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69.城門前の戦い

<ポーン>

<フレンド登録者より、メッセージがあります>


 来たか。


 [ビンゴ]という一言と共に、スクショが付いている。

 写っているのは魔人。


「クロノスさん!」


「ああ、こちらも確認した」


「オレは向こうへ行きます」


 スランドにメッセージを送りながらクロノスさんに確認を取る。

[すぐ行く。召喚主確保優先]


「待て」


 クロノスさんから予想外の返事だ。


「ネフティス。ウチの秘蔵っ子。魔人が相手なら役に立つわ」

 ニケさんが、巫女装束の女の子を連れてきた。

 頭に、耳が付いている。猫耳?


「あ、はい」


 想像していなかった展開だった。


「ニケ、君も行け」

「え、でも」

「殲滅して戻ってこい。こっちは長くなる」

「……了解!」


「必要なら向こうでパーティ組みましょう。先、行きます」


 展開について行けない。

 そして、何よりスランド達が心配だ。


 リィリーがオレの手を掴んで、転移を実行した。




「貴方の読み通りだった訳ね」


 ルノーチ街中の転移ポータルから城に向けて走りながらリィリーが言う。


「まぁ、嬉しくないけどね」


 既に城の近くで炎が上がっているようだ。

 立ち上る煙が見える。


 城門前の広場は戦場と化していた。

 魔人は七体。

 いや、既に一体地面に転がっている。


 応戦しているのは?

 桜と楓、そしてその召喚獣達。

 他にも数名。


「遅かった、ですね」


 ミックが、ナイフを魔人に投げながら言う。


「これでも、超特急で来たのよ!」


「これは……?」


「戦争に参加しない人たちに警戒するように言っておいた、の!」


 と、答えながら魔人に向かってリィリーが鎌を振り下ろす。


「ミック、スランド達は?」


「ジン、こっちだ!」


 声のした方に、顔を向ける。

 戦場となっている広場の端。

 地面に転がされたプレイヤー。そして、それを見下ろすフェイ達三人。


「プリス、リィリー達のサポートを!」

「わかったー」


 魔人は、一旦任せて賊を確認に行く。



「そいつが、賊か?」


「こいつ、も、だよ。ジン」


「も?」


 フェイは警戒しているのか、地面に転がるプレイヤーに矢をつがえた弓を向けたままだ。

 転がされた賊は、両手を背中で縛られうつ伏せになっていた。


「オイ! いい加減放せよ! オイ、GM! 迷惑行為じゃねーのかよ! コレ!」


 うつ伏せのまま、喚き散らしている賊のマーカーは、プレイヤーを示している。


「あっちの魔人。ああなる前はプレイヤーだった」


「何?」

 そう言えば、以前はNPCを魔人にしていたか。


 改めて、賊の顔を拝む。


「よう、モーリャー。いや、『転校生』」


「クソ、またお前かよ!」

「お前ら、わざわざこんな事して、何が目的なんだ?」


 横目で魔人達の様子を見る。


 地面から白い鎖が生え、魔人たちを縛り付けその動きを拘束していく。

 アレが浄化の対魔人特殊効果か。


 一体の頭部を、桜のドラゴン、プラムが噛み砕いた。


「教えるかよ。バーカ。畜生、もうこんなゲーム、どうでもいいわ!」

「は?」

「どうでも良いって言ったんだよ。正義の味方君!」


 そう言うと、モーリャーの周りに魔法陣が出現し、地面生えた黒い触手がモーリャーを包み込む。


「誰か、こっちに浄化ピュリフィケイションを!」


 叫んだが、既に遅かった。


 モーリャーは、魔法陣が放つ紫の光に包まれた後、その姿を魔人の物へと変貌させていた。


『こうすりゃ、お前を殺せるんだぜ』


 魔人は、モーリャーの声を発した。


「お前ごとき、怖くもなんともないさ」


『ハン。強がってろ』


 というと、魔人は大きく跳躍し、背中に蝙蝠の如き翼を出現させ空中に静止する。


 いつの間に到着したのか、広場にはニケさんの姿があった。

 そして、プレイヤーの数は二十人近くに増えている。


 残る、魔人の数はモーリャー含め、六体。

 モーリャー以外は全て、白い鎖に拘束されている。


 決着はすぐ着く。


 そう思った、次の瞬間。


「グオオオオオォォォォォォォォォォォォ」


 空中で、モーリャーであった魔人が雄叫びを上げる。


 地面に転がった、三体の魔人の体が、黒い霧となってモーリャーの、元へ集まっていく。


 拘束された、六体の魔人は突如出現した巨大な火柱にその身を焼かれる。

 眩い炎の中から微かに黒い霧が、モーリャーの元へ流れていくのがわかる。


 そして、それは、空中で黒い繭となる


 一度、見ている。

 あの時は、二体だった。

 今回は九体。


「ジン、コレって……」


 リィリーが警戒しながら近寄ってくる。


「皆さーん、中から強力な魔人が産まれまーす!警戒してくださーい!!」


 楓が大声で注意を呼びかける。


「プリス、聖歌を!」


 繭ごと破壊できないか?

