丈夫?」

 地震は収まってた。ちょっと寝ぼけた感じがだんだん抜けてきた。石碑は倒れているが、オレたち、直撃は受けなかったみたい。ケガもない。

「勇気、オレ、目がおかしい、なんか変だぞ」と、貴じいさんがつぶやく。

 オレはあたりをグルッと見回す。確かに変だ。町全体がちょっと燻ったような、

モヤが掛かったような変な色合いだ。


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