56.スキル公表
「スキルを取得してない武器種、魔法を使い続けるとある回数で自動取得します。確か、100回だったかな。
それを十種で技能体得者の称号がつきスキル解放されます」
会議室が、ざわつく。
「魔法って、スキル無しでどうやって使うの?」
リィリーが横から質問してくる。
「ん、見習いシリーズの魔道書持って、呪文唱えると出来るよ」
「マジかー。売っちまったよ」「10個って、何かあったかな?とってないやつ」
そんな声があちこちから漏れる。
ざわつきが落ち着くのをちょっと待ち、続ける。
「次に、術式分解。
これは、全魔法のスキルレベルが5になった段階で取得できました。
それ以外の細かな条件は申し訳ないが、分かりません」
再び、ざわつく。
「ジン君、因みに魔法スキルって、全部魔導書使って取ったの? SP使わず?」
ニケさんの質問だ。
「そうですね。そういえばその時、称号もらいました」
ざわ、ざわ。
「えっと、サンプルが一件なんで細かな条件は私の方でも検証して、再現可能か調べようと思います」
と、ニケさんがまとめる、
「さすが、班長」「任せたー」
と言う野次が飛ぶ。
「で、最後の死霊契約なんだけど、正直、よく覚えてないです」
「たましい、よりしろ、わけみたま、こえ。それが、やくじょうの条件」
月子さんの上でプリスが言う。
こちらを非難するよう目で見ながら、口を尖らせている。
え?
「プリス、もう一回」
「たましい、よりしろ、わけみたま、こえ」
わからん。
「魂?」
プリスに聞き返すと、自分自身を指差す。
「依代?」
今度は髪飾りを指差す。
「分け御霊?」
「首飾り」
「声は?」
プリスはオレを指差す。
ふむ。
「ありがとう。プリス。よく覚えてたな」
プリスは頬を膨らませ、プイっと横を向いてしまった。
「えっと、今、プリスが教えてくれました。
条件は……NPCの……魂、生前身につけていたもの、それから、なんというか、プレイヤーの呼びかけ。
それと、キーアイテム、が必要みたいです」
「わかんねーぞ」
「ちょっとくらい、自分で考えなさいよ!!」
野次に反応したのはリィリー。
椅子から立ち上がって怒りの表情を浮かべている。
会議室が静まり返る。
オレは立ち上がって、その肩に手を乗せる。
「ありがとう」
オレの代わりに怒ってくれて。
「……大丈夫」
おかげで、少し落ち着いた。
「でも……」
オレは会議室の方へ向き直る。
「……これは、オレとプリスの、過去の事件が関わってきます。
ちょっと、これ以上の具体的な状況の説明は、控えたいです。
ただ、称号関係でなく、イベントで取得したスキルと考えられます」
リィリーを座らせ、オレも腰を下ろす。
プリスは月子さんに抱きついて顔を後ろに向けていた。
「大丈夫?」
なお、心配そうにリィリーが問い掛けてくる。
ありがとう。ちょっと泣きそう。
「因みに、キーアイテムと言うのはまだ持ってるの? ……無理には言わなくていいけど」
ニケさんが、質問してくる。
「あ、それはもう、手元にありません。昨日、モーリャーに渡したヤツです」
「あ、あれね……」
「良いところで、モーリャーの話が出たので、話を進めようか。
が!その前に!
一つだけ、どうしても聞きておきたいことがある!」
クロノスさんの口調が突然激しくなる。
「昨日の、決勝! 僕は君にジャストでカウンター決めたはずだ! 何で無効化された!?」
む。
「あれは、ルノーチ西、朽ち果てた塔の最上階ボスを倒して貰ったユニークスキルです」
「因みに、私とプリスも貰ったぞ」
二式葉が説明を付け足す。
「なんてこった! そんなスキルあったなんて!!」
叫び声を上げた、クロノスさんを横から左之助さんが小突く。
多分、あれ、わざと場を和ませようとやってるんだろうな。
……そうだよね?
