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プロローグ

 私の人生というのはよく分からなかった。

 親に言われるままに生きていた。良い会社に就職するために、良い大学に行きなさいと常々言われていた。だから当然、塾に行って、受験勉強をしていた。かなり恵まれていた環境だ。

 もともと勉強がとても苦手というわけではなくて、受験勉強は時々つまずきながらも、順調に進んでいた。だから第一志望のそれなりの国立大学に合格すると思っていた。けど、国公立大学に事実上必須の共通テストが、朝のニュースになるくらい、たまたま難しい年だったみたいで、数学の点数が見たことがないくらい低い点数だった。けど、あんまり落ち込まなかった。本気で向き合っていなかったからだと思う。

 時は過ぎて、3月のはじめごろ。国公立大学の合格発表があった。けど私の受験番号はなかった。けれど、あまり落ち込まなかった。自宅からはかなり遠い国立大学の後期日程も申し込んでいたけど、私は受けなかった。近くの私立大学に合格していたからだ。「遠くの国公立行ったら、あんたの生活が滅茶苦茶になって大学生活どころじゃなくなる」と言われていたからだ。まったくその通りだと思う。後期日程は私立大学がダメだった時の最後の最後のセーフティーネットだった。


 そして私は私立大学に進学した。仲の良かった子が同じ大学の学部に進学していて、その子についていってサークルとかに入った。それなりに楽しい大学生活を過ごすことができたと思う。

 就職活動は大変だった。けれど最後の最後に一社から採用通知が来た。私はそこに就職することになった。


 就職先ではかなりの激務だったのかもしれない。しれない、と言うのはもっと働いている人がいると思うからだ。私の職場は毎日15時間勤務は当たり前で、土日も出勤していた。原因は当たり前だけど、スケジュールの管理ミス。人数に対しての仕事量が多すぎるからだ。下請けの会社だから、断ったら次の仕事が回ってくるか分からない。そういう心理が働いて、ついつい仕事を受けてしまっていた。仕方のないことだと思う。


 いつものように残業をしていたら、突然目の前が真っ暗になった。しばらく真っ暗の中を彷徨っていたら、開けた場所に立っていた。

 そこには一目でわかるような神々しい光を纏った人がいた。神様だった。


「かわいそうに。あなたは過労死してしまいました」


「そうなんですか」


 私は淡々と答えていた。何の感情も浮かばなかった。私自身不思議に思う。


「あなたは次の人生を歩みたいですか? それともゆっくりとしたいですか?」


 どうしたらいいんだろう。


「これはあなた自身で決めてください。これはあなたの道です」


 あなた自身で決めてください、と言われても。というのが正直なところだった。


「なら、ゆっくりと行きたいです」


 自然と口から出ていた言葉だった。


「わかりました。次に目が覚めたとき、あなたは開けた草原に横たわっていると思います。家もつけているので、そこで第二の人生をゆっくりと楽しんでください。あなたの第二の人生に幸多からんことを」


 神様が言った通り。目が覚めたら草原に横たわっていた。

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