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お付き合いします!

後半に残酷描写有り。




 返り討ちにした過激派の子息達は、王立騎士団に身柄を拘束されて連行された。


 彼らは退学となり、彼らの親やその他の過激派共々罰せられる。


「いやぁ、馬鹿ばっかりで助かったなぁ。君のおかげで難なく全員捕らえることができて感謝するよ」

「どういたしまして」


 殿下の言うとおり、てっとり早く目的を達成することしか考えていない馬鹿揃いでよかった。


 同じクラス、同じ学園内に奴らがいることに耐えきれず、こちらから手を出してしまう前に来てくれて、本当に感謝だ。


 これで不穏分子が綺麗さっぱりと一掃された。

 リアーナが襲撃される事もなくなる。

 面倒ごとが片付いて、すっきり晴れやかな気分だ。


 ……と言いたいところだが、早々に新たな面倒ごとが始まりそうだ。

 陰からひっそりとこちらの様子を窺っている人影を見つけてしまったから。


 事後処理が終わり、殿下は迎えに来た別の護衛と共に帰って行った。


「では行こうか。聞きたいことは山ほどある」


 俺はクロムウェル先生に腕をがしっと掴まれ、彼の研究室へ連行された。


 先生は魔具によって多量の魔力を感知し、発生元である裏庭の奥へと急いだらしい。

 そして、現場に到着した彼は陰からひっそり見ていた。

 俺が癒しの光の力を使っている姿を。


 さすがにもう誤魔化しようがない。

 知られたからには観念して、しばらく彼の気が済むまで研究に付き合う覚悟でいる。


 今すぐにという勢いだったけど、さすがに今日はさっさと帰りたい。

 翌日からにしてほしいと頼んだ。


 寮に帰ってシャワーをあびて着替えると、ダグラスさんの部屋を訪れ、報告を済ませる。


 そして翌日の朝。リアーナに報告した。


「わぁ! やりましたね。それでは今日の放課後は、返り討ち成功のお祝いをしましょう」


 目をきらきらと輝かせるリアーナの提案に、二つ返事をしたい。


 だけど放課後はすでに予定がある。

 クロムウェル先生に見られてしまったことも報告すると、リアーナは苦笑いした。


「あー……それは仕方ありませんね。先生が満足するまで付き合わないと、執着が増して更に大変なことになりますから」

「だよね……」


 リアーナと別れ、残念な気持ちを抱えたまま教室に入る。

 彼女にお祝いしてもらいたかったな。


 始業ベルが鳴り、教師がやってきた。

 クラスメート二人が退学になったという言葉に、教室内はざわついた。


 何があったのだろうと、あちこちから疑問の声が上がる。

 処分が下ったら公になるだろうけど、俺にはどうでもいいことだ。


 俺にとって今重要なのは、早くクロムウェル先生から解放されることだけ。

 いつまでも拘束されていたら、リアーナと触れあう時間が減ってしまうから。



 ***


 帰り際、手荷物をまとめていると、教室内が騒然となった。


 扉の隙間から覗く、全身黒ずくめの男性がいるからだ。

 男性からは、俺に対してねっとりと絡み付くような視線を感じる。


 分かっています。分かっていますから、

 教室まで来ないでください、クロムウェル先生。


 こういう時に限って、リアーナに癒してもらったばかりの、ミステリアスな美形バージョンの先生だ。

 女生徒達の妄想が掻き立てられていくのが手に取るように分かる。


「まぁっ、寝取りですわ!」

「いえっ、三人で仲良くということも……!」

「二人からの愛を受け止めるのね……素敵」



 後方から小さな話し声が聞こえてくる。

 お願いだから、変な妄想はせめて俺がいないところでやってほしい。


 先生には今日の放課後、必ず研究室に行きますと伝えたのに、待ちきれなかったようだ。

 教室まで迎えにきた先生に腕をつかまれて、連行されるように彼の研究室へ向かった。


「それではさっそくこれに魔力を流してもらおうか」

「分かりました」


 手渡された魔具に魔力を流す。

 以前作った、癒しの光を蓄えておく魔具の試作品のようだ。


 どれだけ魔力を流しても、水色の玉は光るわけでも色が変わるわけでもなく、見た目に何の変化も表れない。


 ある程度流し終えると、先生に魔具を手渡した。

 彼はすぐに右手に火の玉を出現させ、魔具に向かって放った。

 火の玉はゆっくりと水晶玉に吸い込まれていく。

 いつものように全体が光るわけではなく、中心に炎が灯ったように見える。


「ほう……なるほど。これは面白い」


 先生は満足気にニヤリと笑った。

 彼は何度も火の玉を放ち、吸い込まれていく様子を観察し続けた。


 早く終わらないかな。


「レイヴィス、君の協力があれば、リアーナが欲している魔具を完成させられるかもしれないぞ」

