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55.新たなイベント

 クラウディオスに入ると、既に話が通っていたのであろう、受付のプレイヤーがオレの顔を確認するとすぐに地下の部屋へ案内された。


 そこは、小さなホールほどの広さで、中央に大きなドーナツ型のテーブルが置かれていた。

 周囲に椅子があり、ざっと二十人以上は座れそうだ。



 上座の位置に、既にクロノスさんが着席していたので、会釈を送る。


 その斜め向かいに、海猫さんを挟んでリィリーと名は知らないが、Creator's Homeで何度か見かけた人が座っている。


 オレに気付いたリィリーがブンブンと手を振る。


 そちらに近づくと、隣の空いた椅子をポンポンと叩く仕草をする。

 そこに、座れということだろう。


 リィリーの隣の席プリスを座らせ、さらにその隣の席へ腰を下ろし、三人の方へ顔を向ける。


「何があるんですか?」


 リィリーは、一瞬むくれたような顔をした後、一つ席を詰めてプリスのいた席へ移動し、プリスを自分の膝の上に乗せる。

 それに合わせ、海猫さんともう一人も一つずつ席を移動する。


「まぁ、大掛かりなイベントだな」

 座り直しながら、海猫さんが答える。


「ひょっとして、結構長丁場になります?」

「ん、かもしれん。時間まずいなら途中で退席しても構わないと思うが」

「いえ、プリスが心配だな、と」

「そうか。退屈かもな」


「大丈夫だよー」


 リィリーの膝の上で答えるプリス。


「何か、お菓子とか用意しとけば? 後は、絵本とか」

「絵本は無いなぁ」


 と言って、プリスにアイテムカタログを渡す。


「退屈だったらこれ、選んでな」


「子どもに渡す本じゃないわね」


 仕方ないじゃないか。


「よし、じゃ、おやつを用意させよう」

 海猫さんが、メニューを操作し誰かにメッセージを送る。


「助かります。支払いは後でしますんで」

「パフェが良い!」

「贅沢いうな」


「はは。大丈夫。ウチのギルド自慢の腕利きに用意させるよ」



 そんなやり取りの間にも、ポツポツと部屋に人が入ってくる。

 中には、昨日の闘技大会で見かけた顔もチラホラ。


 あ、二式葉だ。あいつも呼ばれたのか。

 その後ろから入ってきた女性が、こちらに向けて小さく手を振る。


 リィリーとプリスが手を振り返している。

 あれは、確かソロ連合の回復役ヒーラー、月子という名だったか。


 二式葉が海猫さんの所まで来て、「ほら」と、小さな包を取り出した。


「すまない」

 受け取って、中身を確認するとそのままプリスの方へ包を渡す。


「とりあえず、クッキーだ。パフェはまた後でな」

「わーい! ありがとー!」


「何かと思えば、プリスのだったのか」

 と言いながらオレの横へ座る。更にその隣に月子さん。


「重いだろう。変わろう」

 二式葉がオレ越しに両手をリィリーの方へ伸ばす。


「え、ダメよ。プリスはここが良いよね?」

 リィリーがプリス抱き寄せながら語りかける。


 なんで、取り合いしてるんだよ。


 プリスはクッキーを食べる手を止め、リィリーと、二式葉を見渡し、そして、お菓子と本を抱えながらリィリーの上を離れ、オレの前を横切る。


「え」

 と、泣きそうな顔をするリィリー。

 小さくガッツポーズを二式葉。


 が、プリスは、二式葉の更に向こう。

 月子さんの所まで行って「ここが良い」とその上に座ってしまった。


「こら、プリス」

 慌てて呼び戻そうとするが、月子さんは「あらあら」と言いながらプリスの頭をそっと撫でる。


「良いわよ。別に。ここで大人しくしてましょうね」

 前半はオレに、後半はプリスに向け月子さんが優しく言う。


「すいません」

 月子さんに頭を下げる。


 どうしてこうなった?



