48.第二回闘技大会 一回戦
控室。
二式葉は、机に顔を突っ伏している。
戻ってから、ずっとだ。
「なぁ、いっそその格好で戦ったらどうだ?」
「……なんで、こんな事になったんだ?」
「まさかとは思うが、酔ってないよな?」
キッと顔を上げ、オレを睨むが、すぐ元の体勢に戻る。
「……運営の口車に乗せられた」
「まぁ、別に悪くなかったと思うけど」
「そんな世辞はいらん」
「あ、そう」
いや、実際見惚れたけどな。
「で、どうすんだ? もうすぐ試合だぞ。その格好で出るなら大勢のファンが出来ると思うが」
「……着替える」
と、言ってメニューを操作して鎧姿に戻る。
髪と顔も元通りだ。
「戦えるか?」
「冷静に戦う自信が無い」
「初戦はオレ一人で行こうか」
「私がやる」
「自信無いんじゃないのかよ?」
「負けはしない。ただ、理性を抑えきれる自信がないだけだ」
「二式葉、すごい綺麗だったよ?」
プリスが素直な感想を言う。
顔を上げ、頭を撫でながら「ありがとう」と元気なく言った。
他チームの戦い振りでもチェックしましょうか。
ウインドウでは最初の試合が始まろうとしていた、
■■■
『一回戦、第五試合!
六人の淀みない連続攻撃が牙をむく。武威ッ無双ォォ!!
対するは、
最強コンビ! アルカンシエルゥ!!!』
中央で、相手の六人と握手をする。
全員が前衛職か?
獲物は、長剣、大剣、槍、戦斧、メイス、そして、巨大ハンマーか?
見るからに脳筋集団!漢臭い!
男らしさの演出は見た目だけにしておけばよかったものを。
「ドレスは止めちゃったのか?」
と、一人が、二式葉にニヤけながら声をかけた。
周りも釣られて、笑い声を上げる。
嗚呼……馬鹿が……お前らは今、虎の尾を踏んだぞ。
案の定、二式葉は表情こそ笑みを浮かべているが、開始位置まで離れた後に一言オレに言った。
「蹂躙する……。手出し無用……」
「了解」
『レディー…………、ゴォー!!』
開始と同時に飛び出す二式葉。
「纏火、纏石」
これくらいは良いだろう。強化魔法を掛ける。
当の二式葉は、うっすらと橙色のオーラを纏っているように見える。
鬼神化だ。
後ろ姿からは視認出来ないが、首筋に朱い文様が浮かび上がっているだろう。
その意匠から、文様は首から上半身、ひょっとしたら下半身まで繋がっているかもしれないが、確認の術はない。
うーん、無駄演出。
二式葉が、六人を葬るのに一分とかから無かった。
オレの出番無し。
戻ってきて一言。
「手出し無用と言ったはずだ!」
え、強化掛けたこと怒ってんの?
なんか釈然としない。




