第六十七話【囲まれた?】
数時間後、モールトン家の執事が酒場にやってきてアリスを家まで送り、アリスはなごりおしい気持ちを持って俺と別れを告げ、そして俺は、今度、モールトン家を訪ねることを約束した。
フレアイヤ酒場を出て、エドレ区に戻る途中、レジーナと一緒にテイオン通りに歩いていると、人通りの少ない路地のような場所に入った。
「おや?お客さん何人がいるだな」
俺はちょっと停頓し、それから穏やかに微笑んだ。
「ただの虫だ」
同じことに気づいたレジーナは「チー」と焦って立ち止まった。
こちらが立ち止まるや否や、突然現れたのは、数人の男達。
男達はそのまま道に広がり、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら、俺達の前を五人で塞いだ。
彼らの手には各々武器が握られており、その切っ先はこちらを向いている。
どう見ても仲良く相談しようぜ、って雰囲気ではない。
突然と言っても、俺とレジーナが付けていたことはとっくに気付いていたのだが。
「って、お客さん、何か用ですか?」
俺は両手を広げながら、穏やかな表情で尋ねた。
「ユリシーズ、南からの豪商で、嫁は銀髪を持っている美しいエルフのだ」
「俺たちはこの機会を長い間に待っていた。お前は多くの護衛を雇ったのは知っていたが、今日は一人もいないね」
男の中の内で、巨大な黒い剣を持ったリーダー格らしい一際身体のデカい男が、俺の質問には答えず、独り言を言っていた。
エンフェリ家の次子は既にヒント魔法で支配されていたし、モールトン家の長女は………彼女とは別れたばかりだった。
それに、サンテラスに来てから、多くの貴族とおおむね親しくしている。
では、彼らはただ富を求めていただけなのか?
「もちろん、お前は逃げることを考える必要はないよ。ここで待っているということは、俺たちはちゃんと準備しているということだ」
「ここにいる者は中級か上級並みの力を持っている」
「そして俺は、剣王だ」
俺が黙っていると、あのデカい男は顔をしかめながら、巨大な黒い剣を挙げ肩に担ぎ、親指で自分を指差したまま言った。
中級の人が四人、剣王が一人というわけだ。
中級の力は……大体軍隊の精鋭兵と同じで、上級は軍隊の隊長…………つまり、全員が虫ということか。
剣王?
ちょっと強いの虫だけだ。
「ごめん、お前はただの商人だから、剣王の意味がわからないと思うんだけど」
「とにかく、剣王の力はお前が想像できないのだ」
「だから、金と嫁を捨てれば、見逃してやる」
彼は作り物のような顔で、ため息をついた。
「エルフ奴隷か、なんと素晴らしい!」
その後、彼は欲深な表情を隠さず、俺の横にいるレジーナをじっと見つめた。彼が喜ぶのも無理はない。何しろエルフ奴隷は大きな財産なのだから。
周囲を見渡し、頭を上げた、正面は完全に向こうが塞いでいる、左右は壁だ。
出口は、上しかないか?
飛べたかったら、俺は本体に戻らなければならない、結局のところ、俺は魔法を使えない………もしくは彼女が俺を連れて……………まあ、それは無理だ。
しかし、
俺は横にいる銀髪の少女を見て、彼女は顔をしかめ、顔色が真っ青になって、彼女はおそらく、この人たちが全員が殺されるまで、落ち着けないでしょう。
ヤバいな、彼女は本当に怒ったな…………
でも、彼女が手を出す場合には、かなりヤバくないのだろうか?
恐らく、通りの半分が破壊される。本当に困ったな………
「すみませんが、妻と一緒に帰らせてもらえませんか?」
「ご存知のように、人に親切にするのは常に美徳です」
俺は目の前のデカい男を心から見つめ、少し頭を下げた。
チャンスはほぼないが、できれば戦わないようにしよう、なにしろ相手がどんな大範囲の魔法を使ってくるかわからないのだから。
俺の言葉を聞いて、一瞬に静まり返り、残るは人の呼吸音だけが響き渡る。
「はぁはぁはぁ」
「ハハハハ」
「逃がせと言ったのか?」
「彼は私たちを人に親切にすることを助言した?」
「ハーハハーハー」
しばらくの沈黙の後、「客さん」たちは笑い、嘲笑した。
「お前が金持ちであるだけでなく、ジョーカーであったとは、全く知らなかった」
黒い剣を持った男は、部下ほどには嘲笑しなかったが、かすかに微笑んだ。
「ほおー?なぜそう思われるのですか?冗談とは思えませんよ」
「人の命は儚く短い、それこそ故にいかに尊いか」
「だから、自分の命を大切にするべきだよね」
俺は目の前の数人を慈しむように見つめ、微笑んだ。
八十年前、物乞いからキャングに加わった時から、俺は深く理解した。
魔法のない、魔物もいない世界でも、人の命はこんなに儚いのに、ましてやこのカマミールという危険な世界では?
「もういい、お前の狂言は終わりだ、ユリシーズ」
「やれ、彼を殺してしまえ」
男は、緋色の瞳に焦りを浮かべ、巨大な剣を高く掲げながら、周りの部下たちに指示を出した。
「手を汚すなよ、俺に任せろ」
俺は正面に歩み寄ると同時に、レジーナに言った。
「いいわ、早くしなさい」
俺の言葉を聞いた彼女は、現地に立ってあくびをして、真っ青の顔色が消えた。
チーン
チーン
チーン
チーン
無数の音、まるで武器のぶつかり合いのような、鋼鉄に剣を打ち付けるような音。
実際には、相手の武器が俺の体に接触した音だった。
前回の身体が強化以来、恐らく俺の体は神を超えるので、基本的にどんな武器や攻撃も俺を傷つけることはできない。
しかし…………ちょっとくすぐったい。
「死ね!バースト・チョッパー!」
先頭の男は異変を察知し、周囲の魔力を武器に込めることにした。
一瞬にして巨大な黒い剣が焼け付くような余韻を残しながら襲いかかってきたが、結果は先ほどと何ら変わらなかった。
チーン!
俺の体に接触した後、男は強い反力によって飛び去り、武器も一緒に地面に落ちた。
「どうやら、お前たちは力について何も知らないね」
瞼を上げ、自分を取り囲む四人の「客さん」を見ながら、瞳孔が赤い炎で光り、目に見えない空気の波が、俺の体を原点として彼らに向かって押し寄せてくる。
空中に灼熱の跡が咲き乱れた。
四つの炎が空中に現れ、四人を包み込んで、やがて消えていった。
炎の消滅とともに、四人の「客さん」も消えてしまった。元の位置はわずかに痕跡を残すだけで、彼らが数秒前までまだこの世にいたことを証明した。何しろ、六千度以上の高温は、一瞬にしてすべてを焼き尽くすのに十分なのだから。
「だから、人間は自分の命を大切にする方が良いと思うよ」
「そう思いませんか?」
俺は笑顔でそう言いながら、地面に倒れた背の高い男の方へ歩いていった。
「はい……はい……はい…………あなたの言うとおりです」
「や…や…やめろ……………来ないで…………来ないでくれ」
彼は怖くて武器を手に取ることもできず、断続的に叫びながら後ずさりする。
「さらばだ」
パッチン
目の前の床にいる背の高い男を見下ろし、指を鳴らすと、炎の出現とともに、彼は永遠に眠りについたということだった。





