84話 強さ
帰ってからはリアに色々なことを話した。リアはいつもよりも増して興味津々で話を聞いていた。それから、戦術を考えていたという将棋で対決してみると、ユージが負けた。ユージは強くはないが、詰め将棋を暇潰しにやっていたので、定石を多く知っているため有利なだけであった。リアはその定石を学んだのだ。そうすると、ユージに勝ち目はない。
アイテムはその内使ってみることにした。今使ってみても良いが、ピィがいるときに使おうと考えた。
それから、長い間入ることの出来なかったお風呂に入った。勿論、全員で。ライムも普段入らないとはいえ、今日だけはと言って入ってきた。その姿で入ってくるのはヤバいって!
そしていつも通りユージは居づらく感じ、逃げるようにしてお風呂から出るのだった。
それからご飯を食べた。リアを含めては久しかった。後は寝るだけなのだが、ユージは今日は一人で寝ることを伝えた。たまには一人も良いものだからだ。
ユージは夜の静けさを感じて独り笑う。いつも賑やかだったのだ。それは楽しくて良いが、ずっとは疲れてしまう。そして、こんな静かな夜では色々なことを思うのに最適だ。
ユージが考えているのは、今日のお風呂で見た光景を思い出しているわけではない。断じて違う。本当にこれっぽっちも考えていない。ツキが泡で髭を作って言った「お髭なの」が可愛かったとか、そんなこと思い返しているわけではない。でもあれ可愛かったなあ。
ユージは日課のスキル≪自己治癒≫を使うと布団に入った。それからユージが考えたのは自分が倒れたときの事である。ユージは自分が自己中に生きられないと考えていた。でも違う。確かに今までの生き方はユージに合ったものではなかった。けれど、本当にそれが自己中な生き方なのだろうか。
自己中は他人に迷惑をかけることを言うのだろうか。そんなはずはない。
自己中は他人全てを困らせるものなのか。そんなはずはない。
誰かの幸せの側には誰かの辛い思いがある。それは当然だ。全ての人が幸福になんてならない。逆に全ての人が不幸になることもないのだ。
自己中でないのならば、それは自己犠牲である。正しくない訳ではない。ただ、自己犠牲が完全に正しいわけでもない。自己犠牲は他人をも苦しめることがある。
自分のために、自分が愛する者が幸福になるのは間違っているのだろうか。
自己中は正義ではないが、悪でもないだろう。
ユージは新たな生き方を胸に、静かな夜で眠るのだった。
2章完結です!




