表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/179

68.開戦

 ログインしました。

 イベント開始まであと30分。


 海猫さんから、戦場のポータル横に設置された本部に顔を出すようメッセージがある。


 その前に、スランド達に会いに行く。


 場所は?


 ルノーチの一番町外れの食事屋。

 寂れていてプレイヤーの数も少ないところだ。


「おまたせ」

「いや、時間通りだ」


 スランド、フェイ、カリシアの三人が既にカウンターに座っていた。

 三人ならテーブル席に座ればいいのに。


「依頼の確認だ。今から三時間、城の様子を見張る。

 異変があればメッセージで連絡」

「ああ。それで良い」


「何も起きなかったとしても、報酬はいただく」

「問題ない」


「他には?」

「出来れば賊の身柄を確保したい。

 それを優先で動いてくれ」


「承知した」


「ジン、仲間と思うならこれから起こることを教えてほしいわ」


 カリシアが真面目な顔で言った。

 しばし考える。


 メニューを開き、メッセージを作成。


 三人にだけ見えるように展開する。


[戦争の隙に乗じて城内の宝が狙われている。敵は魔人を使役する]


「確信はない。推測の域を出てないけどね」

「聞けてよかった。用心するよ」

「こっちこそ、気が利かなくてごめん。後は宜しく」

「任せろ」



■■■■■



 転移で、戦場へ飛ぶと既に人でごった返していた。


 「鎖だ」「先生!」「皆、合掌だ」などと声が上がる。


 だから、何で拝むんだよ。


 本部はどこだ?

 辺りを見渡し、直ぐにそれを発見した。

 プリスが浮いている。


 こっちに気付き、大きく手を振る。

 人混みをかき分けそちらへ移動。


「お待たせ」


「遅い! クロノスさんとマスターが待ってるわ」

「了解。それと、リィリー。プリス返して」


 従属の変更は、オレの方からでも可能なのだが。


「あのね、預けたり返したり、プリスは物じゃないのよ?」


 プリスの従属を解除された旨、インフォがある。


「おかえり。プリス。

 今日は宜しくな。

 じゃ、クロノスさんとこ行ってくる」

「こっちよ。案内する」


 リィリーが先導して歩き出す。


「おはようございます」


 簡易なテーブルと椅子が用意されており、そこにクロノスさんと海猫さん、ニケさんがいた。


「おお、間に合ったか」

「スイマセン、遅かったですか」

「まず、これを渡しておく」


 アイテム:【オリハルコンナイフ】#ランク4 製作者:海猫

 オリハルコン鉱を使用したナイフ。

 魔術に高い親和性を持つ。

 物理攻撃値:33

 重量:11

 INT:8


 それは、ナイフにしては少し大きな柄をしていた。

 溟剣を出現させた時に、バランスが取れる大きさにしてもらったのだ。


「おお、ありがとうございます」

「それと、これ。MPポーション200セット」

「お、おう」


 これを、使いきれと言うわけか。

 しかし、こんなにもらって大丈夫かね?


