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あの男

  ター

  ター

  ター


  医療器具のリズミカルな音が響き渡る。


  老人はベッドに横たわり、天井を見つめながら、自分の人生を振り返っている。


  暗い路地に細かい雨が降り、汚い乞食が一口ずつ捨てられたパンを飲み込んでいる。


  また霧雨の降る夜、青年が引き金を引くと、その冷酷な顔に血が飛び散る。


  中年男性がリムジンから降って、片手を振りながら、ナイフや銃を持った無数の黒服の男たちが、目の前のビルに突撃し、その後、悲鳴は津波のように押し寄せてきた。


  超高層ビルの最上階で、老人はゴブレットを掲げて、都市の喧騒を見下ろした。


 「これが俺の人生?」


  彼はそう思った。


  乞食から、他人の命を勝手に支配する権力者へと、身分が大きく変わったのに。


  それは、ただ、地獄から………もう一つの地獄への旅だった。


  「ハハハハハ」


  「ハハハハ………ハ………ハ」


  彼は子供のように笑った、それはまた、自分の馬鹿げた人生を笑っているようでもあった。


  人生は茶番劇のようなものだ。


  生きるために生き


  死亡ために生き


  彼は一人でこの世に生を受け、一人でこの世を去ること。


  もういい………もう………いいんだ。


  これでいいんだ、これですべてが終わるのだ。


  もし来世があるのなら、また神々に幽閉された人類にはなりたくない。


  もし来世があるのなら、もう一人で生きていくのはやりたくない。


  もし来世があるのなら、天を突いて神々に問いかけたい。


  「な、ぜ」


  そして、老人は息を引き取った。

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