表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

さよならのための花言葉

作者: 流美

 貴方を好きになって、1年が過ぎました。もうすぐ、更に半年が経ちます。私はいつだって、貴方の隣にいたつもりでした。



 席替えで席が近くなれば、休み時間になる度に目一杯話をして。移動教室の授業があれば、一緒に教室まで歩いていって。放課後だって、陽が落ちるまでずっと話していました。


 ここまでして、なんで貴方は私を好きになってくれないのだろう。何度も疑問に思っては泣きました。貴方に想い人がいる限り、私と目を合わせてはくれないと分かっていたのです。



 私は、学校を辞めることにしました。いきなりでごめんなさい。これ以上、貴方の声を聞いているとおかしくなってしまいそうで。大丈夫です。これを機に、貴方に対する想いも消し去ります。


 もうきっと、会うことは無いと思います。ラインから貴方のことを消してしまうので、会話することも無いと思います。夜の仕事をするつもりなので、本当に、会わないでしょう。



 寂しくって堪りません。辛くって堪りません。こんなに貴方のことを好きにさせられたのに、どうして貴方は私のことを、見てはくれないのですか。お願い、こっちを見て。あの子の話なんて、しないで…………。




 ごめんなさい。心から、ごめんなさい。こんな私が、貴方を好きになってしまってごめんなさい。多分いつも私のこと迷惑だったと思います。ごめんなさい。貴方が私を頼ってくれたとき、すごく嬉しかったです。ありがとう。次はあの子に、話してあげてください。



 さよなら、というやつですね。貴方と別れる日がくると思いませんでした。言葉を交わさなくなる日々がこれから続くなんて、どうにかなってしまいそう。


 それでも私、耐えますから。心配はしないでください。貴方は心行くまであの子とお話してください。私はそのうち慣れます。いつしか、貴方と話さないのが当たり前の日々に戻ります。だから私は、大丈夫です。



 長くなってしまってごめんなさい。最後にこんなことして、なんて未練がましいのでしょう。ごめんなさい。


 今までずっと、ありがとうございました。楽しい毎日が、嬉しかったです。貴方が私のことを忘れてしまう日がくるかもしれないけれど、私は貴方のこと、ずっと覚えています。





 本当に心の底から、貴方のことが、大好きでした。

 さようなら。







 考えに考えて、1時間もかけた手紙。ピンク色の便箋を封筒に入れる前に、心の全てをぶつけるように丸めた。なんて気持ち悪いんだろうと、嘲笑う。目から温かいものが次々に流れて、私の拳を濡らした。



――まったく、馬鹿だなぁ。



 か細い声で呟いた。辛過ぎる片想いはもう、明日で終わり。最後まで私はあの人に、想いを伝えられはしない。なんて情けない最後の学校生活を迎えるんだろう。


 こんなにも胸が締め付けられて苦しいのに、痛いのに、あの人に想いを伝えられる勇気は出てこない。大好きなあの人に振られることが、あまりにも怖すぎた。



 机上に置かれた、小さな花に目を移す。ミニポットの鉢に入った、白とピンクの日々草。近くの花屋さんに無理を言って、お願いした物。ご丁寧に、ミニポットの鉢には淡いピンクのリボンが巻かれている。


 明日の帰り、気づかれぬようにあの人のロッカーの中へ入れるつもり。それが誰からのものか、何の意味を持つのか、あの人は分からないんだろうな。



 はは、と乾いた笑いを漏らした。目から流れているものは、まだ止まりそうになかった。




 大好きです。




 たくさんの想いを、人知れず日々草に込めて、明日、貴方に贈ります。それが私からの、精一杯の想いです。


 ……ありがとう。

こちらの短編は元々「日めくりカレンダー」という短編集用の短編です。花言葉の意味は「日めくりカレンダー」のほうには書いておりますが、こちらには敢えて書きません。


是非調べてくださるとありがたいです。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。お時間があればレビュー、感想、評価のほうを宜しくお願い致します。


日めくりカレンダーはこちらから

「https://ncode.syosetu.com/n1166em/」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なんだよ、俺と同じじゃないか。 なんか昔の俺を見ているみたいで、初々しい気持ちになってしまっています。 俺も年上の彼氏持ちだった彼女にこのなろうで告白して、一度はフラれました。 頭では分か…
[良い点] ニチニチソウと言う名の花を、最後に置いていこうと決心している場面では、少し悲しくなってしまいました。 プラスの意味で捉えることが多い花ゆえに、悲しみも増してしまいます…… 読んでいる内に…
2018/07/22 11:58 退会済み
管理
[良い点] さよならのための花言葉と、日めくりカレンダーを読ませて頂きました♪ 花言葉×日めくりカレンダーという発想が面白いですよね。この作品もですが、日めくりカレンダーも短編でスラスラ読めるのでつい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