4. 立ち上がれグリーン! ゴニンジャーの固い絆!
グリーンが姿を消したまま、数日が過ぎました。もちろんレッドたち四人は必死に探しましたが、グリーンは忍者の技で隠れているらしく発見できません。
そんな様子を見て、そろそろだと現れた者がいます。そう、ゲファーの幹部フェイフォンと彼が作った宇宙怪人スターゲファーです。
「私の作戦、気に入ってくれたかネ? お前たちを仲間割れさせるため、このスターゲファーが放ったスターバエで情報操作したアル」
「ゲファファ~!」
得意げに話すフェイフォンの横には、怪人スターゲファーがいます。そしてスターゲファーが奇声を上げると、黒い雲のようなものが広がっていきます。
黒いものは小さな虫の集まり、スターバエという名前のハエのような生きものでした。もちろん自然の生物ではなく、フェイフォンが作った人工生命体です。
「それで人々を操り、記事に仕立てたわけね」
「だから新聞社やテレビ局にハエが多かったのですな~」
「元ネタを提供した人の家にもいたぞ」
「心をもてあそぶなど極悪非道の極み、決して許すわけにいかぬ!」
ゴニンジャーの面々も、おおよそのことに気づいていました。彼らはグリーンを探しつつ、騒動の解決にも動いていたのです。
マスコミや写真を送った人たちのところには、なぜか小さなハエがいました。そしてハエがいると、人々は『これは見栄えがするぞ』などと言ってゴニンジャーの写真に手を伸ばすのです。
スターバエは心を操る力を持っています。そしてスターゲファーの指示する方向に、スターバエが人々を誘導していきます。
たとえば新しい流行を作り出し、フェイフォンの会社の商品を買わせる。あるいは商売敵の悪い噂を流して邪魔をする。人々の心をうまく使うのが、フェイフォンや彼の作る怪人の得意技なのです。
「分かったからといって、どうにもならないアル。今は四人だけ、お前たちに勝ち目は無いネ!」
「ゲファファファ~!!」
フェイフォンが自信満々に言い放つと、スターゲファーも勝ち誇るように笑い声を響かせます。
ゴニンジャーの必殺技、ゴニンジャーボンバーは全員の力を合わせているから強いのです。グリーンがいない今は、普段の半分以下の威力しかありません。
「ここは拙者が……。ゴニンジャーボンバー、セット! ピンク!」
「イエロー!」
「ブルー!」
「レッド!」
いつもと違い、レッドがゴニンジャーボンバーをセットしてピンクへとパスしました。そしてピンクはイエローに、イエローはブルーに、ブルーは再びレッドにとパスを回していきます。
しかしエネルギーが足りないので、ゴニンジャーボンバーは白く輝きません。
「ゴニンジャーボンバー、シュート!!」
「ゲファ~!!」
レッドが蹴ったゴニンジャーボンバーは、スターゲファーに弾かれてしまいました。
しかもスターゲファーは随分と余裕だったようで、まったく効いていないというように胸を張っています。
「だから勝ち目は無いと……」
「まだだよ! ゴニンジャーボンバー、シュート!!」
フェイフォンの声を遮ったのは、少年の声でした。そうです、グリーンが現れたのです!
跳ね返ったゴニンジャーボンバーをグリーンが蹴ると、眩しいくらい真っ白に輝きました。もちろん狙った先はスターゲファー、まるで流星のような光が宇宙怪人の頭に突き刺さります。
「ゲゲゲファ~!!」
ゴニンジャーボンバーが命中すると、スターゲファーは大爆発しました。
全員の力が篭められたゴニンジャーボンバーは、まさに無敵です。スターゲファーは粉々になり、欠片の一つすら見当たりません。
「お、覚えているアル!」
フェイフォンも勝てないと悟ったようです。彼は慌てた様子で消え、ゲファーの秘密基地に戻りました。
◆ ◆
「ゴメンなさい! ボクのせいで、みんなが危険な目に……」
グリーンは仲間のところに駆け寄ると、勢いよく頭を下げました。そして彼は、これまでのことを明かしていきます。
「基地から逃げた後、反省したんだ。いくらニュースで変なことを言われたからって、みんなのせいにするのは間違いだって……。でも、どうやって謝ろうかと思っているうちに、なんだか帰りにくくなって……」
グリーンは四人の近くにいたのですが、仲間が自分を探し回っていると知って逆に戻りづらくなってしまいました。
その日のうちに帰れば良かった。そう語るグリーンは、涙をポロポロと流しています。
「謝るのは拙者たちのほうだ。お前が年下だからと、必要以上に子ども扱いしてしまった。今後は改めるから、また一緒に戦ってくれ」
「後輩イジりと軽く考えていたが、お前からすればイジメだったな。決して悪気は……いや、言い訳はやめよう。すまん、この通りだ!」
「まったく申し訳ない……子どもだったのは自分たちのほうですな……」
「弟みたいだからって、遠慮しなさすぎだったわ。私だって最年少のときは、もっと大人扱いしてほしいと思っていたのに……」
四人は揃って頭を下げ、心から反省していると伝えました。
親しき仲にも礼儀あり。家族みたいな関係でも、気をつけるべきことはあります。特に年齢や性別のように自分で変えられないものを話題にするときは、よく考えなくてはなりません。
それにピンクが言ったように、四人も小さいときは悔しい思いをいっぱいしてきました。だからグリーンの気持ちも、注意すれば気づけたはずです。
「ううん。ギリギリまで帰れないなんて、やっぱりボクは子どもだよ。本当にゴメンなさい!」
「いや、拙者たちこそ……」
謝り合いは、しばらく続きました。でも次第に微笑みが浮かび、最後は握手と笑顔で一件落着となりました。
そして五人に戻ったゴニンジャーは、肩を並べて秘密基地へと帰っていきます。
こうして日本の平和は、今回も伝統戦隊ゴニンジャーが守りました。今までよりも強い絆で結ばれた彼らなら、きっと近いうちに地球の全てを取り返してくれるでしょう。
お し ま い
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