2. 強いぞ! 伝統戦隊ゴニンジャー!
「ゴニンジャーボンバー、セット!」
少年忍者、グリーンニンジャーはサッカーボールのようなものを地面に置きました。
もちろん普通のボールではありません。これは彼らの必殺技、ゴニンジャーボンバーという爆弾です。
一方アマージョは早くも諦めまじりの顔、クラウドゲファーはビクビクと体を震わせています。それだけゴニンジャーボンバーは、凄い技なのですよ。
「ピンク!」
グリーンがゴニンジャーボンバーを蹴ると緑色に光り、矢のような速さでピンクのところに飛んでいきます。忍術でグリーンの力が爆弾に宿り、何倍もの威力になったのです。
「イエロー!」
「ブルー!」
「レッド!」
同じようにピンクはイエローに、イエローはブルーに、ブルーはレッドにとパスを回していきます。
するとゴニンジャーボンバーに新たな色が重なっていきます。三人もグリーンと同じように力を篭めているのです。
「ゴニンジャーボンバー、シュート!!」
「ゲゲゲファ~!!」
レッドが蹴るとゴニンジャーボンバーは真っ白に輝き、宇宙怪人クラウドゲファーへと一直線に飛んでいきます。
そして眩しく光る玉はクラウドゲファーに当たると大爆発し、台風のような突風と地震のような大揺れが起きました。
これでは怪人といえど、ひとたまりもありません。
土埃が収まると、そこには爆発の跡があるだけ。クラウドゲファーは木っ端みじんに消し飛んでしまいました。
「成敗!」
「ゴニンジャーめ! この恨み、必ず晴らすぞ!」
レッドが歌舞伎役者のように見得を切ると、アマージョは悔しそうな表情で消えました。ゲファーは宇宙人ですから、ワープ技術を使って一瞬で基地に帰れるのです。
ともかく今回も伝統戦隊ゴニンジャーの勝利、日本の平和は守られました。
◆ ◆
「ふっ、楽勝だったな」
「ブルー、油断は禁物だ」
「ええ。ゲファーの怪人も、だいぶ日本の機械を操れるようになってきたわ」
「そうですな~」
ブルーの楽観的な様子が気になったようで、レッドは気を引き締めようとしました。するとピンクとイエローも大きく頷きます。
ゲファーは地球より遥かに進んだ技術を持っています。遠くない将来、彼らは日本の機械を完全に支配できるようになるはずです。
そうなる前に倒さないと、日本も他国のように征服されてしまうでしょう。
「大丈夫! どんな宇宙怪人でも、ボクの作ったゴニンジャーボンバーが粉微塵にするから!」
深刻な空気を嫌ったようで、グリーンが明るい声を張り上げました。
これまで怪人たちを倒してきたゴニンジャーボンバーは、全てグリーンが作りました。彼は根来忍者の次期リーダー、鉄砲や爆弾の扱いが得意な一族の跡継ぎなのです。
ちなみに他の四人も、別の流派の代表たちです。
レッドが伊賀、ブルーが甲賀、イエローが風魔、ピンクが戸隠。グリーンと同じで、それぞれ一族の次期リーダーなのでした。
「おいおい、偉いのはアニキだろ? お前が自慢することじゃない」
「そうですな~、ボンバーを完成させたのはグリーンの兄上ですからな~」
「お兄様が生きていらっしゃったら、きっとグリーンに選ばれたはずよ。それに貴方は半人前だわ」
「そうだな。まだ修業中、これからも精進を続けるのだぞ」
同じ跡継ぎ同士ということもあり、四人は遠慮しません。
ブルーは大袈裟に肩を竦め、からかうような声を上げました。するとイエローも柔らかにですが同意し、ピンクやレッドも続きます。
とはいえ四人の言葉は冗談半分、覆面から覗く目も優しげな笑みを湛えています。
四人はグリーンよりも年長、二番目に若いピンクですら五歳も上です。そのためグリーンは弟のように可愛い存在、こういったやり取りも愛情表現の一種なのでした。
「また子ども扱いして~!」
グリーンは不満げな声を上げましたが、本気で怒ったわけではありません。
まだ彼は十二歳、たしかに一人前ではありません。それに四人が先輩として気にかけてくれたのも気づいています。
でも真正面から未熟と言われたので、少しムッとしたのです。
「そういうところが子どもなんだよ」
「若いですな~」
「ほんと、カワイイわね」
「うむ」
ブルーはグリーンの頭をチョンと突き、イエローが愛おしげに撫でます。続くピンクとレッドも少年の肩に手を置き、本当の弟に対するような親しみを示します。
そして四人はグリーンを囲んだまま、朗らかな笑い声を響かせました。
そんな五人の様子を、遠くにいる人たちがカメラで撮っています。彼らは新聞社やテレビ局の人たちです。
ゴニンジャーは日本を守るヒーローだから、新聞やテレビも毎日のように特集しているのですよ。