「……取り乱しました。
ジン君、ありがとう。
これ以上の説明は、後で個別にでも質問して欲しい。それで良いかな?」
と、クロノスさんがジェイフクの方へ顔を向ける。
「ん、ああ、十分だ」
それに頷いた後、ニケさんに視線を送るクロノスさん。
「えー、再び、クラウディオスのニケです。
ジン君、貴重な情報を、どうもありがとうございました。
続きまして、先程、二式葉さんから質問があった敵勢力についてですが、まずはこちらをご覧ください」
仮想ウインドウに、マップと思しき図と、何かの書き込みが表示される。
「ここに表示したマップは、Wisdom and Courage Onlineの物です。
そして、そのゲーム内で、今日イベントの告知がありました。
内容は、私達と同じRvR、大規模戦闘です。
開催日は五日後の予定です」
「熊熊団、団長ブンさんだ。他ゲーの情報を公開して何になる?」
当然の意見だ。
ウインドウ上にWCOのマップと並んで、見知ったC2Oのマップが表示される。
「向かって左がWCO、そして右がC2Oです。
WCOのイベント開催予定場所は、ここです」
WCOマップの左下に。赤い丸が表示される。
そして、二枚のマップの赤い丸、イベント開催場所が重なるようにマップが移動する。
「このように、イベント開催場所を中心に、周囲の地形、海岸線が、一致しているのがわかります」
確かに、二つのマップが一部重なり合って表示された部分は奇妙な一致を見せていた。
だが。
「偶然だろ」
誰かが、言った。オレも同意見だ。
「確かに、これだけであれば、ただの偶然。マップデータどちらのゲームも共通のソースを元にしているとも考えることが出来ます」
「つーか、マップのベースデータがどっちも日本なだけだろ。こっちは関東。向こうは関西」
あ、言っちゃった。
そう。
C2O、なんとなく気付いていたが、明らかにマップのベースは日本、関東地方になっている。
センヨーは千葉市、ルノーチは丸の内、コハは横浜。
名前もわざとらしく近しくしている。
以前リィリーと足湯に入ったのは、江ノ島だし、その先の廃城は小田原城付近。まぁ、城の造形は西洋風だったが。
そして、ルノーチに十三代将軍がいる。とすると時代背景は幕末か?
海岸線を見るにWCOのマップは静岡から大阪辺りまでか。日本海側は入ってない。
ただ、マップの大きさはC2Oの倍ほどある。
イベント開催場所とされたエリアはちょうど、富士川の下流近辺だろう。
「そうですね。ここルノーチは東京、若しくは江戸としたほうがやはり位置関係が分かりやすいですね。
今回のイベントは、ここ、富士川近辺にて迎え撃ちます。
敵は、WCOのプレイヤーと仮定すると、京都からの進軍。
その数は、およそ、三千と予想します。
迎え撃つ我らC2Oはせいぜい。二千程度では無いでしょうか。
この二千は、昨日の闘技大会参加者数です」
「ギルド、La Roue de Fortuneのデローダです。さっきから相手がWCOであるかのように決めつけているが、それは運営か何かから情報があったのか?
オレも向こうのゲームをプレイしている知り合いがいるので、様子は聞いている。
マップの他にも、世界観や、武技、魔法系統など、奇妙に一致する部分がある、ということも知っている。
ただし、それら全てが偶然の一致。若しくは、開発時に何かしらの共通ソースを使ったから。と言えなくも無い。
ひょっとしたら、開発元が一緒の可能性すらある。
ゲームの垣根を跨いで攻め込んでくる、と断ずるに足る根拠は何だ?」
「えー、クロノスです。
運営にはもちろん問い合わせは入れていますが、返事はありません。経験上、期待できないものと考えています。
私達が、このゲームの独立性に疑問を持った経緯をご説明します」
ウインドウ上に、新たな画面が表示される。




