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5.スキル取得

 【気配察知】のおかげで、ネズミはすっかり雑魚と化した。

 先制で魔法発動、避ける、斬る。

 死角からの攻撃には、振り向きざまにカウンター!

 この繰り返しである。


 【気配察知】を取得した昨日こそ、何度か体当たりをよけきれず死に戻ったが、今日はノーミスで地下1階を踏破した!


 行ける!イケるイケるイケーる!

 行けなかった。


 地下二階の初戦でMP枯渇。

 諦めて一撃食らう。

 HPMP全開で死に戻るこのチュートリアルダンジョンてオレにとって最高の場所だな! クソが!!


 最早、打つ手なし。

 MP回復スキルを後で調べよう。

 SP10でどうにかなるとは思えないので、地道にレベル上げだな。


 MP枯渇即死に戻りを繰り返してレベル4に。


 【ジン】 #LV.4

 HP:100

 MP:140(↑15)

 STR:13(↑3)

 VIT:5

 AGI:14(↑4)

 DEX:14(↑3)

 INT:18(↑3)

 MIN:11(↑2)

 SP:20(↑10)


 さらにレベル上げ。

 地下二階の半ば辺りまで戦闘継続できるようになった。

 と、


<ポーン>


 システム音。


<スキル【長剣】を取得しました>


 ん?

 なんと! SP使わずにスキル取得出来るのか!

 条件は? 回数か?

 ならば、後数戦で、


<ポーン>

<スキル【火魔法】を取得しました>


 やはり!

 戦闘回数、もしくは使用回数のどちらかは不明だが、一定回数の行動を行うことでスキルが取得できる!


 早速【火魔法】を有効化。

 ヘルプによると、魔法書がなくても魔法が発動できるはず。

 【魔道書入門編・火】をアイテムボックスに戻し、【火魔法】のスキル効果で取得した魔法を唱える。


火柱ファイヤストーム


 炎が勢い良く立ち上る。

蛍火ファイヤ」より威力は数段上、消費MPは同程度だ。


 よし!

 そうと分かれば、レベル上げついでに他のスキルも取得してしまおう!

 ひとまず目標を見習いシリーズがある魔法スキル六種コンプにしよう。

 【魔道書入門編・氷】を取り出す。

 ついでに、【見習いの長剣】を【見習いの細剣】に持ち替える。

 武器技能も狙っていこう!


 なんとか目標を定め、モチベーションを維持しつつ、経験値稼ぎと死に戻りを繰り返す。


<ポーン>

<メッセージがあります>


 何だ?


[送信者:ニケ

 呪いの装備について詳しく教えてほしいのだけど、時間取れないかしら?

 今日か、明日ならいつでもいいわ。

 大丈夫なら時間と場所を指定してもらえば迎えに行きます。]


 デートの誘いだ。

 いや、これは巧妙な罠だ。

 そんな餌にクマー


[大丈夫です。

 1時間後、冒険者ギルドの前でどうでしょう?]


 と返信。


[送信者:ニケ

 了解!]


 一時間後、オレは冒険者ギルドの前で十分前から立って待っていた。


 時間通りにニケさんはやってきて、冒険者ギルドの前に立つ。


 冒険者ギルドの入り口を挟んで、二人が並んだ格好だ。


 あれ?気づいてない?

 歩いてやってくるときにオレの前を通り過ぎたから視界には入ってるはずなんだが、フードを目深にかぶっているから気づかなかったのか。


「ニケさん」


 オレは近づきながらフードを少し上げて声をかける。


「ひゃっ!」


 飛び上がるくらいに驚かれてしまった……。

 何もそこまで。


「ジン君?

 え?

 いたの? 気づかなかった……。

 ……存在感ないねー」


 苦笑しながらそんなことを言う。

 あー【隠遁】のせいで、気配が薄くなってるのかも。

 対人でも有効なのか?

