経験値をゲットだぜ!(前編)
ド新人の私に足りないものは多々あるが、何よりも足らないものは、まず経験である。
私は普段、中2を担当しているが、室長の「やってみない?」という言葉には基本的に頷くことにしている。何事もまずは経験。相手をするのが、素直で可愛らしい小学生になったり、中2よりも大人びた中3に変わっただけのこと。
とはいえ、小学生を担当するよりも、中3を担当するほうがいくらか身構えるものがあるのは当然のことだろう。何しろ冬期講習。そして中3は高校受験を控えている身。ド新人のレベルアップには最適かもしれないが、当の私と子どもたちからすれば、千尋の谷に突き落とされたようなものだ。間違いなく英断である。それが優れた決断であるかはともかくとしても、実に思いきりがいい。
すでに3回目の授業を目前にして、ようやくお金がもらえるレベルに到達したと言われた私である。それがいきなり、中3を3クラス。しかも他の校舎。間違いなく超アウェイ。現状、ホームとしている校舎であっても、私が担当している中2のクラスは、変則的に担当しているクラスを除いて、実質2クラス。間違いなく冬期講習のタイムテーブルを見た私の目は一瞬死んでいたに違いない。
「あんまり気負わないほうがいい。むしろ気負うとテンパる。基本は中2と変わらないから」と言われて、少しホッとしなかったといったら嘘になる。そう言われるまで、私はガッチガチに気負っていたのである。何しろ、ろくに中3の授業を見たことがない。中2の授業は流れが出来つつあったが、中3はまったくイメージが出来ないでいた。研修をやっても、先が見えない。流れがまったく作れないのだ。シュミレーションをしたところで、これでいいのかと自問自答を繰り返すばかりで進歩しない。いかに喋る量を減らして、指示を出していくのか。不安が尽きない以前に不安しかない。質問した内容に答えが返って来ないときは、講師が言った質問の内容が悪いのである。どのようなレベルに合わせればいいのか。3つすべてのクラスを受け持つということは、真ん中のクラスに合わせればいいのだろうか。だが、レベルは?どのくらいまでに設定すべきなのだろう。
手探りというものは、不安になるものである。