 繭の下から火柱を出現させる。

 全く手応えなし。


「ジンさーん。変身中の攻撃は、やっちゃいけないお約束ですー!」


「知るかー!」


「あんまり、無駄なことしないでよ」


 リィリーがMP回復を施しながら言う。


「やってみなきゃ無駄かわかんないだろ……」


「そう言う事」


 フェイが、弓を引き絞り、繭に向かって放つ。

 しかし、当然の様に弾かれる。


浄化ピュリフィケイション


 今度は桜が魔法を掛ける。

 地面から出現した白い鎖が繭に突き刺さる。


 効いてるのか?


浄化ピュリフィケイション


 他のヒーラーも続く。


 効いてるのかね?


「何なの? アレ」とニケさんが、素直な疑問を口にする。


「繭、ですかね。絶賛パワーアップ中かと。二体合体は倒したことがありますけど、今回は、九体ですね」


「強い、のよね?」

「それ、敢えて聞きます?ちなみに、空中にいた魔人、なんとモーリャーです」


「は?」


「このゲーム、見限った、と言うことでしょう。

 つまり、WCOの連中はこのゲームのアバターを捨てるつもりで魔人になった。

 以前はNPCを生け贄にしてたんですけどね」


 そこで、ニケさんは考えこむ。


「……それって、直前まではプレイヤーのマーカーだったって事?」


「そういう事だね」

 フェイが応える。


「動画も残ってるよ。

 ま、ここで鑑賞会開く余裕は無いだろうけど」


「マズいわ。戦場でそんな事されたら、大混乱よ……」


「そうか! プレイヤーと見分けが付かない! PKは不可だから、プレイヤーであれば、基本的に無警戒だ」


「クロノスには警告入れておくわ」


「お願いします!」


「こっちも警戒したほうが良さそうよ!」


 リィリーが鎌を構え直しながら言う。


 繭に巻き付いた鎖は、どす黒い色へと変化し、ボロボロと崩れ落ちている。


 そして、繭が収縮し、頂点から二つに裂けた。


 中から現れたのは、六枚の羽を持ち、両手に三叉の銛を携えた悪魔だった。


 胸部と腹部に歪んだ人の顔のようにも見える模様がある、


 識別。


 モンスター:【魔人融合体・影】レベル??


 またしてもレベルが見えない……。


「「「「浄化ピュリフィケイション」」」」


 一斉に、対アンデット魔法が掛かる。


 しかし、全身に巻き付いた白い鎖は、一瞬、ほんの一瞬魔人を拘束しただけで掻き消された。


 その一瞬を付いて、火柱を直撃させる。


 効いてるのだろうか。


「羽が、邪魔ね」


 当たり前の様にMPを回復させてくれたリィリーが、そう言うなり、大きく跳躍し、炎を纏う大鎌を振るう。

 羽をもぎ取り、地面に叩き落とすつもりだろう。


「ネフティス。浄化陣の設置。一番強力な奴。何分掛かる?」


「三分」


「わかった。その間守り切るわ。

 ジン君、これから彼女が魔法の詠唱に入ります。

 三分間。一撃も当てちゃダメ。

 手伝って」


「了解」


 秘蔵っ子。そう言っていた。

 ここは、信じよう。


溟盾クリスタルシールド


 ネフティスの周囲に盾を出現させる。


 そして、ネフティスから魔人を引き離すように動く。


 リィリーが羽を一枚もぎ取った。

 フェイの弓、カリシアのナイフ、スランドのクナイが、魔人の羽に穴を穿つ。


 上からプリスが矢の雨を降らす。


 プラムが、上空から尻尾を振るう。

 ミーちゃんが人魂を魔人の顔近くに出現させて、視界を撹乱させる。


 各々が、攻撃を仕掛けるが、魔人は怯んだ様子もない。


 魔人の周囲をプレイヤーが取り囲んでいるが、その中で特に密集した一画。

 そこに向け魔人が右手を振るう。


 炎の竜巻が出現し、プレイヤーを襲う。


 何人か、やられたか?


 桜が駆け寄り、回復を施す。


 魔人に目をやるとリィリーが切り落としたはずの羽が再生されている。


「ジンさん! 何か、策は無いんですか?」


 楓が、大声で尋ねる。


「そう、ポンポン出るか!」


 魔人が、こちらを見る。


『ジン?』


 何だ? 魔人がオレの名を呟いた。

 モーリャーの意識が残ってるのか?


