第四話 フレズンの町
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第四話 フレズンの町
なかなか立派だな…
近づくと石造りの5mぐらいの大きな門が聳え立っていた。
「おい、何か来るぞ…」
「源獣か?…でかいな!」
…ん?
門番2人がこっちを見て何か話をしていた。
オストが門に近づくと、門番の1人が前へ出てくる。
「おい、この町へは足一本入れさせないぞ!」
門番のおじさんが槍をこっちに向けて敵意を剥き出しにしてきた。
これはちょっとまずいな…
「おいおい、ちょっと待ってくれ!」
俺はオストから慌てて降りて誤解を解こうとした。
「おまえ、誰だ?何処から出てきた!?」
「俺は冒険者をしている大牙って言うんだけど、この源獣は俺のなんだ!」
「そんな大きい源獣に持ち主がいるだと!?…そんなの聞いた事ないぞ。知ってるか?」
「いや、聞いた事ないな…草馬や電波鳥とかなら店で売ってるが。」
「そうだな。」
2人の門番の話だと誰でも使える特殊な源獣なら店とか売ってるらしいが他の戦う源獣を使役している冒険者はどうやら見た事がないらしい。それか、もしくはいるけど数が少なくて見た事ないかのどっちかだな。
しかし、源獣使いがいなくてもゲームの中では魔獣使いの他にも色々なテイマーがあったはずだ。
この世界がゲームに基づいた世界なら何処かに他のテイマーがいるはずなんだけどな…
「持ち主がいるのは分かった。しかしだ!その源獣を町の中に入れるわけにはいかない。」
「何でだ?」
「考えてみろ、その源獣が入るだけで大騒ぎになる。源獣が入って来たー、襲われるーってな!」
「確かに…だったらどうすればいい?」
「西門に草馬を入れる厩舎があるはず…いや、待てよ。一緒に入れていたら草馬が怖がるかもしれん。すまんが、自分でどうにかしてくれ!」
「そんな…」
(父さん…)
「どうした?」
(お腹空いた〜)
「ちょっと待ってくれ…」
門番に見放されて、どうしようか悩んでいるとオルトにぐったりして乗っていたレインが顔を出した。
「…カースの旦那、…どうにか通らせてくれないか?」
「レインじゃないか!どうかしたのか?」
「…いや、これには色々あってな。…それよりダメなのか?」
「レインでも、こればっかりはダメなんだ!」
「そうか…」
どうやら、レインと門番のおじさんは知り合いみたいだ。
レイン、諦めるの早すぎないか…
もう少し粘ってくれても…
はぁー、仕方ない。
諦めたその時、門番のおじさんが口を開いた。
「それより、レイン…アドルドと一緒に出てたんじゃないのか?」
「…あぁ、出たよ。」
「見た感じ、いないみたいだが…」
「いや、俺の後ろで気絶してるよ…」
アドルドはまだ気絶して寝転がっている。
そして、レインは話してるうちに少しずつ良くなってきた。
「カースの旦那、少し大牙と向こうでどうするか決めてくるからまた来るわ…」
「レイン、どうかしたのか?」
レインはオストからゆっくり降りてきて自分で歩けるぐらいに治っていた。
「大牙、少し向こうに行こう。」
俺たちは門から離れて見えなくなった所で作戦会議を始めた。
「今のままなら町へは入れない。何か方法があるか?」
「うーん、特に思いつかないな…」
「そうか、ならこれを使ってみるか?」
レインは懐から布袋を取り出して、その中から明らかに袋に入らなそうで手で持てそうな鳥籠より小さめのケージを取り出した。
「ケージ?」
「いや、魔源具だが。といっても源力で動くアイテムを総称で魔源具と言うんだけどな。これはそっちの世界でケージって言うのか?」
「そうだな。その魔源具?がどうかしたか?」
「あぁ、少し前にrank7の人と一緒にダンジョンへ行ってそこのボスが落したんだが源獣を捕まえる物らしいんだが使い道が無くてな、俺が貰ったんだ。」
「えっ、ダンジョンってあるのか!?」
「おい、よせ。そんなに顔を近付けるなよ!」
「悪い悪い!」
あまりにもダンジョンという言葉に興奮し過ぎてしまった。
なんといっても、ダンジョンには魅力がいっぱい詰まっている。
珍しいアイテムや金銀財宝、特殊な武器など涎が止まらない…
まぁ、ゲームの中の話だけど。
この世界のダンジョンではどんな事が待ち受けているのか今からワクワクが止まらない。
「大牙、ヤバイ顔してるぞ…大丈夫か?」
「あぁ、すまん!ちょっと考え事してたわ!」
「とりあえず、これ使ってみてくれよ。」
レインは手に持っている魔源具を渡してきた。
「分かったよ、遠慮なく使わせてもらうな。で、これどうやって使うんだ?」
「そこの扉を開けて源獣が入ろうとすると捕獲出来るらしいぞ。」
その魔源具を見ると、確かに扉がある。
しかし、小さすぎないか?
