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61.塔攻略、再び

 翌日、ログインしたオレは迷彩をオフにして宿屋から待ち合わせ場所のCreator's Homeまで行ってみることにした。



 果たして、昨日のお願いは効いているだろうか。


 街に出ると、様子がおかしい。

 近づいて話しかけてくるプレイヤーはいないが、遠巻きにこちらを見て合掌している者がちらほら。

 何だあれ。


 まぁいい。気にしていたらキリがない。


 Creator's Homeの扉を開けると、そこには既に約束していた面々が揃っていた。


「おう、時間通りだな! では早速出発しよう!」

 ブンさんだ。初っ端からテンションが高いな。



■■■■■



 流石に、攻略ギルドの面々。

 サクサク進む。


 オクターが、攻撃を全て受け止め、ブンさんが力まかせに殴る。蹴る。

 後ろからプリスが、新調した弓をビュンビュン飛ばす。

 たまに、月子さんがオクターを回復。

 そして、リィリーが全く役に立ってない火魔法をお見舞いする。


 ……何してんの?


「え? スキル融合欲しくて」

「それで、魔道書持ってたのか」

「役立たずでごめんね。MP尽きたら本気だすわ」

「いや、オレも大して、と言うか全く役にたってないから何も言えないけど」


「狭い通路で、あのデカイ獲物は使いづらいだろう。ボス戦まではこっちに任せな」

「任せな!」

 ブンさんに合わせてプリスがドヤ顔で言う。


 浮遊し、上から矢を降らすのは反則級の強さではある。

 ただ、どこか、育て方を間違ったような、そんな気がしないでもない。

 もっと、こう、おしとやかに……。二式葉の影響かな。きっとそうだ。



「さて、ここからが本番だな」

 たった今、40階のボスを倒し終わったところだ。


「ここまでは何度も来たんだ。この先が、とたんに難易度上がるんだ」


「隊列を入れ替えましょう。オクターさん、先頭変わります。殿で後方の警戒を」

「わかった!」

「月子さん、回復はプリスがやりますんで、最上階までMP温存しておいて下さい」

「はーい」

「ブンさん、はそのまま行けますね?」

「おう」

「プリスは、あー、ほどほどに」

「うん!」


 問題は次だ。


「リィリー」

「はい!」

「役に立ってない」

「はっきり言わないで!」


 狭い通路に、大鎌デスサイズ

 集団で行動するには不向きだ。

 先頭なら、まぁなんとかなるかもしれないが、消耗は避けたい。


「いや、他に武器持ってないのか?」

「無いわよ!」


 仕方ない。


「ほら、これ」


 昨日までプリスが使っていたクロスボウ改を手渡す。


「何? これ」

「プリスのお下がり」

「使ったことないわ!」

「味方に当てないように気をつけてくれればいいよ。通路階はそれで遊んでてくれ」

「完全に、お荷物扱い!」


 まぁ、技能融合目指すなら悪い話じゃないだろ。


「さ、最上階まで駆け抜けますよ」



■■■■■



 ボス戦は陣容が変わっていた。

 アークエンジェルが四体、エンジェルが二体。


 しかし、HPとMPの管理さえ出来てしまえば怖い敵ではない。


 鬱憤ばらしとばかりに、リィリーが暴れまわっていた。


 天使に大鎌デスサイズを振るう、黒いゴスロリ。

 とんでもない光景。


 初撃に首狙って行ったからね。あのお姫様。


 そんな感じで、苦戦らしい苦戦もせず、勝利を収めた。


〈ポーン〉

〈朽ち果てた塔ボス・大天使を撃破しました〉


 オレの耳に入ってきたインフォはこれだけだったが、他はどうだ?


 皆、メニューを開いて何かを確認しだした。


「おお!」

「あらあらあら」

「ほう、バジョエの加護とな」

「うわ、すごい」


 などと、それぞれの感想が聞こえてくる。


「どんなスキル貰ったんですか? 良ければ教えてください」


「俺は、『闘神』だな。

 効果は、MP消費しながらバフと継続HP回復効果。

 使ってみるか」


 スキルを使ったブンさんの姿は?

