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42.助太刀

「お久!」


 更紗に会うためにCreator's Homeへやって来た。


 目的は、プリスの服である。

 二式葉からも釘をさされているしな。


「プリスの服なんだけど」

「うん、二式葉からも聞いてるよ。

 で、だ」


 三枚ほどの紙を取り出す。


 それぞれの服のデザイン画が描かれている。

 少しずつデザインが違うようだ。


「プリスは、どれが良い?」


 更紗に問われたプリスは、その三枚を見比べ、たっぷり悩んだ後、その内一つを指差した。


「これが良いか? よし、じゃ次はこんな感じで作ろう。

 色はまた白でいいかい?」


 プリスが嬉しそうに頷く。


「そうだ、色々と素材があるんだが使えそうかな? 海猫さんに全部買い取ってもらおうと思ってたんだけど」


 と言って素材のリストをウインドウに出して更紗に提示する。


「ん、何だい? この天使の素材たちは?」


「あ、昨日手に入れた奴」


「これ、使わせてもらおうかな。多分、プリスの服だけだと余るけど、ジンのコートも強化しない?」


「それはお願いしたい」


「んじゃ、プリスの服が仕上がる前に連絡するよ。

 そん時今着てるやつ預かるから」


「ざす!」


 と、そこへ桜が奥から現れた。

 もう一人、見知らぬプレイヤーと一緒だ。


「あれ? どうした?」

 と更紗が桜に声を掛ける。


「うーん、変なのに巻き込まれて死に戻りです。あ、ジンさん」


「よ、久しぶり」


「コハ、飛べます?」


 いきなり何だ?


「南門を出て少し行った所で、まだ、楓とリィリーが戦ってます。助太刀行く気ありませんか?

 今からだと、間に合わないかもしれませんが……」


「いいよ。て言うか、その二人が苦戦て、何がいるんだ?」


「なんか、悪魔っぽいのを魔法陣で召喚されました」


 あれか? 一度戦った奴。

 つーことはこの前の連中がいるんだな。

 よし、行こう。


「マップ、あれば送っておいてくれ」


 そう伝え、返事を待たずに転移で飛んだ。



■■■■■



 コハの外に転移。すぐに千里眼を飛ばし戦況を確認。


 リィリーと楓、ミーちゃん、少し離れて、見知らぬプレイヤーが三人。

 敵対するのは、以前戦った奴とは違うが、同系統の見た目、魔人だろう。それが、二体。


 戦況は芳しく無さそうだ。


 うち、一体の魔人が、リィリーの死角から戦斧を投げつける。


 発動出来るか?


氷盾(アイスシールド)


 千里眼越しにリィリーの側に盾を出現させる。

 その盾が、戦斧を弾いたのを確認し、自身にAGI(スピード)強化を施し、戦場へ急ぐ。


 プリスは、戦えるか?

 直接の原因でないにしろ、アレとの戦いで命を落としている。


 走りながら声を掛ける。


「プリス、リィリーがピンチだ。一緒に戦ってくれるか?」


 プリスは、大きくうなずき、そして、オレ追い抜き、先行して飛んでいった。


「待て、無理するなよ!」


 逆効果だった。プリスは、平気で無茶をする子だ。



■■■■■



 槍を持った魔人が、リィリーと対峙する。


 そのリィリーの背後にもう一体の斧を持った、魔人が回りこむ。


 楓は? 少し離れて、膝を付いている。 その傍らでプリスが回復術を掛けている。


岩盾(ロックシールド)

 リィリーの背後にモノリスを出現させて、魔人を遮る。


 そして、リィリーと正面の魔人との間に氷剣(アイスソード)を構えたまま、体を滑り込ませる。


「間に合ったかな!」


 ちょっと、格好付けすぎの気もするが、結果良しとしよう。

 いや、勝負はここからなのだ。


 正面の魔人の残HPは? 二本と半分。


「ジン!?」


「後ろ、注意!」


「ジンさん!」


「楓、大丈夫か?」


 プリスの回復が間に合ったようだ。立ち上がりこちらに寄ってくる。

 が、ミーちゃんの姿は見えない。


「リィリーと楓は、斧のほうを。こっちはオレが引き付ける」


「「ハイ」」


「プリス、聖歌を!」


 指示に答え、プリスから、心地良いハミングが聞こえる。


 さて、どう戦う?


