76.西へ
関所の先。
新世界!
と言っても、フィールド自体は見慣れた風景だし、見える範囲ではC2Oと違いは無さそうだ。
遠くで、プレイヤー達がMOBを狩っている様子も変わらない。
まずは、一番近い町を目指そう。
【変装】で、[WCOのNPC]へ身分を変え、さらに【隠遁】もセットして、足早にフィールドを駆け抜けていく。
戦闘をさけ目立たないように。
■■■■■
なんとか、エンカウント無しで、記念すべき、最初の町、アコウズへたどり着くことが出来た。
宿屋へ駆け込む。
さて、この先のプランを考えないとな。
一度、【変装】を解いて現在のステータスの再確認。
【ジン】 #LV.38
HP:140
MP:530
STR:36
VIT:26
AGI:138
DEX:105
INT:209
MIN:72
SP:70
スキル:
【長剣】【細剣】【短剣】【棍棒】
【二刀流】【溟剣・二刀流】
【火魔法】【雷魔法】【土魔法】【風魔法】
【溟術】
【鑑定】【識別】【隠遁】【集中】【気配察知】【千里眼】【転移】【技能融合】【救魂】【取憑】【死霊契約】【戦禍の天秤】
【言霊の宿る手】【術式融合】【死霊使役・詠唱破棄】【変装】
称号:
【解呪者】
【魔導実践者】
【技能体得者】
【夜と死の神の神使】
【夜と死の神の祝福】
【雨の女神の祝福】
我ながら、成長の偏りが酷いと思う。
緋弾が少ないのでHPとVITが極端に低い。
溟剣は武器とみなしてくれないようなので、STRの成長も悪い。
嘆いたところで、どうしようもないのだが。
再度、【変装】を掛ける。
選択肢が出現。
[C2O・プレイヤー]
[C2O・NPC]
[WCO・プレイヤー]
[WCO・NPC]
[WCO・プレイヤー]を選択すると、更に職業と、レベルの選択肢が出てくる。
そのリストを眺めながら、ひとまず、[格闘家]レベル3としておく。
これなら、万が一、戦っている姿を目撃されても、魔法を使わなければバレないはずだ。
多分。
本格的な行動は明日以降だな。
■■■■■
[ここで]
と言うメッセージと共に送られてきたのは、バーチャルチャットのルームIDだった。
早速、そこへ接続する。
「よ。話ならこっちのほうが早いだろ」
そう、言ってきたのはクラスメイトの倉本だった。
最も、目の前にいる倉本はアバターなのだが。
顔は、いつもの倉本そのもの。
格好が、スーツにネクタイ姿なのは本人の趣味だろうか。
オレも似たようなものだが、ネクタイまでは締めていない。
ここは、バーチャルチャットルーム。
VR空間で会話をする場合に一般的に使われるサービスだ。
有料サービスもあるが、無料でも使える。
その場合、チャットルームの一面に、常にコーマーシャル映像が流れる様になっている。
「悪いな」
「気にすんな。WCOについて知りたいなら何でも答えてやるよ」
そう。
知り合いで唯一のWCOプレイヤーからその情報を少しは聞き出そうと思い、連絡をしたのだ。
生憎、今日は学校が休みなので、こうしてVR空間で合うこととなったのだが。
「でも。お前、『そっち』じゃ、トッププレイヤーなんだろ?なんで、『こっち』に用があるんだ?」
「いや、乗り換えの参考にしようかなと」
「辞めるのか? トッププレイヤーが?
