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王立騎士団へ

 今日は休日で、王立騎士団の本拠地へと出向くことになっている。


 鍛練場の一つを貸し出す条件として、治癒ポーションが必要なほどの怪我を私が癒すことになっているそうだ。


 本人の知らないところで取引が成立していた。

 まぁ頼まれれば癒すし、王立騎士団は一度見学してみたかったので、丁度いいんだけど。


 治癒ポーションの価格はここ数年でどんどん下がっているようだけど、国のお金は民のお金でもあり、節約するにこしたことはない。


 用事が終わったらすぐに鍛練場へ行くつもりなので、紺色の騎士服を着て、ダグラスとレイヴィスと共に向かった。



(わぁ……! すごい人数)


 さすが王立騎士団、人数が辺境伯家の桁違いだ。それなのに統率がとれていて、動きも何だかキビキビしている。


 灰色の服を着た騎士見習いが、全員で一斉に素振りをしている。

 動きまで揃っていてなかなかの迫力だけれど、揃える意味はあるのだろうか。


 おっ、白色の騎士服の騎士達が打ち合いを始めた。

 ここではやはり基本を大事にしているようで、あまり早さのない丁寧な動きだ。


 辺境伯家の騎士団は、鍛練内容は各自何をするも自由で、ゆるい雰囲気だった。

 しっかり体を動かしてさえいれば、鬼ごっこをしていても許されていた。


 鬼ごっこと言っても、鬼のみ木剣での攻撃や魔法攻撃有りの、逃げる方は命がけな鬼ごっこだったけれど。

 捕まった人が次の鬼をする前に、必ず私が癒さないとダメだった。


 ドッジボールもしていたな。

 投げていたのはボール大の鉄の球で、数個同時に投げ合っていた。

 度々流血し、骨が砕けていたから、頻繁に中断して癒さないとダメだった。


 私が聖なる光の力に目覚め、力をしっかり扱えるようになるにつれて、彼らの遊びの過激さが増していった気がする。

 私が不在の今でもやっていないだろうかと、不安になってきた。


(大丈夫かなぁ……)


 辺境に想いを馳せながら鍛錬の様子を眺めていたら、壮年の男性が近づいて来た。


「ここの副団長をしております、モーリスと申します。リアーナ様ですね。お待ちしておりました」

「よろしくお願いいたします。さっそく治癒を始めてよろしいでしょうか」

「はい、怪我をしている者達はあちらで待機しております。よろしくお願いします」


 副団長に着いていくと、怪我人はびしっと横三列に整列して待っていた。


(怪我してるんだから、座って待ってたらいいのに……)


 昨日あった魔物の襲撃で負傷したらしく、皆さんなかなかの大怪我だ。


「それでは一列目の皆さんから順に癒していきます」


 手のひらから出した光の玉を見せながら歩き、左端から順にゆっくりと、流れ作業のように光を当てていった。

 そのまま二列目、三列目と続け、スムーズに癒し終える。


 整列してくれていたから、やりやすかった。

 一同は怪我が治るとざわつきだした。


「静粛に!」


 副団長の一言で、ピタリとざわめきが止んだ。


「まだ不調が残っている人はいますか?」

「該当者は挙手!」


 副団長の堅苦しい声かけに、誰も手をあげなかった。

 今日のお役目はこれで終了だ。


「よろしければ合同訓練に参加しますか?」

「いえ、お気持ちだけで十分です」


 副団長の申し出は丁重にお断りする。

 何事も経験が大事とは思うけれど、全く惹かれないし、楽しくなさそうだから。


 鍛練場を後にしようと出口に向かって歩いていると、騎士見習いの人達は休憩していた。


(お、ルーディ様だ)


 こちらに気づいて両手で大きく手を振ってくれたので、小さく振り返した。


 ここの騎士は大半が男性だけど、女性のグループもいくつかあるようだ。

 ちょっと嬉しくなった。


 手前にいた一つのグループと目があったので会釈する。

 彼女達はふっと鼻で笑い、嫌な感じの笑みを浮かべてこそこそしだした。


 (うわー……感じ悪いな)


 女騎士ってクールで格好いいイメージがあるのに、がっかりだ。

 ちょっともやもやとしながら、王立騎士団の鍛錬場を後にする。


 道中でまた襲撃にあったけれど、ダグラスが難なく片付け、王立騎士団へと引き渡した。

 今回も人数が多かったので、ダグラスの服はそこかしこが破れてしまってボロボロだ。


「ダグラスの騎士服を多めに手配しないといけませんね……」


 このペースだと、彼の着るものがなくなってしまう。


「俺の服は襲撃に備えて多めに手配済みなので問題ありません」

「え? そうでしたか」


 知らなかった。

 まさか襲撃があること前提だったなんて。

 でも、そうだとしても、できるだけ服は節約したい。

 騎士服は特別な生地を使っているから、なかなかのお値段だ。


「次からは私とレイヴィスも参戦しても良いですか?」

「これは護衛の仕事です」


 金色の瞳にギロリとひと睨みされた。

 ダグラスはいつでも真面目だ。


「では、ダグラスを光の膜で包ませてください。あの程度の襲撃なら膜で跳ね返せそうなので、服が節約できます。無駄をなくしましょう」

「……そうですね。では次からそれでお願いします」

「はいっ」


 ようやく許可が下りた。 

 命ではなく服を守る為に力を使う時が来るとは思わなかったけれど。


 レイヴィスも、土魔法などを使い、遠距離から敵の足止めをすることだけ許可してもらった。



 ***



 私達が借りている鍛錬場に着いた。

 今日もレイヴィスとダグラスと打ち合いをして、組手はダグラスに相手をしてもらう。


 彼は遠慮しなくていいと言うと、本当に全く遠慮しない。

 何回も何回も吹っ飛ばされる。


 彼の蹴りを受けると、骨がミシッと音を立てる。

 光の膜を張ってダメージを軽減していてもそれだ。すぐ癒せるからいいけれど。


 レイヴィスが何とも言えない表情で見守っている。


 今日もいっぱい体を動かしてスッキリした。

 寮へ戻るために帰路に着く。


 まだお出掛けしていないので、王都の中心は行ったことがない。

 襲撃が落ち着いてから行こうと思っているのに、落ち着く気配がなく、タイミングをつかめずにいる。


 でももう気にせずに行くつもりだ。

 何人襲ってこようとも、ダグラスの敵ではない。


 帰り道では、相変わらず町行く人からの視線を感じながら歩いた。

 どこに行っても見られてヒソヒソされて、うんざりするだ。


 せっかくスッキリしても、すぐにストレスがたまってしまう。


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