 少し、魔人と距離を取りつつ、場所を移動する。


 目の前の魔人と、斧の魔人。その両方が視界に入るように。




 二人へフォローの魔法を飛ばしながら、氷剣で前の魔人の相手をする。

 大火力魔法をお見舞いしたいが、手持ちにMPポーションが無く、回復手段が無い。


 魔人の槍を凌ぎながら懐に入り、少しずつ技を当てて削っていく。

 リィリーと楓の方が優勢か?


 楓の蹴り技が魔人の後頭部をとらえた直後、HPバーが砕け散る。

 仕留めたか。


 しかし、仕留めたはずの魔人はそのまま地面に倒れ込む。


 おかしい。

 仕留めたなら、光の粒子と化して消滅するはず。


 眼前の魔人が「グィアァァァァァ」と叫び声を上げる。

 反射的に、警戒で後ろに大きく飛び退く。


 これが、失敗だった。


 槍の魔人は大きく跳躍し、倒れた斧の魔人の死体の上に着地する。


 そのまま、手にした槍を魔人の死体に突き立てる。

 そこから、黒い霧が出現し、魔人たちを包んでいく。


 何をしている?


「何か、やばそうですよ?」

 楓と、リィリーがこちらに近寄ってくる。


「逃げてくれると、助かるんだけどな。可能性は低そうだ」

「助けに来てもらって言う台詞じゃないけど、弱気ね?」

「ん、MPに余裕が無い」


 リィリーはメニューを操作し、オレの目の前にウィンドウを出現させる。


「手持ちはこれだけ。渡しておくわ」

 表示されていたのはMPポーション×5。


「助かる」


 プリスのMPは? オレより余裕がありそうだな。

 残っていたMPで強化魔法(バフ)を施し、早速MPポーションを使う。


 魔人の立っていた所には黒い繭が形成されていた。



「そろそろ、来そうですよ?」

「初っ端、大技で行くが、それで沈まないからそのつもりで」


「グィアァァァァァ」と言う叫び声と共に、繭が崩れ落ちる。

 そこに立っていたのは先程より、二回りほど大きくなった斧槍を構えた魔人だった。

 HPバーは丸々四本。


火柱(ファイヤストーム)

 全MPを集中させた火力がそれを襲う。


 それが第二幕の戦端だった。



■■■■■



 リィリーが大鎌(デスサイズ)を脇腹に深々と突き立てる。


 それが、(とど)めとなった。



「終り、ですか?」

 粒子となって砕け散る魔人を見ながら楓が呟く。


 レベルアップの通知があった。

 ということは、これで戦闘は終了だろう。


 長かったな。

 三人共、地面に座り込んでしまう。


 MPポーションは全て使い果たした。


「なんとか、勝てたわね」

 リィリーが呟く。

「ちょっと、犠牲が多すぎです……」


 二人共、勝者の顔には見えない。


「ジン、プリスありがとう。助かったわ」

 リィリーが辛うじて笑顔を作って言う。


「何も聞かずに飛び出して来たんだが、何があった?」

「ここにいてまた襲われたら、流石にもう頑張る気力がないので、移動しましょう。

 リィリーはコハにまで行って、さっきのパーティがいたら、一言お願いします。

 ジンさんを警護につけるので、ついでに状況説明してあげて下さい。

 私は、桜達に報告にルノーチに戻ります」


 オレの予定が勝手に組まれてるんですけど。


「わかった。その後ルノーチに集合?」

「いえ、今日はもう解散です。ミーちゃんも居ないし、桜とスパナもステータス異常だし」

「そう、ね。コハで何か分かったらメッセージ送るわ」

「ハイ。じゃ、ジンさん! 今日はありがとうございました! とっても助かりました! ただ、タイミングが格好つけすぎなのはきっと気のせいじゃないです!」

「いやいや、頑張って急いできたんだぜ? また、今度ミーちゃんの顔見に行くから」

「私に会いに来てくださいよ!? じゃ」

 と言って、楓は転移していった。



「私達も戻りましょう」

 オレとリィリーはコハへ飛んだ。

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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