5話 塵も積もれば
「それじゃ始めよっかな。」
独り言を呟き、ポーションを飲む。
「スキル≪自己治癒≫」
予想通りだ。スキルが使える。こうなったら効果が切れる前に重ね掛けしていくだけだ。
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
日が落ちてまた昇った。ユージに眠気が襲う。ただ、彼はやめるつもりがない。ステータスを見ると自己治癒がⅠからⅢに上がっていた。気力のポーションはまだまだ尽きない。
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
眠気が襲う。もうキツい。彼は眠りそうになった時のために剣を買った。3ゴールドもするその剣は攻撃力を上げる。今こそそれを使うときだ。ユージは自分の指を切った。身の回りが赤く染まらぬうちにスキル≪自己治癒≫を使い、自分の指を元に戻す。指位ならスキル≪自己治癒≫程度で元に戻せる。がしかし、周りに散乱した血液は元に戻すことができない為、血飛沫が飛ぶ前に指を元通りにして、血液が失われるのを防ぐ。これで確実に目は覚めるが、強烈な痛みが伴う。また叩き起こしているだけなので、いずれ眠気はやって来る。
そうして彼は何度自分の指を切っただろうか。眠気と度重なる激痛で体はボロボロである。それでも彼はポーションがなくなるまで止めるつもりはなかった。
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
ザクッ
「あ゛あ゛あ゛あ゛ず、ずぎる゛≪自己治癒≫う゛う゛う゛う゛ぅ!!」
何日たったのだろう。この世界の時間は向こうと変わらないから、3日位か?スキル≪自己治癒≫はⅣまであがった。それでもまだまだポーションは底を尽きない。
恐らく4日目。ポーションが目に見えて減ってきた。スキル≪自己治癒≫は今だⅣだ。
5日目?ポーションが尽きそうだ。あと12個しかない。そのとき気づいた。スキル≪自己治癒≫はⅤになっていた。気力は15秒で1回復していたが10秒で1回復するようになった。これでポーションがなくとも続けられる。ユージは何故そこまでしてこのスキルを使い続けるのか自分でも分からなかった。使命感に燃えていたのだろうか。ただ彼にはっきりした意識はなかった。
そして1週間がたったであろう頃。
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫」
「スキル≪自己治癒≫!!」
「はぁ…はぁ……これでどうだ!」
彼がステータスを確認すると自己治癒Ⅴではなくなっていた。自己治癒Ⅵという表記と共に効果が大幅に変更されていた。
「これで、休んでも問題ないな。」
ユージは倒れるようにして(というか実際に倒れて)眠りについた。彼は見ていないため知るのは起きてからだが、数万回、数十万回、数百万回と繰り返し使った自己治癒により、ステータスは大幅に上がっていた。
きりのいい所で分けるつもりなので、今回のように字数にかなり差が出てくると思います。