第七十話【ニ匹の黒竜】
荒野、北原始林、コナ川
フェリ二ヤに源を発し、川に沿って、やがてレビン海に流れ込む。乾期になると北の荒野は気候の影響を受け、水源が非常に少なくなるため、荒野の魔物や生き物の多くはコナ川のほとりに集まってくる。
ここは、乾期の影響を受けない唯一の水源だからである。
コナ川は北氷原から流れてきて、荒野とフェリ二ヤ氷原を分けているので、川の下には乾燥した荒野があり、その上には冷たい氷原が広がって、こんな不思議な光景になった。
コナ川のひとところには、岩山の間に隠れた暗くて狭い入り口がかすかに見えるが、中は非常に広く、明らかに丁寧に埋め立てられ、漏斗状で、上部が高く広く、完璧な居場所だ。
ぶく
ぶく
ぶくぶく
口から泡がいくつも出てきた、それは眠っている黒竜だった、左右の二つの角は太くて短く、外側に蛇行している、体にはあまり肉がないが、四肢はがっしりしている、鱗は光沢のない黒で、灰色になっている。
この竜は大きくはなく、大体八メートルほどしかなく、まだ青年竜のようで、かすかな魔力に包まれてる。
彼は熟睡し、その鱗は呼吸とともにピクピクと動いている。
この時、別の黒竜、長い尾は、ワニのように、水中の底流を泳いで揺れ、二つの竜は少し異なっている、この竜は明らかに大きく、ほぼ九メートルで、頭頂の角は細長く、頭蓋骨は寝ている竜よりもずっと鋭く。
これは、雌の青年竜だ。
「タル、タル、起きろ」
雌龍は眠っている黒竜の傍に泳ぎ、じっと立って、しばらくそれを見つめて、そして、彼の頭に爪を叩きつける。
そう言って、彼がまだ眠っているのを見て、雌竜は直接前に出て、前の爪で黒い岩の上に横たわっている竜の頭頂の角をつかんで、後ろ足で立って、全体を拾って、三回揺すった。
この雌龍がとてつもなく強いことは明らかだ。
「ウ……ナジャ」
「起きたぞ!起きたぞ!」
数回揺さぶった後、タルという黒竜は正気に戻り、口を開けて大きな泡を次々と噴き出し、尻尾を地面につけ、手足をかき回す。
「なんだ?」
「私と戦いたいか?」
その様子を見たナジャは二度笑いし、口を開けて牙を見せた。
「ウム………」
タルは首を左右に振った。また面倒なことになるのは嫌だし、単に戦えないだけだ、何度も挑戦してきたのだから。
「荷物をまとめろ、私たちはここを離れる」
ナジャは頭を下げて命令口調で言った。
二匹の小さな黒竜は、六年間の眠りから覚めたばかりのニ匹の若い黒竜は、これから青年期を迎える。
そろそろ他のところに転移する。
竜の間ではよく知られていることだが、親の保護を受けていない幼竜は、あまり長い間に一カ所にとどまっていると、かなり簡単に見つかってしまい、危険を引き寄せてしまうのだ。
「おうー」
タルは不機嫌そうに答えると、自分に属する小さな洞窟に駆け込んだ、集めた金貨を背中の鱗に押し込んだ。
「あぁぁぁ、もうー」
「もしお前がアバドンの半分でも賢くて戦えるなら、私たちはここに隠れてはいないはずだ!」
タルを見て、ナジャは自分の目をカバーし、もう、見えたくない。彼女はこいつがもしかして黒竜の皮を被った獣人なのか疑問に思った。そうでなければ、どうしてこんなにバカのだろう。
兄と別れるとき、兄は一人で出て行き、残りの二匹の幼竜は生き物がより珍しい北へ、原始林の端に沿ってずっとこの場所まで行った。
「あの時、追いついていればいいんじゃん………」と、タルは悔しがった。
その時、現場は混沌としていた。ニ匹の成年竜やそれぞれの眷族の殺し合い、手足は散り、鮮血は流され、若いタルはそんな光景に耐えられず、その場に固まってしまった。
「よくも—そんなことを言って!」
ナジャは唸った。
「その時、お前がただそこに固まったから、私たちはアバドンと離れになったのだ」と、小さな雌龍はまだ恨んでいるのだ。
ナジャは一瞬にして激怒し、タルに飛びかかり、その大きさで圧倒し、鋭い爪で彼の顔をひっかいた。
竜種にとってそんな怪我はどうってことはないのだが、それでもタルは乾いた遠吠えを次から次へと発して協力的である。
しばらくしてナジャが落ち着くと、タルは 「これからどこに行く?」と聞いた。
「アバドンを探しに行くんだ」
「えぇぇぇ?」
「兄は子供の頃から私たちとは違っていて、彼は………何か秘密があるようだ、彼は異常すぎる、今ならきっと私たちを守る力がある」
ナジャはためらいがちに言った。
そう、彼女は子供の頃、兄が吐息や、魔法を使うところを見たことがなかった。しかし、彼は普通の竜とは全く違う、異常に強い体を持っていたのである。また、知恵もその年齢が持つべきものとはかけ離れており、そんな変わった兄は、今はもっと強くなっているに違いない。
「しかし………どのように?もう数年………」
「黙れ!」
「ここに居続けるだけで、どうやって探すんだ?」
ナジャは怒って彼の話を切り捨てた。
そう言って、ナジャは先に洞窟を出て、水面から顔を出すと、翼をはためかせて空へと飛び出した。





