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第3話 動き出した針



 リリアは家庭教師のアンから裁縫やマナーに関する教育を受けていた。

 リリアが学んだ最初の教訓は、マナーの重要性だった。アンが彼女に語った言葉は深い印象を残した。


「リリア、良いマナーは人々との交流においての重要なキーなのです。それは礼儀正しさ、尊重、そして他人への思いやりを示すものです。」


 この言葉を胸に、7歳のリリアはマナーについて学ぶことを決意した。テーブルマナーや社交的な場での振る舞い、礼儀正しい言葉遣いなど、実践してきた。


 リリアは挨拶を正確に行い、食事の際には適切なフォークやナイフの使い方を心得た。


 しかし、エレノアはそんなリリアに興味を示さず、父親のローランド伯爵も何事もないような顔をした。


「伯爵家の令嬢として当然のことだ」


 彼の第一声はいつもそれだった。

 リリアは伯爵家でそのような扱いを受け、マナーの重要性など忘れてしまった。


 しかし、第二の人生を歩み始めた12歳のリリアは強い覚悟を持った。

 絶対にマナーや礼儀正しい振る舞いを習得し、素晴らしい伯爵家令嬢リリア・ヴァンダーヘイデンとしてその名を轟かせてみせるわ!


 一方で、リリアがマナーや裁縫を学ぶことに意義を見いだしたことを確認したアンは、リリアに外部との交流を持つことを勧めた。


「リリア、貴方は最近とても頑張っていると思うの。そんな素晴らしい貴方に私のお友達を紹介したいのだけれど、どうかしら?」

 

「是非紹介してほしいです!」


 リリアは輝くエメラルドグリーンの瞳をさらに大きくして答えた。喜んでいることはアンの目から見ても明らかだった。

 リリアはこの伯爵邸で可哀想な扱いを受けていると聞く。きっとリリアが我儘を言うのも、伯爵達に気づいてほしいだけなのよ。

 アンはリリアの置かれた立場をリリアから聞き、同情した。


 アンの同情を誘うのもリリアの戦略の一つであった。リリアは伯爵邸で良い扱いを受けていない。エレノア夫人やローランド伯爵から冷たい対応を受けるリリアを、執事や侍女達も遠ざけた。


 伯爵邸では私の味方はいない。まずは外堀から埋めていくのよ。

 リリアはアンの腕の中で微笑を浮かべた。


 ――――――

 

 アンの紹介でリリアは他の貴族令嬢たちとも交流を深めるようになった。


「リリア様はお噂とは違うわ!私勘違いしていたみたいです」

「私もです。礼儀正しく穏やかなリリア様のこと、どうしてあのような噂が流れていたのか分からないわ」


 アンの紹介で伯爵邸を訪れた令嬢達は口々にそう言った。

 噂の一部は事実なんだけどね……。


 リリアは苦笑いしながら答えた。


「私は最近までマナーも良くなかったですし、悪く思われるのは仕方ないですわ」


「それでも、家族に反抗して妹のクララ様を虐めているだなんて!酷い噂だわ!」

「そうよ!そうよ!」


「あはは……。怒っていただけてありがたいです。そのような噂が無くなるよう、より精進いたします」


「私達がそのような話は嘘だと言っておきます!」


「皆様、ありがとう。とても嬉しいわ」


 事実だから耳が痛いけれど、私の良い噂が回ってくれるなら嬉しいことこの上ないわ。

 今は良き令嬢リリア・ヴァンダーヘイデンなのだから、悪い噂も、噂として扱われるようにしないとね。

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