二重でアカウント作れないの知ってんだろ? 勿体無い」
「まだ決めた訳じゃない」
「ふーん。
まぁいいや。
で、何から知りたい?」
「うーん、基本的なとこからかな」
「基本って言ってもな、こっちはジョブ制を採用してて、プレイヤーのレベルの他にジョブレベルがある。
ジョブによって習得するスキルに違いがある。
てのが、オレの知ってる『そっち』との大きな違いだな。
武技、魔法は名前も効果も大体一緒みたいだ」
「へー。
そのジョブは何時でも変えられるのか?」
「いや。ジョブ変更は、専用の施設じゃなきゃダメだ。
それも、レベル20毎に一回。
それと、上級職は制限がある。ステータスとか、アイテムとか、討伐数とか」
「なるほど。ジョブの違いは取得スキルだけか?」
「いや、レベルアップ時のステータス成長も変わってくる。
初期ジョブの成長率一覧があるけど見るか?」
「おお、見れるか?」
「おう。こんな感じだ。その職に合わせたステータス成長になってる」
倉本が仮想ウインドウにジョブとその成長率のグラフをまとめた一覧を表示する。
なるほど。戦士、騎士などの前衛職は当然の様にHPやSTR、VITの成長が良く、魔法職はMPやINT、MINの伸びが良い。
「多いな」
一覧を見たオレの素直な感想だ。
「ゲーム開始時に選べる、初期ジョブだけで36。他に、ここに乗ってないが上級職や、隠れジョブなんかもある」
「こんだけあると、不遇職もあるんだろう」
「戦闘系だと、『軽業師』かな。紙防御で一撃離脱の戦闘スタイルになるらしい。だけど、まぁすぐ死ぬって人気がない。パーティーも組みづらい」
仮想ウインドウを操作して、『軽業師』の詳細を表示する。
ジョブ:【軽業師】
華麗な身のこなしで敵を翻弄する、戦場のピエロ。
初期取得スキル
【体術】【短剣技】【突進】【跳躍】【気配察知】
ステータス成長率
HP:D
MP:E
STR:C
VIT:E
AGI:A
DEX:B
INT:E
MIN:D
ふーん。
「逆に人気なのが、『お助け士』だ。
戦闘はからっきしだが、サポート系のスキルが多いから、パーティに一人いるだけで生還率が段違い」
ジョブ:【お助け士】
他もメンバーをサポートに徹する影の主役
初期取得スキル
【アイテム増加】【転移】【逃走】【千里眼】【識別】
ステータス成長率
HP:C
MP:E
STR:C
VIT:C
AGI:C
DEX:C
INT:E
MIN:D
「ん、【転移】って、使えるジョブ限られてるのか?」
「初期ジョブだとそいつだけだな。上級職だともうちょっと増えるが」
こっちだと、大抵皆持ってるんだけどな。便利だから。
「【転移】を使った嫌がらせも、問題になってるな」
「嫌がらせ?」
「ああ。ゲーム開始直後のやつに、レベル上げを手伝うって言って声かけるんだ。
それで、最前線の街まで【転移】で連れて行って置き去りにする。
そうすると、もう、初心者はその街から動けない。
周囲の雑魚ですら強敵だからな。
レベル上げも出来ずにただ、死に戻りを繰り返すだけ。
親切な人に、最初の街まで送り返してもらえたらラッキー。
そうじゃなきゃ、ゲームを止めて、もう帰ってこないだろうな」
「何が目的でそんな事してるんだ?」
「知らん。ただの悪趣味な嫌がらせだろう」
「そういや、そっちはPKあるんだよな? そんなことしたら標的になるんじゃないか?」
「どうだろうな。相手を見つけ出すのは大変だし、PK行為自体メリット無いからな。気晴らしにしかならないぞ。あれ」
「あ、そんな感じ?」
「システム上、PKが出来るってだけな感じ。
PKされた側は、強制的に最終ポータルに飛ばされるけど、その場合はステ異常は軽減される。
緊急避難的に帰還代わり使う連中もいるくらいだし。
ジョブの開放条件、ぐらいにしか捉えてないな。オレは」
こんな感じで、倉本からWCOの情報を仕入れた。
少しだけ、罪悪感を感じながら。
出来れば、これからするオレの行動が倉本の利益となりますように。




