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第七十六話【交渉二】

  「ほー?彼は自分で私に訪問をしたいのか?」


  ユリシーズを送り出したロザは、すぐに領主の屋敷に戻り、書斎に着いて、カマミール大陸では通常通信に使われる、音声を完璧に伝達できる紫水晶を砕くと、数秒後、部屋に威厳ある中年男性の声が響いた。


  「はい、父上」


  「私を信用しておらず、エンフェリとの同盟を望んでいますが、父上と直接会いたがっていることがわかります」


  ロザはうなずいた。


  「南からの大商人が、私に直接会いたがっている?彼はおそらく、今のバミア王国の状況を知っているのでしょう?」


  「エンフェリとモールトンの間に勝者は一つしかいない」


  エンフェリ公爵は不敵に笑うと、 首をかしげて「どうだ?」と傍らの青年を見た。


  「この人を調査するためにアソフィス帝国に部下を送り、名前も彼の行く先も全く同じでない限り、信用することができないです」


  「立身出世の大商人ですから、彼の情報を調べるのは簡単なはずです」


  青年の顔にはほとんど表情がない。


  その青年は、エンフェリ家の長男ロジャース・エンフェリだ。ロジャーズは弟のロザと違い、長年にエンフェリ公爵のもとにいて、すでに上位者の勢いを持っている。


  ロザとロジャースは連絡を取り合っているので、ロザの行動については、細かいことまでロジャーズは知っている。


  「しかし、南方には友人もおらず、ましてやクリスタルを転送しても、こんな長距離は渡れないです」


  「私たちにはそのエネルギーも時間もないのです」


  ロザはこう述べた。


  「しかも、ユリシーズの見せた度量は、アソフィス帝国の刺客では全くありえない、私の勘は間違っていないだろう、彼は本当の大商人であるはずです」


  ロジャースとは親しい間柄ではないが、敵対しているわけでもなく、かなり友好的な関係で、より客観的にこの問題を議論していた。


  「アソフィス帝国であるはずがないことは分かっています。心配なのは北にいる一匹の黒い竜だ」


  ロジャースは頭を下げて手袋をいじりながら、「これだけ長い間、【ディープブルー】の情報がないのだから、恐らくあの青竜は本当に死んでしまったのだ。そうしたら、黒い竜の情報は本当なのではと心配になる」とやさしく言った。


  「いずれにせよ、その一匹の黒竜は、少なくとも、【ディープブルー】よりも強力であろう。古竜……かもしれない」


  ロジャースはそう言って、エンフェリ公爵の方を向いた。


  「父上、貴方は言いました。何事でも、余裕を持つべきです」


  「あの黒竜のために、私たちはもっと…もっと余裕を持たせておく必要があります」


  「父上もご存知でしょう?かつての青竜がどれほど強大だったか、その眷族も負けず劣らず強大で、青竜の軍団は無数の北方同盟を打ち破りました」


  「そして、情報によると、【ディープブルー】は銀髪の精霊に殺され、それに、あの銀髪の精霊は黒竜に従ったらしいです」


  その記憶に顔をしかめながら、ロジャースは説明を続けた。


  「これはつまり……黒竜は銀髪の精霊よりも強力です」


  「その情報が本当だとしたら、そんな強力な黒竜がもう北の荒野を支配しました」


  「それなら父上、巨竜の飽くなき性格からして、あの黒竜の次の目標は北の王国であり、我がバミア王国は最高の目標です」


  「魔法で変装した黒竜であるこのユリシーズが、バミア王国に紛れ込んでいるとしたら?」


  「こうしたら、ユリシーズは【ディープブルー】の宝で十分に富豪になれると考えれば納得がいく」


  ロジャースは「私は彼を信用しない、この際、より慎重になるべきだ」と結論を出した。


  「しかし、巨竜はすべて、宝が好きです」


  「それは……」


  ロザは不安げに言った。


  「愚かな弟よ、カマミールに不可能ことはない」


  「お前は世界の残酷さを知らないだろうが、私は何年も父と一緒にいて、いろいろな場面を見てきたんだ」


  ロジャースは弟の目を見つめながら、一言ずつこう言った。


  「もし、本当にあの黒竜が変装していたら、会ったとたんに私たちは……死ぬぞ」


  ロジャースは警戒心を隠さず、すでに恐れているとさえ言っていい。


  「私は命を賭けたくない」


  兄に強く反対されたロザは、仕方なく父に目を向け、エンフェリ公爵の決断を待った。


  「良い!」


  「ロジャースよ、この数年で大きく成長し、もう一人前になったな」


  エンフェリ公爵は微笑みながらロジャースを見つめ、褒め称えた。


  「しかし……」とエンフェリ公爵は言いながら、顔を落ち着かせ、四角いテーブルをそっと叩いた。


  「しかし、今日のエンフェリ家のニーズも考えなければならない。モールトン家との競争では勝たなければならない」


  「【憶測だけでチャンスを逃してはいけないぞ】ということを忘れないでください」


  「ロザ、ユリシーズに、私が彼の訪問を同意したと伝えてくれ」


  そう言って、エンフェリ公爵はロザにうなずいた。


  「父上!」


  ロジャースは目を見開いて信じられず、声も高くならざるを得なかった。その前にすでに原因と結果を明確に伝え、利害関係を明確に打ち出していたが、まさか父上が最後に本当にそのような決断をするとは思ってもみなかった。


  「ただし、色々なことを考慮し、一人で行くことだけは許可し、あなたの護衛の下に来るようにと伝えてください」


  長男の低い声を聞いても、エンフェリ公爵は振り向かず、ただ手を振ってロジャースを止めると、続けてロザに言った。


  「この条件を明確にし、このユリシーズが同意するかどうかを尋ねてくれ。そして、彼の選択を私に知らせよ」


  エンフェリ公爵の指示はここまで。


  それを聞いたロザはまだ少し不安だったが、 ロジャースはすぐに反応し、「とにかくやってみましょう!」と理解したように言った。


  本当に身分の高い人なら、マジックアイテムを持っていようがいまいが、こんな過酷で理不尽な要求に応じることはないだろうし、自分の命を他人の支配下に置くこともないだろう。


  また、通常であれば、身分の高い人は軽蔑されたと感じ、自分の品位や地位を保つために、そのような要求を拒否するものである。


  しかし、たとえば、あのユリシーズと呼ばれる人の正体が荒野の黒竜であったとしたら、恐らく彼はすぐにうなずきながら、提案を同意する。


  真偽はともかく、やて見たら明らかである。

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