光に導かれて
夜の森は案外暗くて何も見えない。
自分の吐息だけが響く。
後ろを振り返る勇気もなかった。
とにかく今は人通りのある道に出たいと思った。
これほど人が恋しいと思ったことはない。
虫の音や鳥の鳴き声も聞こえない。
どれくらい走っただろう。
もう体力が底をついている。
だけどここで止まってしまったら、また見つかってしまう。
もう一緒にいる友達もいない。
一人ぼっちだった。
皆と森に遊びに来たことがいけなかった。
バーベキューをしながら川で遊んだりして、夜はキャンプなんて理想はもう消えている。
ここの森には入ってはいけなかったんだ。
さっきまで隣を走っていた彼が、木の根に躓き転んだ時、私は彼を置き去りにした。
待って!という声に聞こえないふりをした。
その後すぐに聞こえた彼の悲鳴。
すべてをぐちゃぐちゃにしたような断末魔。
足を止めたら終わりだ。
足を止めたら終わりだ。
足を止めたら終わりだ。
すると人の声が聞こえてきた。
向こうのほうに明かりが見える。
そっちの方向を目指して、思いっきり走った。
絞り出すように走った。
希望があそこにはあった。
そこにいたのは私達だった。
消したはずの理想の中にいた私達。
明かりは炎で、その周りに私達がご飯を食べながらふざけあっている。
なんだこれは。
気づくと私は、立ち止まっていることに気づいた。
ヤバイ、と思ったそのとき、後ろから声が聞こえた。
耳元のすぐそこ。
「あれは選ばれた方だよ。君達は運がなかっただけなんだ」
その言葉に意味を見つけられぬまま、私は涙を流した。
体を貫かれた痛みでなのか、目の前の届かぬ希望にたいしてなのか。
唯一の幸運は、私の後ろにいるのが、何だったのか見ずに済んだことだ。
目の前の炎はチラチラと揺れ、そして消えた。