「そっちは私が持つわ」と言ってリィリーがMPポーションを受け取る。


 やっぱり、今日は一緒に居るつもりですね。


「準備が出来たら、早速ここまで行って開戦に備えて欲しい」


 示されたのは、戦場の北の端。

 森と、平地の境目。

 何かあれば身を隠す場所もありそうだ。


「この辺で召喚を続けてくれ。北から奇襲を掛けたい」

「了解です」


 踵を返して、リィリーの顔を確認する。


「暫く護衛、と言うことで良いんだよね?」


「もちろん!」


「よし、行こう」


 戦争、と言っても、ゲーム内。

 予め、ルールが設定されている。


 戦闘時間は二時間。

 バトルフィールドは正方形で句切られていて、それぞれ東西に本陣を設置。

 バトルフィールドへは本陣を中心とした、南北200メートル程のスペースからしか入れない。

 勝利条件は、敵の職滅、または本陣の壊滅。

 時間内に決着がつかない場合は、戦死者の過多で勝敗を決する。

 生存者でなく、戦死者。

 単純に一人でも多く倒した方の勝ち、という訳だ。

 戦死者としてカウントするのはプレイヤーに限る。つまり、召喚して使役している存在は含まれない。やったね。

 なお、バトルフィールド内で戦死した場合、再入場は不可となる。


 開始まで後、三分程か。


 既に、昨日クロノスさんが説明したとおり、三つの陣が出来上がっている。

 それは、相手方も同じだが。


 両軍を挟んだ中央に不可侵の壁が展開されているとのこと。

 時折、逸ったヤツが矢や魔法を放つが、全てその壁にぶつかり、相手に届く前に消滅する。


 こちらの軍は、左翼より、右翼の陣容が薄く見える。

 つまり、オレに近い軍だ。


 オレの召喚を当てにして、そう言った布陣にしているのだろう。


「そろそろね」


 横にはリィリーがいる。


「今更だけど、本当に良かったの? ここで」

「何? 邪魔?」

「いや、そういうつもりじゃない。ただ、あっちの方が面白そうだろ?」


 開戦を、今か今かと待つ中央の連中を指差す。


「いいの。あっちは、あっちで暴れる人達が沢山いるけど、貴方の横には私以上の適任はいないでしょ?」


 私以上の適任。

 深い意味は無い。

 リィリーが【アイテム使い】のスキルを持っているからだ。

 彼女がアイテムを使うと効果が上昇する。


「他の誰にも任せられないかな」


 開始、一分前。


『クロノスだ』


 戦場の全軍にクロノスさんの声が届く。


『いよいよ開戦だ。

 戦士よ、力の限り武器を振るえ!』


「「「「ウォー」」」」

 鼓舞に反応したプレイヤー達が地鳴りのような声と共に、手にした武器を高々とかざしているのが見える。


『声の限り、魔法を放て』


「「「「オォー」」」」


『一人で多く、仲間を助けよ』


「「「「ワァー」」」」


『行くぞぁ!!』


「「「「「「ウオォォォォォー」」」」」」


 カウント・ゼロ。

 戦闘開始!


『前方に魔法障壁を展開!』


 早速、クロノスさんから指示が飛ぶ。

 昨日の動画、初っ端の突撃。

 それ自体が、フェイク。


 狙い通り、敵は全軍で突撃してくると踏んで、開幕早々に魔法攻撃を仕掛けてきた。

 しかしそれは、展開された障壁に尽く阻まれている。


 さて、こちらもやりますか。


「死霊召喚」

 呼び声に応え、周囲に魔法陣が出現する。

 その数十六。

 まずは、ケンタウロスだ!


 機動力で戦場を掻き回してこい。


「はい、次」

 すかざすリィリーがMPを回復してくれる。


「死霊召喚」

「プリスは木に隠れながら周囲を警戒してね」

「死霊召喚」

「敵が来たら、攻撃の前に知らせること」

「死霊召喚」

「ラジャ」

「死霊召喚」

『右翼、北よりモンスターが来る。友軍だ』

「死霊召喚」

『敵じゃない。間違うなよ』

「死霊召喚」

 戦場では、全軍が突撃を始めていた。

「死霊召喚」

 中央軍の、先頭。

「死霊召喚」

 盾を並べた前線の、更に前を走る姿が有る。

「死霊召喚」

 あれは、二式葉だろうな。

「死霊召喚」


 続いて、アンデット軍団。

 その無念をこの戦場で晴らして、輪廻に戻れ。


「死霊召喚」


 ……。


「敵が来るよ」

 プリスが警告してくる。


 アンデットは出しきった。

 次は、ハーピーだ。

 丁度良い。

 迫る敵を上空から襲撃だ。


「死霊召喚」


 ……。


 ふぅ。

 これで最後。

 とっておき。


「出よ。我が強敵とも

 地獄の番人、ミノタウロス!

 死霊召喚!」


 呼び声に応え、魔法陣の中から声が響く。


「ヴモォォォオオオオオオォォォォォ」


「友達だったの?」


 リィリー、冷静な突っ込みは止めてくれないか?


 開戦から、五分程。

 召喚はし尽くした。


 死霊達、は大いに戦場を撹乱している。


「一度、本陣戻ろう」



 本陣の後ろに設置されたポータルへ転移する。

 流石に先程の様な人混みは既に無い。


 ただ、それでもセンヨーから追加戦力が続々と運ばれてきているようだ。

 それを取り仕切っているのは秋丸達のギルドメンバー達。


「戦況はどうですか?」


 クロノスさんに尋ねる。


「ご苦労様。出足は挫いた。今のところ優勢と言っていいだろう」


 ここは小高い丘になっていて、戦場を見下ろす事が出来る。

 オレは、地面に腰を下ろし、千里眼を飛ばす。


 最前線へ。

 二式葉が、二刀を振るい敵を薙ぎ払っている。


 それに続くのは、オクター達、重装備の軍団、そしてブンさん達の自称脳筋軍団だ。


 右翼に視界を動かす。

 突如出現した死霊軍団に、敵軍は混乱のまっただ中の様だ。

 ミノさんが悠然と歩いて最前線へ向かっている。

 走れよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
https://ncode.syosetu.com/n3012fy/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