 まぁ、黒のローブのせいかも知れないが。


「それにしても……

 何そのカッコ?」


 今度は微笑む。

 ここに天使と女神がおられる。


「やっぱおかしいですかね?」


「うーん、怪しさ満載ね。

 なんか、こう黒幕的な。

 でも実は本当の敵に利用されてただけで、物語中盤であっけなく退場しちゃうキャラ」

「ラスボスに、足切りの生け贄にされて魔物とかにされちゃうヤツですよね。

 で、ぐぉぉぉぉとか言いながら勇者にあっけなく倒される。と」

「そうそう。そんな感じ。似合ってるけどね」


 いや、それフォローになってないですから。


「さて、ここて立ち話も何だから、酒場にでも行こうか」

 と言って歩き出す。

「あ、オレ一応未成年です」

「大丈夫よ。本当にお酒が出るわけじゃないし。

 ちなみに、私はどっちに見える?」


 ん?と首をかしげながらイラズラっぽい目でオレを見る。

 ここに天使と女神と悪魔がおられる。


「飲める方に3,000点」

「あ、ひどい」

「え、ごめんなさい」

 少なくとも年上だと思ったのだが。

「なんてね。正解は、そうだな。もう少し仲良くなってからかな」


 やだ、なにこの人。

 こういうやり取り慣れてそう。


「ここが酒場。

 来たことある?」

「いえ」

「結構料理が美味しいのよ。VRなのにね」

「へーそうなんですか」

「ちなみに酒場と言いつつお酒は飲めないわ。

 飲んでも酔わないでしょうし」


 と言いながら酒場のドアを開ける。


「いらっしゃいませー」


 奥から、店員がやってくる。

 猫、いや、犬系かな。

 獣の耳がついた女の子だ。

 人間の耳がある場所はどうなってるんだろう。

 まぁ気にするだけ野暮と言うものだ。


「一名様ですかー?」

「二人よ」

「あれ? あ、失礼しましたー」

「空いてたら、個室をお願いしたんだけど」

「大丈夫ですよー。こちらへどうぞー」


 店の奥へ案内される。

 なんというか、ニケさんのこなれた感じにびっくりデス。

 この人、きっとリアルもこんな感じなんだろうか。

 下手すりゃ大分年上かも知れない。

 などと、若干失礼なこと考えつつ通された個室の椅子に腰を掛ける。


「さっき声かけられた時もそうだけど、ジン君存在感無いね。

 店員も気づいてなかったみたいだし」


 メニューを見ながらおかしそうに言う。


「あー、オレ【隠遁】スキル取ってるんでそのせいかもですね」

「え、なんでそんなスキル取ってるの? ひょっとしてPK志望?」

「いえ、実は」

 メニューを開いて【隠遁】をオフにする。

「これがないと音がうるさいんですよ」

 と、腕を振って鎖を鳴らしてみせる。

「あ、なるほど。呪いの装備ね。

 へー。その対処方法が【隠遁】か。

 考えたわね。

 でも、【隠遁】ってコスト30よね? 思い切ったわね。

 で、注文なんだけど、勝手に決めちゃっていい?」

「あ、大丈夫です」

「嫌いなものとかない?」

「まぁたいてい食べれます」

「エライ。

 スイマセーン」

 と店員を呼ぶ。


 その結果、テーブルの上にはこれでもかという量の料理が並んでいた。


「いくら食べても太らないって、素敵だと思わない?」

「え、あ、そうですね」

「さ、好きなだけ食べて。ここは私のおごり。

 その代わり、しっかりその呪いについておしえてね」


 オレは初期設定時にポンコツAIをからかったこと、【反逆者】の称号、【縛鎖】装備の詳細を説明した。

 まぁ、ポンコツの件は若干オブラートに包んだけど。


「なるほどー。

 物理防御耐性低下。それは大変そうね」

「ええ。なにせネズミの一撃で死に戻りですからね」

「えぇ?

 そこまで非道いの?

