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40.プリスのドレス

「おかえり」


 Creator's Homeに行くと更紗がカウンターに座り待っていた。


 他にも何人かプレイヤーがいる。見知った顔は海猫さん。

 ミックの代わりにカウンターの中に立っていた。


「ほい。プリスのドレスだよ」


 カウンターへ腰掛ける、オレに更紗がウインドウを表示させる。


 『試着』をタッチして、対象者にプリスを選択。


 すると、プリスの着ていた服が、修道士風の地味めな服から、白いドレスへと変わる。

 装飾は抑え目にしてくれたようだ。


「どうだ、気に入ったか?プリス」と言うオレの問いかけに、全力で首肯して答える。


 性能を確認。


 アイテム:【白のドレス】 #ランク1 製作者:更紗

 軽く動きやすい。細やかな刺繍が施されている。

 物理防御値:2

 魔法防御値:1

 重量:1

 装備部位:体


 うん、まぁ、戦闘用とは注文してないからな。それは仕方ない。


「どうだい? ジン。プリスも気に入ったみたいだ」

「ああ、ありがとう」

 提示された金額を支払う。決して安くはない……。

「へへ、毎度あり。スカートの中はドロワーズにしてある。でも、絶対覗いちゃ駄目だから」

「そんな事したら、プリスいなくなっちゃうよね」と、リィリー。

「何それ。鶴の恩返し?」


 覗かないし、返される恩もない。


「で、だ。もう少し、性能を上げた物をオーダーしたいんだが、金額と納期どれくらいかかる?」

「この子の分? んー、倍用意してもらえば大抵のものはなんとか出来るよ」


 軽く言いやがる。


「……了解」

「ただ、闘技大会前は立て込むと思うから、早めに声かけてね」

「わかった」


 更紗はプリスの頭を撫でる仕草をして、辞去していった。



「さて、これはサービスだ」

 と言って、海猫さんが全員分の飲み物を出してくれた。


「どうしたんです?」

 果たして、プリスは飲めるのだろうか?

 と思ったが、問題ないようだ。プリスが飲み物を持つと、心なしグラスが透けて見える気がするが。


「いやな、闘技大会のメンバーの件だ」


「あ」

 忘れてた。


「どうなりました?」

「うん、まぁ、結論から言うとだな、駄目だった」

「そうですか」


「この前、珍しく、ソロでやってる連中がここに顔揃えてな。

 何気なく、話を振ったらよ、アイツ等、逆に団結しちまってな。

 打倒トップツーだ! って、そいつ等で参加する事になっちまった。

 オレもなぁー言い方間違えたかなー」


 ……何て言ったんだよ。強敵作ってんじゃねーよ。


「ん、まぁ……それはしょうが無いですね……」


「他にアテは付いたのか?」


 オレは、プリスを見ながら「うーん、どうでしょう。これから二式葉と相談ですね」と答える。


「え、ジン、二式葉と闘技大会参加するの?」


 と、リィリーが声を上げる。言ってなかったっけ?


「うん。そう言う相談は受けてる」

「何で?」


 何でって、お互いボッチなんだから仕方ないじゃないか。


「利害の一致?」

「あの女と、どんな利害があるんですか?」

 不意に、後ろから声を掛けられる。


 振り返ると、桜が立っていた。何時から?


「え、いや、お互いボッチだし」


 桜の得も言わせぬ迫力に押され、つい本音が出てしまう。


「ちょっと、二式葉って、女性なの?」

 リィリーが驚きの声を上げる。


「そうよ。中身はね」


 桜が、オレの左隣に座る。

 そして、リィリーがオレの右隣に座っていたプリスを、膝の上に乗せ、そこに移動する。


「利害ってどういう事かしら?」


 リィリーが、真顔で迫る。

 プリスがきょとんとした顔をしている。


「賞品狙いだよ! 賞品!

