6.称号
翌日、ログインしたオレは早速【識別】を取得した。
最早お馴染みのネズミで試してみる。
ネズミを『観る』ことに意識を向ける。
使い方は【識別】を取得した時にうっすらと頭の中に入ってきた。
なんか、昔から知っていた、当たり前の動作。
そんな不思議な感覚。
すると、ネズミの上には今まで無かったHPバーが浮かんでいる。
更に意識を込める。
モンスター:【ビードラッド】 #LV.3
成長すると石の身体を持つという大型のネズミ。
魔神の血から生まれたと言われている。
有効属性:刺、氷
ほーう。お前、そんな名前だったのか。
有効属性が弱点だろうな。
使いこなすには慣れが必要なスキルだ。
意識して使っていくしかないか。
されど、ネズミの名前がわかったところでやることが変わらないのが悲しい。
途中レベルアップをはさみつつ、ひたすら戦闘。
【氷魔法】と【細剣】スキルを取得したところで切り上げる。
四日目、
ひたすら戦闘……。
【雷魔法】と【短剣】取得、レベルップ。
【ジン】 #LV.5
HP:100
MP:155(↑15)
STR:14(↑1)
VIT:5
AGI:17(↑3)
DEX:18(↑4)
INT:24(↑6)
MIN:12(↑1)
SP:30(↑10)
五日目。
ひたすら戦闘…………。
魔法スキル六種コンプという目標のために両手に魔導書を持つことにする。
【水魔法】と【風魔法】取得。
六日目
あと一つ。残るは【土魔法】。
ひたすら戦闘………………。
そして、ついに歓喜の時が!
<ポーン>
<スキル【土魔法】を取得しました>
訪れた!
両手を上げてガッツポーズ!!
長かったー!!!
<称号【六女神の祝福】を取得しました>
<称号【魔導探求者】を取得しました>
ん?
まだなんか来たよ?
称号:【六女神の祝福】
汝、女神に等しく祈りを捧げよ。
火・風・水・雷・土・氷魔法威力向上(小)
称号:【魔導探求者】
女神の理を探求し、理解した証。
火・風・水・雷・土・氷魔法消費MP軽減(小)
ほう。
MP軽減は嬉しい!
六女神は各属性を司る神てところか。
今後ストーリークエストとかに出てくるんだろうか?
ヨシ、これでどこまで行けるかやってみよう。
右手に長剣を携え、迷宮を下へ下へと突き進んでみる。
階を重ねる毎に、敵の種類は増えていく。
B2階、【フライバーン】有効属性:斬、風。でっかい蝙蝠。
B3階、【スライム】有効属性:雷。ゲル状のあいつ。涼しげ。
B4階、【スケルトン】有効属性:殴、火。徒手だった。メイスに持ち替え殴る。殴る。
B5階、【モスピクシー】有効属性:斬、土。でっかい蛾。キモい。
B6階、【ウィル・オ・ウィスプ】有効属性:火。人魂。
と、ここまで踏破したところで、ウィル・オ・ウィスプが魔法のような攻撃をしてきて避けきれずに死に戻る。
【識別】している隙に、遠距離から攻撃された。
まぁ、ちょうどMPも枯渇したところだったが。
とは言え、この調子ならレベルを上げれば迷宮踏破も可能なんじゃないだろうか?
うん!
明日からの目標が決まった。
【鍛錬の迷宮】最深部、地下10階にいると言う、まだ見ぬボスの撃破だ。
……いるよね?ボス。
今日はちょっと、いや、かなり気分が良いので武器屋でも見てこようかな。
長剣、細剣、短剣のスキルがあるから、武器を新調してもいいかもしれない。
先立つモノは無いのだけれど、冷やかしに行くぐらいはいいだろう。
ゲーム開始以降、冒険者ギルド内にあるこの迷宮に半引きこもり生活だったから、
防具屋と酒場しか言ったことがない。
「お、今日はもう終わりかい?」
「ああ!」
収穫といえば、冒険者ギルドの親父と顔なじみなったぐらいだ。
「なんだ?今日は機嫌が良さそうだな」
そんな親父の軽口に、サムズアップを返しながら冒険者ギルドから出た。
武器屋に向かって歩くオレの両脇に、同じ速度で歩くプレイヤーが。
距離を取ろうと少し、歩みを遅らせる。
一歩、二歩、三歩……と、突然こちらを振り返る。
「やっと見つけました!」
ビシィ!!と音がしそうなほどの勢いで人差し指を向けられた。
「はい??」
見知らぬ人からいきなり指を指される覚えはない。
オレに人差し指を向ける、フワッとした癖っ毛の女の子。
これでもかというくらいのドヤ顔である。
その横には縁無しのメガネをかけたロングヘアーの女の子。
こちらは、少し怪訝そうな顔をしている。
「あなたが犯人なのはわかっているの!」
なるほど……。
「ク……
クックック……
小娘がぁ!!」
思いっ切りフードを跳ね上げる。
「よくここまで来れたものだと褒めてやろう!!
だが!
だが!!」
……
やってもうた!!
なんか、変なテンションになってた。
どうしよう。
「『だが』?」
メガネの方が首を傾げる。
いいすね。その仕草。
メガネ、クィっとやってくれません?
「『だが』、何なのですか!?」
癖っ毛の方は指を指したまま聞き返してくる。
だが、何なんでしょうね? オレが聞きたい。
ここは、逃げましょう。
「ハァ」
と、わざとらしく小さな溜息をついてつかつかつかと癖っ毛に近づく。
「人違いじゃないかな?迷、探、偵」
爽やかな笑顔を浮かべながら、癖っ毛のおデコに右手で手刀を食らわせる。
そしてそのまま素早く左手でメニューを開き、
「じゃ!」
と言い残してログアウト。
うまく逃げれたな。
最後の手刀は余計だったかもしれんが、もう会うこともあるまい。