「えっ!! 本当ですか!?」


 まさかの言葉に前のめりになる。 

 ここに来ることはどうしようもなく面倒で、早く帰りたい気持ちでいっぱいだったが、そんな気持ちは一瞬で吹き飛んだ。


 当たり前だ。

 リアーナのためになるのなら、どんなことだって進んで協力しよう。


「先生、いくらでもお付き合いします!」

「くくっ、もちろん逃がすつもりはないさ」


 怪しげな笑みを浮かべるこの教師が、今は頼もしく見える。



 それからというもの、俺は先生の研究室に足繁く通うこととなった。

 しばらくの間、リアーナと一緒に出掛けたり、鍛錬場に行ったりできない。

 だけど彼女のためなら何とか頑張れる。


 ルーディさんがリアーナに誘いを入れていても、何とか我慢できる。


 放課後や休み時間、俺と先生が研究室で二人きりで何をしているのかと、女生徒達の妄想が更に過熱しているだとか、妄想を詰め込んだ作品が出来上がって配布されているだとか、そんな些末な事も気にしない。


 リアーナのためなら、どんなことだって耐えられる。






 * * *






 クロムウェル先生の研究に付き合うようになり、一週間が過ぎた。

 学園が終わり寮に帰ると、紺色の騎士服に着替え、ダグラスさんと共に学園の敷地外に出た。


 ダグラスさんから、預けて保管してもらっていた剣を受け取る。


 出掛けることはリアーナには内緒だ。

 彼女には、ダグラスさんは今日は私用があって留守にするため、帰宅後は部屋でおとなしく過ごすように伝えてもらってある。


 ダグラスさんと共に町の厩舎で借りた馬に乗り、町の外へと駆けていく。


 行き先は魔の森。

 クロムウェル先生に頼まれた素材を集めるため、大型の魔物を仕留めることが目的だ。


 森の手前で馬を繋ぎ、ダグラスさんと森の奥深くへ歩き進める。

 森が深くなるにつれて霧が濃くなっていく。


 道中出くわした魔物を仕留めながら、大型の魔物が生息するエリアまで辿り着いた。


 大型は個体数が少なく、森の中でもなかなか出会えないようだ。

 諦めずに歩き続ける。


 数分後、複数の気配を感じて立ち止まった。


 前からやって来たのは額に大きな角を持つ三つ目の魔物だ。

 今まで遭遇した魔物とは比べ物にならない程の巨体、それが群れを成してやって来た。


 奴らは俺とダグラスさんを獲物とみなしたようだ。

 息を荒くし、目をぎらつかせてくる。


 さすがに予想だにしていなかった事態に緊張が走った。


 出会えるまで何度でもこの森に足を運ぶつもりでいた。

 まさかこんなにも早く、探していた魔物が見つかるなんて。それも群れで。


 何て幸運なんだ。


 思わず口元が緩んでしまう。


「各自、向かってきた個体を仕留める。手助けは必要ないな」

「もちろんです」


 恐怖心なんてものはなく、むしろ高ぶる気持ちが抑えられない。


 真っ先に襲ってきた魔物の攻撃をかわし、角を根元から抉り落とす。

 呻き声を上げながら怯んだところで、首に向けて刃を振り上げた。


 血飛沫をあげながら巨体は倒れ、息絶えた。

 ダグラスさんのようにスパッと首を切断することはできないけど、素材が手に入ればそれでいい。


 魔物達は仲間がやられたことに怯み、後ずさった。

 自分達が狩られる側だということに気付いたようだ。



「逃がさないよ」


 一体たりとも逃しはしない。

 お前達はリアーナの幸せのため、俺が彼女の笑顔を見るためにその身を捧げないといけない。


 高揚した気持ちを抑えきれないまま、夢中で剣を振るう。

 相手が魔物だと手加減しなくていい。


 どれだけ血飛沫を浴びようがおかまいなしに、その場にいる全てを狩り尽くした。



 ***



 空が少し赤く染まる頃。

 服も手も、どこもかしこも赤に染まった俺は、ピクリとも動かない巨体から素材を取り出していた。


 目玉は特に傷付けないよう、丁寧に。


「帰る前に、湖で血を洗い流そう」

「そうですね。さすがにこのままじゃ帰れませんし」


 ダグラスさんはあまり返り血を浴びていないけど、俺は全身真っ赤。さすがに気持ち悪い。


 帰り道にある湖で血に染まった服や体をできるだけ洗い流す。

 全て綺麗にはならないけど、紺色の服だから目立たない。


 集めた角と目玉もさっと血を洗い流す。

 思った以上の収穫が嬉しくて、すぐに口元が緩んでしまう。


 角も目玉もこれだけあれば、クロムウェル先生も思う存分研究ができるだろう。

 早く先生に渡したいな。


「ふふっ……喜んでくれるかなぁ」


 早く彼女の喜ぶ顔が見たい。それが俺の生き甲斐だから。



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