 お互い、ソロ専で組めそうな相手いないだろ!?」


「私は?」

「私達は?」


 リィリーと桜が同時に声を上げる。


「いや、だって相手は優勝者だぜ? 声かけられたら一応話は聞こうと思うじゃないか」


「それで、ノコノコと付いて行ったんですね!?」


 ノコノコって……。桜の言い方に棘がある。


「いや、だってオレ、女性だって知らなかったし……」


 何でこんな言い訳してんだろう。


「リィリー! 私達も出るわよ!」

「「え?」」


 オレと、リィリーが同時に声を上げる。


「こんな二人にむざむざと優勝させるわけには行かないわ!」

「え、ええ、そうね」

 リィリーが、桜の勢いに気圧されている。


「と、言うわけで! 私達は闘技大会終わるまで敵同士です!!」

「「え?」」


 また、オレと、リィリーが同時に声を上げる。


「行くわよ! リィリー! 今からメンバー集めと作戦会議!!」

 と言って、桜がリィリーを引っ張っていった。

 リィリーはこちらを振り返り、申し訳無さそうに小さく手を振る。

 それにプリスが応える。


 ああ、貴重な通訳と、薬剤師が!!


「んー、まぁ何だ。ドンマイ」


 静観していた海猫さんが静かに言った。




 カウンターに取り残されたオレは、ひとまず、二式葉へメッセージを送る。


[今日、明日、明後日なら時間合わせられる]

 ログインはしている様なので、その内返信来るだろう。


 その間に海猫さんと雑談しつつ情報収集。


 暫くして[今からルノーチで良いか?]と返信がある。


 [OK。ここの個室で待ってる]と、店の地図付きで送る。


 すぐに[また個室か?]と返信来る。

 [今日は二人じゃない。ただ、人目に付きたくない]と返す。


 ついでにニケさんに[いや★です]と返信しておく。

 闘技大会に参加するなら、今手の内を晒さない方が良い。




 Creator's Homeを辞去し、約束の店へ。

 待つこと暫し。


「久しぶり」


 と、小さく片手を上げたオレの後ろを見て二式葉は怪訝なそうな表情を浮かべる。

 プリスに気付いたのだろう。


「私より若いのだろうが、それでもその歳の差は駄目だと思うぞ」

「そういう趣味じゃない。何でみんなそう言うんだ」

「まさか、闘技大会のメンバーとか言わないだろうな」

「その、まさか、になるかは、これから判断かな」


「ふむ。二式葉だ。よろしく。お嬢さん」


 とプリスに挨拶をする。

 おや、随分と柔らかい表情だな。


「そうか、プリス。かわいい名だ」


 え。


「二式葉も【霊能力】持ち?」

「ああ、最近取った」

「何で?」

「南のマップにアンデットが出る。無くても問題は無いが、気配の察知に使えて便利だ」


 へー。


「メンバーの見込は?」


 オレは首を横にふる。結局フェイとは連絡を取れていない。


「そうか。仕方ない。私の方も同じくだ。そもそも探してないがな」


 はっきり言いやがった!


「一応、ヒーラーの候補として、プリスを考えてるが」

 二式葉はプリスをじっと見てからオレに向き直る。


「戦えるのか?」

「勇気と度胸は……折り紙つき。後は、どこまでレベルアップ出来るかに掛かってるかな」

「ちなみに今レベルは?」

「15と1」

 とオレとプリスを順番に指差す。


 二式葉が天を仰ぐ。


「二式葉は?」


「32」


 わお、ダブルスコア。


「ちょっと、戦う様子を見たい」

「ん、今からか?」

「ああ、少しだけでいい」

「まぁ、良いけど」



■■■■■



 二式葉と三人でルノーチ南フィールドへ。

 ここの敵は?

 巨大イナゴの群れ、鳥型モンスターそして、亀。


 それぞれの強さに脅威はない。


 プリスの戦いぶりは?