縦10cm横5cmぐらいの小さな扉だった。
まぁ、こういう世界の常識は理屈じゃない気がするし、俺が知ってる常識は全て覆されるに違いない。
この魔源具も何らかの非常識が起きてオストが入るんだろうな…
「なるほどな、オストが扉から入ると中に入って持ち運べる様になるって事か?」
「そういうことだな!どうなるか分からんがやって損はないだろ?」
「確かにな!じゃあ、使うぞ?後で返せとか言うなよ!?」
「あぁ、言わないよ。やってみてくれ!」
「なぁ、オスト」
(なーに?…父さん、僕お腹減ってなんかお肉食べたーい!)
「お肉あげるから、ちょっとこの中に入ってくれないか?」
なんか、食べ物で釣って悪いけど入ってくれないかな。
(いいよー、お肉食べるぅー)
オスト、今の状況なら素直でありがたいけど単純過ぎてこの先他の奴についていかないか心配だよ…
俺はオストに魔源具を向けて、扉を開けた。
すると、扉の空いた空間がグルグルと中心に向かって渦巻いていて吸い込まれそうな入口だった。
オストは嘴からその入口に入ると吸い込まれる様に中へ入っていった。
「おぉ!レインこれって」
「おぅ、成功だな!」
オストはケージのような魔源具の中へ小さくなって入っていた。
「よし、オストこれから肉買うからな。その中で待ってろよ!」
(分かった〜)
「それよりレイン、そいつはどうする?」
そいつと言うのはオストの上で気絶していたアドルドの事だ。
オストが魔源具に入って、アドルドと斧だけが残って地面に転がっていた。
「そうだな、俺がおぶってギルドにでも寝かしといたらいつか起きるだろ?悪いが斧だけでも持ってくれるか?」
「あぁ…」
マジか…
この斧絶対重いじゃん!
「その斧、大牙でも持てるから頼むな。」
そんな馬鹿な…
見る限り動物園で鍛えたこの腕で両手で持っても持てるかどうか怪しいというのにそれを簡単に持てるとか言ってくれるなよな。
俺はぶつぶつ愚痴を思いながら斧に手を掛ける。
どれくらいの重さか少しだけ力をいれて持ち上げてみた。
「えっ!」
斧が思ったより軽くて拍子抜けした。
「なっ!だから言ったろ!」
「こんなに軽いとは思わなかったわ。」
「その斧もダンジョン産の魔源具でな、普通に持つと軽くてある程度の速度で振ると重くなるらしい。アドルドがギルドにいる度に全員に自慢してたよ。」
「ダンジョン産…」
ダンジョンか。
ダンジョンってやっぱり夢があるよな…
「じゃあ、カースの旦那の所に行くか。」
レインはアドルドをおぶって、俺は斧とオストの入った魔源具を持って門番の所に歩いて向かった。
「レイン、あの源獣は何処いったんだ?」
門番のおじさんが不思議そうに聞いてきた。
そりゃあ、あんな大きなのが消えたとなれば気になるよな…
「ほら、大牙が持ってる魔源具の中に入ってるよ。これだったら問題ないだろ?」
「魔源具だと?そんな魔源具があるのか?」
「これだな。」
俺は、おじさんに魔源具を前に出して見せた。
「ん、どれだ。おっ、確かに入ってるな。」
「旦那、これだと大丈夫だろ?」
「確かにな。これなら町に入っても大丈夫だろう。ただし、レインの連れだから許してるだけで普通はダメだからな?町の中ではその源獣を出すなよ?俺が町長に怒られるからな。」
「分かったよ。大牙、絶対町の中で出すなよ?」
「あぁ、分かった。」
「じゃあ、入るか。カースの旦那またな!」
「おぅ、兄貴によろしくな!」
「分かった!」
レインと俺は門をくぐった。
…