 そんなんじゃ、何もできないじゃない」

「いや、まぁ【隠遁】と【気配察知】で避ければなんとか」

「でも、その二つ取ったら攻撃系のスキル取れないじゃない?

 スキル無しでも武器装備はできるけど」

「はい。どうにかこうにかレベル4まで上げれました」


 条件がまだ、自分の中でも確定していないからではあったが、攻撃系スキルが行動で取得出来たのは言わないでおく。


「それでレベルが上げれるのが逆にすごいわ」

「まぁ、なんとかなってます。今のところはですけど」

「君さえ良ければ一緒にパーティ組めるわよ?

 常にと言う訳にはいかないけど」

「……大変ありがたいことで恐悦至極なんですが、ちょっとしばらくはソロでやってみようかと思ってます。

 どうしようもなくなった時にまた相談するかもしれませんけど」


 とてもありがたい申し出だったが、自身の紙防御に加え、攻撃スキル取得を秘匿した後ろめたさがあった。


「そう……

 まぁ楽しみ方はそれぞれだから、強制はしないわ。うん。

 ソロで戦うなら、【識別】スキルは取っておいたほうがいいわ。

 敵の残HP、弱点属性とかもわかるようになるから。

 弱点属性で攻撃するとダメージは二倍近くになるわよ」

「おお!それはありがたい情報です!!」


 いつの間にか、テーブルの上の料理は全て片付いていた。

 八割方ニケさんが消費してたようだけど。


「それで、ニケさんはどうして呪いのことを聞きたかったんですか?」

「その前にデザート頼んで良い?」


 まぁ、おごりって言ってたから気にしないけど。


「えっとね、βテストやってたのは言ったわよね。

 その時もだったんだけど、攻略情報なんかを取りまとめているの。

 これから始める人達に、一定の目安になると良いかなと思って。

 まぁ、もともとこういう事まとめるのが好きって言うのもあるけど」

「まぁ、情報は大事ですからね」

「そうね。

 ただ、反逆者(君の称号)についてはしばらく公にするのを控えようと思ってるの」

「え、そうなんですか?」

「実は似たような現象が報告されてはいるの。

 まぁ、君ほどヘビーではないけど。

 サンプルが少なくて断言できないけど、みんな初期設定のキャラ登録絡み。

 これって、ネタが分かっちゃうともの凄くつまらないと思うんだ」


 いや、ゲームに行き詰まるほどの罠なら避けさせてあげたほうが良いんじゃないだろうか。

 一撃死て、ぶっちゃけクソゲーの領域ですよ?


「キャラ登録でメリットあることが判明して、

 その手順も明らかになっちゃうと、同じキャラばかりになっちゃうじゃない。

 それって、なんかつまらないと私は思う」

 まぁ、鎖巻きつけたキャラばかりになっても騒がしい事この上ないしな。

「そうですね。なんとなくわかります。

 でも、メリットですかね?これ」

「あ、君とは逆で恩恵っぽい称号もらったケースがあるのよ。

 ただ、うん。これ以上は秘密。

 いろいろ聞いておいて勝手だと思われるかもしれないけど」


 「秘密」のところで、人差し指を立てて口に当てるニケさん。

 あざとい。実にあざとい。だがそれがいい。


 その後、βで起きた事件や有名プレイヤーの話などを聞きながら、大量に運ばれてきたデザートやっつけるのであった。主にニケさんが。

 少食ね。と言われたけど単に鎖が口元まで巻き付いてて食べづらいだけなんです。


「ごちそうさまでした!」


 宣言通り、支払いはニケさんにお任せする。

 男らしくないとか言うな。

 インスタントダンジョンではゴールド入手できないので、実はかなりの金欠なのだ。


「うん。

 今日はありがとう!

 楽しかったわ。

 それと、その格好、結構似合ってるわよ?

 じゃね」


 笑顔で捨て台詞を残し、立ち去っていく。

 オレをデレ殺す気だ。

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