 青いオーラのようなものを身にまとって見える。


「お、オレのHPも回復してるぞ。バフは無いみたいだが」

「ほう。それは良い事を聞いた。それだけでも格段に戦力が上がるぞ」


 続いて、月子さんが、地面に緑の光を放つ魔法陣を出現させる。


「私は『聖域』ね。

 HP回復のエリアを作れるみたい。回復量は広さ次第のようね」


「オレは『重なる盾』。

 盾をもつ味方の防御力上昇。盾の数によって効果が上昇。とあるが、いまいち効果がわからんな。後で検証するとしよう」


 そう言えば、この中で盾を持ってるのはオクターだけだ。


「私は『魂喰いソウルイーター』。

 クリティカル発生率向上、クリティカル発生時に即死判定(大)ですって。しかもこれ常時発動型(パッシブスキル)よ。」

「こわっ!」


 思わず、声が出る。

 死神っぷりに磨きがかかったわけか。

 まぁ、本人嬉しそうだから良しとしよう。


「ジンは何も無し?」

「うん。二回目は何も貰えないみたいだ。でも、その分レベル上がったし」

「そう。でも、ありがとう。アナタのお陰で攻略出来たわ!」


 お守りの効果もあってか、オレのレベルは順調に上がり、31から34へ。

 SPが50になっている。


 実はちょっと気になっているスキルがあるので後で取ろうと思っている。


「ねえ、ジン。こっち来て。すごい景色よ」


 リィリーは、塔の端に立って手招きしていた。

 知ってる。

 一回飛び降りてるからね。


「おーい。あんまり端に立つと落ちるぞ」


 今度は道連れで落とされないようにと、警戒しながら慎重に近づく。


「山があっちだから、この前行った島はあっちの方よねー」

 とリィリーが南西を指差す。

 その先には遠く地平線が見えるのみであった。


「ジン君、リィリーちゃん、プリスちゃん」


 塔の中心から月子さんが大きな声で呼ぶ。


「私達、先に転移で帰るわねー」

「今日はありがとう! 次のイベントもよろしくな!」

「前線で一緒に暴れるぞ!」


 手をふる三人は、返事を返す暇もなく転移で姿を消してしまった。


「あ、ちょっとー……」

 リィリーが、とっさに止めようとするが、間に合うはずもない。


「せっかく、お弁当作ってもらったのに……」


「どうする? オレたちも戻るか?」


 リィリーは不満そうな顔をしたまま返事をしない。


「……折角だから、お弁当食べようか?」

「うん。食べよう!」



 すぐに、リィリーは花柄のシートを広げ、その上にお弁当を並べ始めた。

 お弁当は?

 ハンバーガーとポテト、それと唐揚げ、サラダだった。


「それで、技能融合でなにをしたいの?」


 ハンバーガーに舌鼓を打ちつつ、質問する。

 うまいな。シェフは誰だろう?


「炎の鎌!」

「ますますおっかなくなってくね」

「でも、大変。一つ取るだけでもMPが全然足りない。ジンはどうやってたの?」

「ん、初心者迷宮で死に戻り繰り返してた。あの頃、紙防御だったから、MP枯れたら一撃食らうだけで死ねたんだ」

「ふーん。変なことしてたのね。まぁ、そのお陰で晴れてトッププレイヤーですものね」


「今のところはね。でも、次のイベントが終わったらゆっくりしようと思う」


 オレの言葉にリィリーが神妙な顔をする。


「ジン、それ、死亡フラグよ?」


 ええー。

 そういう反応?


「そうか。それなら帰ったら結婚する予定も立てておかないとな」


「……誰と? そういう人がリアルに居たりするの?」


「いや、いないけど……」


 真面目に返されると、困る。


「……ゆっくりするって、何するの?」

「んっと、この前見たいに、世界を散歩して回るのも良いかな。あとは、図書館で調べ物したり」

「昔の隠居老人ね。でもきっと周りがほって置かないでしょうね。だから、私も貴方に付いていけるように強くなりたいの。

 そのための技能融合」


 ふむ。買い被り過ぎじゃね?


「そう言えば、試してみたいことがあったんだ」



 スキル:【取憑】#必要SP 50

 一時的に、従属対象を変更する。

 契約霊専用スキル



 これ。

 字面は怖いんだけど、プリスを誰かに預けたり出来るんだよね。きっと。


 一応、確認しとくか。


「プリス、たまにオレじゃなくて他の人と一緒に出かけられるようになったらどう思う?

 例えば、リィリーとか」

「うれしい!」


 そうか。

 試してみよう。取得、と。


 お、メニューが増えた。


[プリシアの従属対象を変更しますか?

 YES / NO]


 [YES]と。


[従属対象を選択して下さい

 リィリー]


 選択肢は、リィリーだけか。

 目の前にいないとダメなのかな。

 素直にリィリーを選択。


 リィリーにインフォがあったようだ。


「『プリシアの従属依頼があります。承認しますか?』て、何これ?」


「承認してみて」


「承認。『契約霊・一時従属プリシア』が増えたわ。

 え、何このステータス。プリス、貴方すごい子ね」


「こういうスキル。

 これで、オレがいなくても誰かとフィールドに出たり出来るはず。

 そっちから解除は出来る?」


「メニューにあるわ」


「さて、リィリーは技能融合取るんだろう?

 だったら、プリスと一緒のほうが良いと思うんだ」


「何で?」


「便利な冥術がある。MP吸収の吸魔マナスティールとMPを他人に分け与える寄魔マナディリバーだ。これでMPは無尽蔵。好きなだけ魔法が撃てる。やったね!」

「なるほど」

「さらに、初心者迷宮なら他人の獲物とか気にせず、永久にポップしてくる。特に最下層の地下10階がオススメだ。

 一回ボスを倒して再度、10階にいけばモンスターハウスになってるから」

「単純に回数こなすのにうってつけなわけね」

「そういう事」


「じゃ、この後行こうかしら。ジンはどうするつもりだったの?」


「オレは、クロノスさんに言われたアンデット軍団のスカウト。

 候補は、コハの西のアンデット。後は山頂付近にいるらしいハーピー。

 それと、センヨー東のマップにも行ってみたいな」


「山とセンヨーの東は私も行ったこと無い。行ってみたい!」

「いや、遊びじゃないんだが」

「わかってるわよ。あ。ひょっとして、私にプリス預けて一人で行くつもりだった!?」


「だって、技能融合欲しいんだろ? 二人でアンデット狩りなんかしてても楽しく無いじゃないか。プリスも退屈だろうし。

 という訳で暫くプリスと一緒に修行とかどうですか?」


 どっちが退屈だろうと言う疑問はさておき。


「山と、東は一緒に行きたい! 三人で行く!

 じゃ、こうしましょう! 私は今日頑張って技能融合を取る! プリスと一緒に。

 ジンは、コハの西でアンデット集め。

 明日と明後日は、山とセンヨーの東に三人で行く!

 どうかしら?」


 有無を言わせぬ迫力がある。


「わかった。そうしよう」

「約束よ!」

「うん。じゃ、今日はプリスをお願い。

 プリス、今日はリィリーと一緒にいてお手伝いをしてあげてくれ」

「はーい!」

「いい子にしてたら、ご褒美だ。何が良い?」

「パフェ!」


 昨日も食べてなかったか?


「よしよし、じゃ、その分頑張るんだぞ」

「甘々ね」

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