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82.救出部隊

 いや、それより、何で、ここにいるの?


「間に合って良かったわねー」


 横から別の声。

 オレに近寄り、術による回復を掛けてくれているのは月子さんだった。


「リィリー! ありがとう!!」

 プリスがリィリーの抱き付いた。


「全く、無茶ばっかり!」


 リィリーはプリスの頭を撫でながら、オレの横まで歩いて来た。


「どうして?」


 二人はここにいる?


 いや、二人だけでは無い。


 他にも残った三体の魔人に襲いかかる者たちがいる。


 戦鎚の魔人、アジェンキをクナイで翻弄しているのは、スランドだ。

 大剣の魔人、メセズトと対峙するのは、白の鎧をまとい美麗な装飾が施された長剣を振るう女性。

 確か、白銀騎士団のサブマス。顔は見知っているが名前は何だったか。

 槍の魔人、ナソガベの相手は、身の丈程もあろうかと言う大剣を携えた猫耳の女性。


 そして、それを援護するように、魔術師風の男が立っている。

 心なしか、その服がオレの物に似ているが、更紗作のものだろうか。

 アタッカーの邪魔にならない程度に攻撃魔法を叩き込んでいる。


「後は、任せて大丈夫そうね」


 リィリーが、プリスのMPを回復しながら、戦況を断じた。


 各々、確かに優勢ではあるが。


「そうなの?」

「三体ともHPバーがもう、一本残ってないもの。あなた達がほとんど削ったんでしょ」

「あ、そうなんだ。オレ、HP見えないからなー」

「え? レベルいくつ?」

「前と変わってない。38」

「嘘!? それで二体仕留めてるの? 逆にそっちの方が凄いわ」


 オレは、月子さんに状態異常を治療してもらっている最中だ。


 リィリーは、おそらく、『次』に備えているのだろう。


 スランドが、魔人を仕留めた。


「スランド、どこかに敵プレイヤーが隠れているはずだ!」

「承知!」


 スランドなら、隠れた相手を見つけるのも容易いだろう。……多分。


「で、どうやってここに?」

「それは、帰ってからゆっくり説明するわ」

「分かった。それじゃ、残りの三人の名前がわからないんだけど」

「白い鎧の人は、白銀騎士団サブマス、雪椿さん。会ったことはあったわよね?」

「前に一度。名前は知らなかったな」

「アッチの猫耳は知ってるでしょ? ネフティスよ」

「え?」

「ネフティス。前に城門前で魔人討伐したじゃない。クラウディオスの子」

「え。巫女だったよね?」

「あの時はね。今は回復兼攻撃手見たいね」


 すんげーギャップ。


「それで、あの強さかよ……」


 C2Oだと、行動とステータスが比例するので、複合職は中途半端な器用貧乏になりがちだ。

 事実、ちょっと前に聞いた近接タイプのリィリーとステータス上は魔法職のオレのステータスを比較すると、HP、STR(筋力)値に五倍以上の差が付いていて、軽く引いた。

 しかし、ネフティスは神聖術の使い手として一流なのは以前の戦いで明らかだが、今、目の前で大剣を振るう姿も横の雪椿と遜色ない。


「ユニーク称号持ち見たいよ。確か『天才』」


 あー、ゲーム開始時に一部プレイヤーにだけ与えられる『祝福』ってやつか。ニケさんが言ってたな。


「んで、アッチの魔法使いは?」


「ギルド新世界のマスター」


 ああ、あそこか。

 『新世界』は最近頭角を現してきた、C2O第二世代とも言われる、後発組。その最大手ギルドだ。

 名前は確か、炎樹エンジュ


「終わったわ。どう? 調子は」


「おお、ありがとうございます! バッチリです」


 月子さんによる回復術で状態異常の『呪い』『石化』から回復した。

 しかし、まだ少し体に重さを感じるのは、疲労のせいだろう。


 ネフティスが、魔人の頭を叩き潰し、雪椿が、魔人の体を上下に二分させていた。


 スランドが敵プレイヤー仕留めるのもほぼ、同時だった。


「さ、もうひと踏ん張りね」


 何度か魔人と対峙しているオレとリィリーはそう思っていた。


 しかし、残っていた魔人の体は、黒く変色した後、液体の様に解けて地面に染みこんでいった。


 ん、終りか?


