春の善臣キャンペーン②
「ま、負けたぁ」
中山2Rで柴田善臣騎乗のドンタカーミが最下位に敗れて遥はとても悔しそうだ。
「まぁそう落ち込むなよ」
「人気のない馬だったし仕方ないわよ」
怜とゆりが慰める。
1Rではノアファラオが12番人気12着、ドンタカーミが10番人気で15着。
まぁそりゃ負けるだろうよ、と怜は思う。
「でも6Rのマッスルバックは強いと思うんですよね。デビュー2戦目は6着でしたけど、負けた相手のうち2頭はもう勝ち上がっているんですよ、今回はその芝に戻して逆襲です」
「ミスターダービー卿である柴田善臣騎手ならば中山マイルで覚醒させると思うんですよ」
お昼ご飯のうましおラーメンを啜りこみながら遥が力説する。
どこで教育間違ったのかしら・・・・・・と師匠としてとゆりは思う。
周囲を見ても好きなG1馬から競馬にハマっていく事例しか知らないので、そういう強い馬への思い入れが一切なく毎回条件戦で熱中できる遥は凄いというかもしかしたら不幸なのではないかと思う。
「なぁなんでお前そんな柴田善臣にこだわってるんだよ」
ラーメンの汁を最期まで飲み切ると怜が禁断のセリフを口にする。
「お前が競馬見始めてからたいしていいところないだ・・・」
なおも言い募る怜を「よく全部スープ飲み切るわね、太るの怖くないのかしら」と思いつつ
「早く食べてそろそろパドックに善臣さんの雄姿を見に行きましょうよ」
とゆりが話に割って入り食い止める。
「そうですね、急ぎましょう」
ラーメンを平らげると遥はパドックに向かいだす。
それに付いていきながら
「何で止めるんだよ、振り返りは大事だぞ、もしかしたら我に返るかもしんないだろ」
「返るわけないでしょう、リュウノユキナのJBCスプリントが1200mだったら・・・とサンアップルトンが無事だったら、メイショウムラクモはどこで何してるの三本立てで三時間しゃべるのよ、あの子」
げんなりした表情でゆりが言う。
「お前の武豊話よりひどいな」
「酷くないわよ、わたしの方がレパートリー豊富でしょ」
ゆりが憤る。
昨日のドバイワールドカップ9Rをウシュバテソーロから馬券を買って負けた後に電話でゆりから武豊とドゥデュースの話を深夜に1時間聞かされた怜は「どっちもたいして変わんねぇよ」と思うのであった。
中山6Rが始まる。
マッスルバックは中段後ろから追走。
一見振るわず終わるかと見えたが4角手前、鞍上のゴーサインに応えると外から進出。
直線、外から追撃を開始する。
「ヨシトミサーン!!」
遥が小さく叫ぶ。
切れるようでいまひとつ切れない末脚を見せながら鮮やかに?5着に決める。
あら、また負けちゃったけど遥ちゃん機嫌どうかなー、単勝も買ってたわよねと心配するゆりであったが・・・遥はニコニコ顔だ。
「見ました?見ました?マッスルバックあんな後方から追い込む競馬できるんですね、いやさすがは柴田善臣騎手です。もうちょっとしゃんとしたら今日の倍速の末脚繰り出しますよ」
いやぁ惜しかったなぁと言いながらも全く悔しくもなさそうに笑顔の遥に「まぁ、これはこれで楽しめているから幸せなのかしら」と思うゆりであった。
「皐月賞、20世紀枠とかで出れませんかねぇ、大外枠でもいいので出れたら勝ちますね」
という遥の言葉にはマルゼンスキーじゃないんだから以前に、それはさすがにどうかなぁと思うのではあった。




