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春の善臣キャンペーン①

「はーるばる来たぜ、なーかやまぁ♪」

 微妙に音程がはずれているが、小金井遥は上機嫌だ。

「遥・・・。G1の裏で微妙に混んでいる中山になんで連れてきたんだ?」

 深夜のドバイ競馬で負けた国立怜は少々不機嫌というか・・・眠そうだ。

「まぁまぁ、いいじゃない、なんとか地獄の年度末業務も無事終わった事だし、天気もいいしのんびり競馬を楽しみましょう」

 三鷹ゆりも少しげっそりした面持ちだが、笑顔で仲裁に入る。

「いやしかしだよ、なにも1Rから来る事はないじゃないか・・・」

 怜はまだぐずぐずと言っている。

「え・・・ゆりさん、怜先輩。今日の中山はビッグイベントがあるのをご存じないのですか?」

 遥は眉をちょっとしかめて二人を見る。

 まぁ背の低い遥が少々にらみつけて来てもたいして怖くはないのだが・・・。

「え、なんかあったっけ?」

「知らないわよ・・・、なんか牛乳配っているとかなんとか・・・ってそれは昨日だったかしら」

「なんだよ、それ。主だった騎手もいないはずだしメインも準オープンだよな・・・」

「あ、いつもの柴田善臣案件かしら、ええきっとそうよ」

 怜とゆりはひそひそと相談する。

「知らないで・・・中山くんだりまでわざわざ来たんですか!」

 全然怖くはないが、遥がむくれ始めた。

「あー、そうよねぇ。善臣さん。今日は活躍しそうだもんね」

 ゆりは「まさか関西遠征はしていないよね、G1週だし・・・。いや2場開催だし中山でも乗り馬いるのかしら」と心の中で思いつつも慌てて答える。

「さすが!ゆり先輩!よくご存じです!それに比べて怜先輩はやる気あるんですか!」

えー、私怒られるの?と怜は思う。

「そうなのか、悪かったな。今日は2レースくらい乗るのか、良かったじゃん」

「何言っているんですか!今日は実力馬ぞろいの7鞍騎乗ですよ!!」

遥は手をわなわなうち震わせる。

「え?」

 ゆりと怜は顔を見合わせる。

 怜は男前にさっと遥の方に手を回していう。

「そっか・・・。知らなかったとはいえ済まなかったな。今日で柴田善臣騎手引退なのか、それは一大事だな」

 ゆりも遥の両手を自分の両手で包み込む。

「そうね。善臣さんの最期の雄姿、この目に焼き付けましょうね」


 わなわなと遥は身を打ち震わせる。

 そして両手を天に突き上げ二人を振り払うと

「引退なんか、し、ま、せ、ん!!」

 遥は吠えた。

「クラシック勝つまで引退させるかー!!!」

 更に音量を上げて、遥は叫ぶのであった。

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