 ニケさんが、入り際に部屋の扉を締めた。

 総勢、二十一名。

 顔と名前が一致する人は半分もいないぞ。


 ニケさんが、クロノスさんの横に着席する。


「えー、ギルド、クラウディオスのギルドマスター、クロノスです。

 今日は、急な呼びかけにかかわらす、足を運んでいただきありがとうございます。

 有力ギルドの面々は既にご存知と思いますが、ソロプレイヤーの方もいますので、まずは今回の経緯を説明します」


 クロノスさんが、話し始めた。

 同時にクロノスさんの後ろに仮想ウインドウが表示される。


「本日、ルノーチ城からの使者を名乗るNPCより、クエストの依頼があり、当ギルドはその依頼を受理しました。

 依頼内容を読み上げます。

 『間者の報告により、西国側がこちらに向けて挙兵、進軍の計画があるとのことが判明した。

 敵軍は、五日後に西の関所を超える想定である。

 他の有力組合にも依頼を出す故、連携の上、関所の東に陣を取り、敵軍を撃退してされたし。

 見事、撃退の暁には参戦した者全員に、等しく報奨を与える。

 なお、賛同する組合へは、別途、支度金・物資を支給する』

 以上」


 仮想ウインドウにも同様の内容の文章が提示される。

 同時に広域マップが表示され、左下に『西の関所』と赤字で示される。


「このゲーム始まって以来のRvR(集団戦闘)イベントです。

 『五日後』と言う、短い準備期間のため、密に連携を取り、戦力を拡充させ来たるイベントに臨みましょう。

 と、言うのが本会議の趣旨です」


 横で二式葉が手を上げる。


「発言前に、お名前と、所属ギルドを述べて下さい。どうぞ」


「二式葉、無所属だ。敵の数、勢力は? モンスターなのか? そして、こちらの勢力予測は?」


 続いて、鎧を着た戦士が発言する。


「オクター、ギルド白銀騎士団で団長をしている。その前に、ここに集められた人選の理由を教えてもらいたい」


「ニケです。クラウディオスのサブマスターです。今の質問は私から答えます。

 まず、敵対勢力。こちらの詳細は現時点では判明していません。

 ただし、NPCからの情報を統括すると、西の関所の向こうでおこされた軍勢との事ですので、おそらくはモンスターではない軍隊と予想されます。

 これに関しては、後ほど、不確定ではありますが当ギルドが掴んだ情報を公開します。

 次に、今この会議場にいらっしゃる方々ですが、まず、同じく依頼かけられたギルドの面々、そしてギルドに所属しない有力ソロプレイヤーのうち、私どもで連絡可能な方へお声がけをしています。

 ただし、急な連絡となりましたので都合の付かなかった方々ももちろんいらっしゃいます。

 そういった方々には、後日改めてお話する機会を設ける予定です」


「ジェイフク、ソロだ。直接依頼を受けたギルドはわかるが、ソロプレイヤーを呼んだのは何故だ?」

「クロノスです。今回の依頼、つまりは戦争です。ですので、一人でも多くの戦力を確保したい。そして、短い期間ではありますが、その戦力を向上させるために情報交換の場も兼ねたい、と言うことです。

 全ては、勝つため、とお考え下さい」


「ジェイフクだ。逆に聞くが、負けるとどうなる?」

「クロノスです。詳細はわかりません。申し訳ない」

「ジェイフクだ。情報交換と言うが、そもそも情報開示しない奴がいるだろ? 人選間違ってないか?」


 言った後、オレの方を見る。

 ん?

 オレ?


「クロノスです。プレイスタイルについては人それぞれと考えます。個人で得た、情報の公開は他プレイヤーにとってはメリットとなりますが、当人にとってはデメリットとなりかねません。

 それを強制するつもりはありません。

 その点は、ご理解いただけませんか?」


「そんなの、情報交換の意味ないだろう!」


 ジェイフクが、抗議の声を上げる。

 やり取りが不毛だ。


「ジン、ソロです。

 えっと、ジェイフクさん、オレに言ってますよね?

 ピン来ないんで、はっきり言ってもらえませんか?」


 ジェイフクが、怒り顔で立ち上がり、オレを指差す。


「お前、謎スキル情報、公開しないじゃないか!」

「謎スキル?」

「特殊魔法と、オリジナルスキル作るやつだよ! あと、天使の召喚!

 そこのニケに聞かれても、教えなかったんだろ!?」

「違う! 私はあえて聞かなかったの!」


 なんだ。

 術式分解と技能融合、死霊契約か。


 一同の視線がオレに集まる。


「それくらい、別に隠してないし、幾らでも教えるさ。

 ニケさんは、『聞かない』と言ったから言わなかった。それだけ」


 そう、ジェイフクに言った後、立ち上がって席に座った面々を見渡す。

 そして、クロノスさんに視線を定める。


「今言ってた、術式分解と技能融合、死霊契約については今ここで公表します。

 各ギルドメンバーに伝えてもらってもいいですし、掲示板等に公開してもらっても構いません。

 その代わり、お願いが二つあります。

 まず、一つ。

 ゲーム中、集団で取り囲むのを止めていただきたい」


「それに関しては、私も止めて欲しい」


 横から二式葉が口を挟む。


「そしてもう一つ」


 一拍置いて、続ける。


「蘇生、再生と言ったスキル若しくはアイテム、或いはイベント。

 その情報が欲しい。どんな些細な事でも構いません」


 その為なら、スキルの情報くらい安い物だ。


「ジン……」


 横でリィリーが小さく呟いた。


「わかった。

 公表と合わせて周知させよう。

 マナーについては、ジン君に限らず、とする。

 蘇生に関してはどうすれば良い?」


「海猫だ。Creator's Homeのマスター。蘇生の情報はオレのところが窓口でどうだ?

 ギルドのカウンターにいる奴に伝えてもらえばいい」


「それで良いです」


 オレは、椅子に座り直す。


「えーっと、まず、技能融合なんですが」


 オレは記憶を頼りに話しだす。

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