『コロ、ス』


 銛を構え、急降下してくる。


「避けるな!」

 横っ飛びで回避しようとした、その瞬間、スランドが制止の声を上げる。


 一瞬、動きを止める。

 魔人の銛が眼前に迫る。

 ヤバい、死ぬ。


 が、銛は辛うじてオレの鼻先で静止した。

 銛だけではない。

 魔人が、空中でその動きを止めていた。

 オレに向けて、銛を構えたまま。


「忍法、影縛り」


「お、おぅ」


 すんげぇ怖かった。


「大して持たん。今のうちに体勢を立て直せ」

 スランドが声を張り上げる。


「いや、十分だ」


 オレは、魔人に近づき手をかざす。


暗檻ダークプリズン


 闇を纏う、氷の檻が出現し、魔人を包み込む。

 溟術の一つ。


 対象を、拘束し、継続ダメージを与え続ける。

 但し、射程が極端に短い。

 そして、発動中、常に手をかざし、MPを送り込まねばならない。


 だが、コレで時間が少しは稼げるはずだ。


 中から、檻を壊そうと魔人が暴れだす。


「コレは?」


「溟術。拘束と継続ダメージ」


「でも、コレじゃこっちからも手が出せないわ」


「時間が稼げればそれでいい、が……」


 MPの消耗が予想以上に早い。


 それだけ、魔人が強力ということか。


 察したリィリーがMPを回復。


 フェイと、プリスが、檻の隙間から魔人へ矢を次々と打ち込んでいく。




 魔人が檻の中で激しく暴れる。

 その度に、檻から氷の欠片が飛び散る。

 そして、オレのMPも大きく減らされる。


 そろそろ持たないか?


「スランド、そろそろ持たない。さっきの奴、行けるか?」

「無理だ。檻のせいで魔人の影をつかめない」


 なるほど。よく分からんがそういうものなのだろう。


「プリス、桜。浄化を用意。檻を解除するタイミングに合わせて発動させてくれ」


「はい」

「ラジャ」


「カウント、三、二、一、放て!」

「「浄化ピュリフィケイション」」


 白い鎖が、魔人を拘束。

 先程より効いているか?


 動きを止めた魔人にリィリーの鎌と、楓の拳が襲いかかる。

 その直後、鎖の拘束を引きちぎった魔人が二人を吹き飛ばす。

 相打ち、か?


 しかし、攻撃の手を休めるわけには行かない。

 上空からプラムが、大口を開けて襲いかかる。

 魔人は、炎を浴びせ、それを妨害する。


 オレは溟剣を構え、魔人に向けて突進する。

 せめて、羽だけでも。


 しかし、魔人は、銛で右の剣を受け止める。

 左手の剣を魔人の腹に突き立てる。

 微かに切っ先が刺さった程度か。


 その剣を魔人が手で掴む。

 剣もろとも、オレを引き寄せようとしたのだろう。

 魔人が、剣を握る手に力を込め腕を引いたその瞬間に、溟剣クリスタルブレードを解除する。


 剣が無くなり、魔人はバランスを崩し片膝を付く。


 その瞬間、魔人を挟み込む様に上下に白い大きな魔法陣が出現した。


浄化ピュリフィケイション


 凛とした声が響き、魔法陣から光の鎖が出現、

 そして、魔人を上下から大の字に拘束する。


「さぁ、今がチャンス! 総攻撃よ!」


 ニケさんが声を上げながら魔人に細剣の連撃を食らわせる。




 広場にいるプレイヤーは十名以上。

 その総攻撃を何度もその身に浴びながら、しかし、魔人は絶命しなかった。


「結界、消滅します!」

 ネフティスが警告を発する。


 一斉に、魔人から距離を置くプレイヤー達。


 魔人を拘束していた鎖が白い粒子となり消滅する。


 魔人の背には、既に六枚の羽は無く、左腕は力なく垂れ下がり、自由が効か無いようだ。


 おそらく、限界が近い。


 拘束を解かれた魔人は、しかし、右手に持った銛を構えようともしない。


 何か、狙っているのか?


 その視線がオレを射抜く。


『クサリ、ノ、ジン……』


 再び、その目に狂気が戻るのが分かった。


 とっさに、リィリーが飛び出そうとするのを手で制する。


 オレは、ゆっくりと、魔人に近づいていく。


 周囲のプレイヤーは、警戒しながらも、魔人に対し攻撃を加えない。

 事の成り行きを見守るつもりだろう。


「お前は、まだ、モーリャーなのか?」


 魔人に静かに問いかける。


 しかし、その答えは無かった。

 代わりに銛と共にその身をこちらに投げ出して来る。


 少し、腰を落とし、両手の剣で魔人を迎え入れる。


 腹部に、深々と氷の剣が突き刺さる。

 それが、WCOから襲来した魔人への止めとなった。

 魔人は、音もなく、黒い粒子となって消滅した。

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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