第四十九話【ディオエウス】
「さて、何を不安に思っているのか見せてもらおうか」
トリクシスが呪文を唱えてクラークの手を引いて、戦場の端に連れて行く。
その直後、トリクシスは眉をひそめた。
二対の吸血鬼の翼を持ったエルフを見て、そのエルフが同時にトリクシスを見て、空中で目が合ったのだ。
「これは…エルフはず……」
クラークは紹介したが、実際にはよくわからなかった。確かにエルフだったが、エルフが姿を変えたので、空中にいる女性がどんな種族かわからなかった。ただ、トリクシスが早めに彼女を殺しなければならないことだけはわかっていた。
「待って」
トリクシスは首を振った。クラークの言葉の間にある緊急性と緊迫感を心に留めず、空中にいる二対の黒い翼の羽を持つエルフを見て、いつもデジャヴを感じていた。
あの金色の瞳、どこかで見たことがあるような……?
でも…いったいどこで?
もうそんなことは考えていない、成竜になったトリクシスは空中からの巨大な魔力を感じることができる、真剣に向き合わなければならない相手だと思っている。
「本当に迷惑をかけたな、小僧」
トリクシスは顔をしかめてクラークを見なかった。
しばらくして、周囲の魔法が再びはじけ、トリクシスは真の姿を現した。
二十一メートルを超えるアクアマリンの巨体が空中に現れたのだ。
しかし、それだけでは終わらず、竜のささやき、暗雲の収束、魔力の噴出、戦場の各地が虚空の扉の大きさで現れる。
扉の向こう側では、轟音に次ぐ轟音、耳をつんざくような叫び声が響き渡り、この戦場が沸騰するように。
亜人も冒険者もリーラン家の軍隊も、一斉に止めて、突然に現れた扉を見つめていた。
次の瞬間、無数の魔物が、唸り声やヒスノイズを上げながら扉から溢れ出し、互いにぶつかり合った。
オーガ、双頭の飛竜、キメラ、地竜獣………………
扉はわずか三十秒しか持たず、信じられないほどの魔力を消費するこの魔法を青竜のマナでも支えきれなかった。
しかし、この三十秒という短い時間の間に、千体以上の新しい魔物が戦場に流れ込んできた。
「我が命令を聞け、我が軍よ………………敵を粉砕せよ!」
竜の咆哮とともに、静かな戦場に再び火がついた。
「突撃せよ!」
「ロアー」
「アンーアンー」
「殺せ!」
竜骨の戦斧を持ったオーガの族長は無数のオーガを率いてケンタウロスや冒険者に突撃し、双頭の飛竜は空中に浮かんで時折強酸を戦場に吐き出し、キメラと地竜獣はリーラン家の軍勢と一緒にリザードマンやコボルトに対抗した。
最後に青竜が翼をかき鳴らし、その巨体が空中にいるレジーナに飛んでいく。
ーーーーーーーーーー
レジーナは、迫り来るトリクシスを軽蔑の眼差しで見つめていた。
姿………………
捻って消える。
トリクシスの真っ直ぐな瞳が狭まり、一対の素足が前触れもなく彼女の背中を踏んでいる。
ポン!
恐ろしい力で、彼女は流星のように地面に叩きつけられた。
煙と埃…
がゆっくりと散っていった。
トリクシスは怒りのあまり頭を上げ、背中の鱗が噛まれた力で剥がれ落ちた。
「よくも…高貴な竜を侮辱してくれたものだ! 雑種!」
空でも揺るがす龍の咆哮で、耳をつんざくように戦場に響いた。
五百メートル以内にいる生物は、魔物であろうと人間であろうと、咆哮でめまいを起こした。
そして、青竜が両翼を羽ばたかせて、周囲にある水の元素が乱舞し、ついには恐ろしい津波を形成し、トリクシスとともに空に舞い上がった。
「侮辱?」
レジーナは右手の人差し指を唇に当て、考え込んでいるようだが、その目はいたって冷静だ。
「いいえ」
「それはお前の光栄だ」
「私に感謝しろ」
そしてこの時、空に着いたトリクシスは魔法の波動を放ち、続いて津波が炸裂した。
津波は空中に浮かぶ肉眼で見える数千万の小さな水弾に分解され、激しく撃ち出された。
「死ね!」
「龍語魔法・蒼い海枯れ」
レジーナは翼を震わせて、裸足で虚空に足を踏み、何千万の魔法に向かって行く。
無数の攻撃がレジーナとぶつかり合おうとしていたが、千分の一秒のうちにレジーナは右手の人差し指を持ち上げて前方に向けた。
「ダーク・エロージョン」
すべての水弾が、まるで時間が止まったかのように空中で停止した。
闇の元素が最初の水弾を染まり、そして
二つ…
三つ…
四つ…
瞬きする間もなく、空中のすべての水弾が黒く染まり、そして後ろに撃たれた。
ターゲットは………………トリクシス
青竜は目の前で起きていることに呆然としていた。まさか相手が自分の攻撃を転換し彼女に向けてくるとは、何があっても考えなかった。
もし機会があれば、彼女はそちのエルフにその魔法を出させたのでしょう。
しかし、今の状況では、そう考えることはできなかった。
「助けて、ディオエウス!」
トリクシスはレジーナの背後の空間に向かって咆哮した。
レジーナの背後の空間に黒い亀裂が入り、それが左右に分かれて拡大していく。
そこからは破壊的な息を持った炎その中に流れ出した。





