50.第二回闘技大会 準決勝
「さて、次はどう戦う?」
「厄介だな」
「何が?」
「あの、弓使いだ」
「うん。オレもそう思う」
次の、対ソロ連合戦の作成会議。
相手の中に見知った顔が一人。
二式葉が挙げた弓使いがフェイである。
他は、前回の闘技大会の本選出場者が数名、ただし、顔と名前がいまいち一致しない。
回復役の女性が、全体回復魔法を行使していたので、高位レベルの神聖術が使えるのであろう。
プリス、除霊とかされないよね?
「いい加減、オレも参加したいんだけど」
「そうだな。じゃ、弓使いを任せる」
「了解。プリス、最初にフェイに夜闇をかけて欲しい。弓はなるべく使わない。回復はギリギリまで、我慢」
「わかったー」
仮想ウィンドウ上では、そろそろもう一つの準決勝が始まる。
ニケさん達とリィリー達だ。
[がんばれ]、とリィリー、楓、桜に送っておいた。
「そろそろ始まるか。さて、決勝はどちらかな」
「どっちとやりたい?」
「リィリーとは、喧嘩したくなーい」
二式葉へ質問したのだが、プリスが答えた。
「そうだな。私も、もう一つのチーム、ニケたちの方が良いな」
「あれ、そうなの? ドラゴンは戦いづらそう?」
オレ、ドラゴンと戦いたかったんだけど。
そうすると、必然リィリー達とも戦うことになるわけで、それはそれでやり辛いなと思案していた。
「やはり、身内とは戦いづらい」
「え? 身内?」
試合が始まった。
果敢にリィリーと楓が飛び出して行く。
「あれ? 聞いてないのか?」
二式葉が意外そうな顔を向ける。
「え、何? 誰と誰が身内?」
「桜。妹だ」
えぇ!?
そう言われてみれば、どことなく面影がある?
待て。
「プリス見て、妹がいたって言ってたのは覚えてるけど……。
過去形だったし、てっきり……」
「あぁ、アレは昔の桜を思い出していたんだ。
昔は、可愛かったのになぁ……」
遠い目をする二式葉。
思わず、眉間を抑えて天を仰ぐ。
そうかぁ。
「それは、知らなかった……」
「だが、その心配も杞憂の様だ……」
二式葉の言葉に、慌ててウインドウに目をやる。
ちょうど、放たれた魔法の直撃を受け、桜のHPが全損したところだった。
同時に、召喚獣プラムも主を失い、盤上から消滅する。
これで、もう、勝敗は決しただろう。
同時に二つの駒を欠いて尚、勝ち筋が残っているほど甘い相手ではない。
二式葉が、ウインドウを開き、誰かにメッセージを送るのが見えた。
最後は、一人となったリィリーが、ニケさんに一矢報いたところで決着となった。
さ、次はオレたちだ。
目の前に、試合会場への転送のカウントダウンが表示される。
■■■■■
試合開始前、互いの顔を見渡すが、挨拶も握手もなし。
それだけ、相手が本気ということだろう。
あれ、フェイって、オレの素の顔知らなかったっけ?
プリスを見て、怪訝そうな表情を浮かべている。当のプリスは呑気に手を振っているが。
『レディー…………、ゴォー!!』
飛び出す二式葉にオレも続く。
目指すはフェイ。
両手に溟剣を出現させる。
プリスの夜闇が矢を番えたフェイを襲う。
視界を奪われ、狙いを外した矢を横目に間合いを詰める。
しかし、すぐさま回復術で闇が取り払われる。
フェイまで後一歩というところで、横手から飛来した短剣が鼻先をかすめる。
気配察知のお陰で、ギリギリ助かった。
お返しとばかりに合成魔法をお見舞いする。
「流星」
火魔法と石魔法の融合によるオリジナル。
炎を纏った石礫を空中から浴びせ掛ける。
威力もさることながら、見た目のインパクトが結構大きい。
いくつか直撃し、HPを大きく減らしたようだ。
その間に、再度フェイへ詰め寄ろうとするが、それより前にフェイの矢がオレの足を撃ちぬいた。
痛みこそ無いが、足の動きが鈍くなる。
機動力を殺されたか。
短剣使いのHPも元に戻っている。
出し惜しみしてる場合じゃないな。
「纏風」
自己強化をかけた瞬間、フェイへ再度、暗闇が襲う。
ナイス、プリス!
「雨燕」
突撃を兼ねる溟剣の武技。
間合いを詰めつつ、突きを繰り出す。
近づいてしまえば、怖い相手ではない。
暗闇から回復できないままのフェイへ、連続で溟剣技を叩き込みHPバーを全損させる。
まず、一人。
二式葉は?
ちらりと目をやると、一人葬ったところだった。
既に、鬼神化を発動させている。
残りは短剣使い、回復役、そして二式葉と切り結んでいる一人。
……ん、計算が合わない。
さっき二式葉が葬ったのは二人目だったのか!?
短剣使いが、距離を取りつつこちらに牽制を仕掛ける。
悪いが、二式葉の奪われるわけには行かないので、こちらも速攻で沈めさせてもらうぞ。
オレが短剣使いを葬ると同時に、一人残った回復役は、降伏を宣言した。




