表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/35

そうだ、京都、行こう


「そうだ、京都、行こう」

 突如後輩がJRAではなくJRのような言葉をつぶやくのを聞いたがゆりは聞こえなかったふりをした。

 明日から秋の東京競馬の始まる10月4日の金曜の夜の仕事終わりに怜と遥と飲みに来ていた。

「ゆりさん、10月20日の朝の新幹線の切符もう押さえていますからね、柴田善臣待望の初クラシック勝利、しかと見届けましょう」

 ウキウキで遥は続けるが、ゆりは混んでいる競馬場行くの嫌だなぁとちょっと思っていた。

 混んでいる競馬場は忙しない。人混みの競馬場に行くのはかわいい後輩の頼みとはいえ乗り気でない。

「でも約束しちゃったもんなぁ、ゆ・り・ちゃ・ん」

 隣に座る怜がなれなれしく肩に手を回して浮かない表情のゆりを覗き込む。

「翌日の月曜、有給とっとけよ、軽く京都観光して帰るから」

「意外と乗り気なのね」

「京都競馬場、新しくなったっていうし、こういう機会でもないとなかなか行く事もないだろうしね」

 怜にそう言われてもゆりの表情は渋い。

「約束しただろ、社会人として約束は守らなきゃな」

 怜は普段は自堕落だがこういう時だけまともなことを言う。

「ほら、諦めろって。そろそろあいつがっかりするぞ」

 小声で怜が耳元で囁く。たしかに遥が「やっぱり無理にさそちゃダメだったかな」と怪訝な表情を浮かべる。

 それを見てようやくゆりは決心した。

「よし、じゃあ競馬場の指定席ガッツリとってのんびり観戦するわよ」

 今月はお買い物控えめにしなきゃなぁと思うのだった。

 

「ところでさ、ピースワンデュックというか柴田善臣ジョッキー菊花賞直行だけどさ出走確定したの?」

「はい、怜先輩。この前の神戸新聞杯が賞金上位馬で決まったのは良かったんですけど・・・」

「けど?」

「出走希望馬が思いのほか多くて現段階だと9分の4の確率ですかね・・・」

「え・・・、あマジかよ。お前。随分前から菊花賞直行宣言してたけど抽選待ちかよ」

 すっかりピースワンデュックの出走は確定しているものと思い込んでいた怜は驚愕する。

「おいおい、有給取って宿も押さえているのに大丈夫かよ」

「まぁまぁ善臣さん、引き強いですから、なんてったって・・・えーと、そのぉエリザベス女王杯勝利ジョッキーですから」

 キューっと梅酒のソーダ割を喉に流し込んでからしどろもどろに遥は答える。

「引き強かったらとっくにクラシック勝ってるんじゃね?」

「いや、その・・・2月に新生京都競馬場で12年ぶりの勝利も上げてますから大丈夫ですよ」

「いやいや、なんだそれ。逆に出走決まってからの方が不安なデータだよ、え、何々聞き間違えじゃないよな?12年ぶりィ???」

 あわわわとたじろぐ遥とテンションの上がる怜。

「まぁそのエリザベス女王杯以来芝の京都で勝ってないわね。あと昔、渾身の京都一鞍遠征で除外されたこともあったと聞いたわね」

 ゆりが冷静にあまり嬉しくない情報を付け足す。

 思いつめた表情で怜の前にある日本酒を自分の梅酒ソーダのグラスに注ぎ込んでそのままキューっと流し込む。

「おいおい」

「ちょっと遥ちゃん」

 心配する二人をよそに 酒に強くない遥は3秒くらいで目が座る。

「でも京都競馬場ですよ、京都競馬場です。京都競馬場といえばビッグスワンに白鳥型の噴水。昔は池に白鳥がいたって聞きますし馬名にスワンの付くピースワンデュックを京都競馬場はないがしろにしません!」

 そう言うと強引に遥は話を納めるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