 オレは黒いシミを避けながら祭壇へ歩み寄っていく。

 スランドが、険しい顔で声をかける。


「何て無茶をするんだ!」


「スランド、これは君の仕業?」


 それには取り合わず、助っ人達に目を向けながら尋ねる。


「鹿島から連絡があって急ぎ声を掛けた。だが、ここへ転移できたのは死神のお陰だぞ」


 やっぱりリィリーが何かしたのか。


 オレは、床に落ちたままの銀の杯を拾い上げる。


 アイテム:【邪の杯】#ランク7

 かつて世に混乱をもたらした、悪魔崇拝の教団が儀式に用いた杯。


 いつの間にか、全員祭壇の前に集まって来ていた。


「初めまして、神よ!」


 炎樹が畏まった仕草でオレにそう言ってきた。

 リィリーと、ネフティス、それに雪椿まで、後ろで白い目を向けている。


「私は、炎樹。ギルド『新世界』の代表をしております。嗚呼、ここで神のお助けを出来た事を光栄に思います」


 この、新世界の連中、やたらとオレを神聖視してくる。

 技能融合と術式合成の先駆者だから、と言うのが理由らしいが。

 正直、鬱陶しいことこの上ないので、今まで極力、絡まないようにして来たのだが。

 その、トップからして、これか。


「助けてくれたのは、有難いんだけど、その神って言うの止めてくんない?」


「何を言います。貴方は私たちにとって、神にも等しい存在」


「あのさ、それじゃ聞くけどオレが死ねって言ったら死ぬの?」


 小学生見たいな台詞だな。


「それは、もちろんでございます!」


 駄目だ。コイツ。なんとかしないと。


「んじゃ、神として命ず。オレを神と崇めるのを止めろ」


 神、だなんて言われて持て囃されても、気持ちが悪いだけだ。


「おお、何という事を。しかし、それでは……」


 芝居がかった仕草で頭を抱え、ぶつぶつと言っている。

 もう、放っておこう。


「ありがとう」


 汚物を見るような目で炎樹を見ているネフティスと雪椿に礼を言う。


「別に、私は将軍絡みの依頼は、引き受けると言うギルドの方針に従っただけですので」


 ネフティスがツンデレテンプレの様な言い方をする。


 しかし、デレがゼロなのその表情が物語っている。

 本当に、頼まれたから来ただけなのだろう。


「お礼は結構なので、私達のギルドに入りませんか?」


 雪椿が、笑顔でそう言ってくる。

 とびっきりの、営業スマイルで。


 正直、白銀騎士団の白い鎧はデザインも上々で惹かれる話ではあるのだが。


「ダメよ」


 例によってリィリーが断りを入れる。


「だ、そうで」


「まあ、また今度ゆっくり説明しますね。白銀騎士団について。リィリーにも」


「そろそろ、第二幕が始まりそうだ」


 スランドが、静かな声で全員に注意を促す。


 六体の魔人が地面に作った黒いシミ。

 そこから、モンスターが湧き出し始めていた。


「一応聞くけど、逃げるって選択肢は?」

 次々と湧き出てくる様子を見るながら提案してみる。


「このまま放置も目覚めが悪い」

「ですよねー」


 もうひと踏ん張りか。


 そう決意して、敵に向かおうとした瞬間、コートの鎖を後ろからグイッと引っ張られた。


「ダメ」


 そのまま、後ろに数メートル引きずられていく。

 そして、前に回り込んだプリスに両肩を上から押され、祭壇の石座に座らされる。

 ……プリスに触れることが出来る?


「まだ疲れが残ってる! ジンはそこで見学」


「あ、はい」


 呆気に取られて、素直に返事をしてしまった。


「さっさと終わらせるわよ!」


 リィリーがそう言いながら飛び出して行った。

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