 上空から矢の雨を降らす。ちょっとエゲツナイ。

 そして、こう言う事態を予測してくれた更紗に感謝。


 他に、冥術の宵闇(ノクターナルダークネス)

 敵に暗闇の状態異常を付与する術。

 直接的なダメージこそ無いが、ボス戦など、長期間の戦闘では確実に役立つだろう。


 オレの方は攻撃を食らいつつ、プリスの回復術を使用する機会を増やす。


 二式葉はパーティにも、戦闘にも参加せずに、様子を観察している。



「なるほど。

 お前は、そのスタイルを貫き通すのか?」


 暫く、モンスターを狩ってからの二式葉の感想だ。


「いや、変化は付けたいけど、方向性を決めかねてる。

 正直、一撃で砕ける氷の針は、次の闘技大会では通用しないと思ってる」


「まぁ、そこは使いどころだろう。打ち合ったそばから、刀が無くなるというのも相手に取っては嫌なものだがな。

 それより、問題はプリスだ」


「え、ちゃんと戦ってただろう」


「ああ、予想以上だ。

 だがな……スカートで飛び回るのは、どうなのだ?」


 それは、うん。言われると返す言葉がない。


「でも、本人気にしてないしな」

「本人だけの問題でも無かろう。まあ、ドロワーズだから幾分マシとはいえ……スカートでなくバルーンパンツとかすべきだな。わかるか?」

「ノー」

「だろうな。作者は海猫の所の服職人か?」

「お、よく分かったな。更紗だ」

「次頼む予定は?」

「闘技大会前にお願いしたいと思ってるけど」

「絶対に依頼しろ。私からも言付けをしておく。何なら費用は私が出す」

「いや、言付けはお願いしたいけど、費用は大丈夫。多分」

「そうか。ただし、絶対に大会に間に合わせろ!」

「わ、わかったよ」


 プリスが二式葉に話しかけたようだ。


「怒ってるわけじゃないよ。プリスがもっと元気に動けるような服を作ってもらおうね。

 それと、これを上げよう」


 と言って、弓を一つ取り出した


 アイテム:【銀の弓】 #ランク2

 攻撃値:28


「いいのか?」

「ああ、私が持っていても使わないしな。プリスなら使いこなせるだろう」


 プリスは弓を受け取ると、笑顔でお辞儀をした。


「どういたしまして」

「ありがとう。色々気を回してもらって」

「ん? 気にするな。らしくないぞ?」

「プリスに甘いな」

「昔、同じ様な妹がいた」


 『いた』。過去形だ……。

 どういう事だろう?


 二式葉からルノーチ周囲のフィールドボスの特長を教えてもらう。

 順番に狩っていこう。



「まぁ、今のままでも負ける事はないだろうが、レベルを上げてからでも遅くはないだろう。

 特にプリスは」


「大丈夫! 秘密兵器がある!」

 と言って、『戦神のお守り』を取り出し説明する。


「アイテムカタログか。随分とつまらない物と交換したな」

「言うな! 実益は大事なんだぞ」


「ルノーチ北にある、朽ち果てた塔、知っているか?」

「ああ、一度行ったことがある。と言っても15階までだけど」


「来週、あそこを共に攻略しないか? うまく戦えるようなら、闘技大会にエントリー。どうだ?」

「いいけど、なぜ?」

「10階毎に中ボス階がある。舞台は円形広間。

 取り巻き含め複数体同時に出現する。

 闘技大会の予行練習になるだろう。

 そして、現時点で踏破した者はいない。

 つまり、仮に踏破出来れは、私達の力を測る良い物差しになる」

「なるほど。わかった」




 海猫さんと二式葉から聞いた、周囲の情報。


 北、マップの先に関所があり、現状進入不可。

 西、面積にして今までの4倍程度のフィールドマップ広がっている。中心に大きな山がある。現在、攻略組が開拓中。踏破率50%程度。

 南、西部にフィールドボスが存在し、その先には前述の西フィールドに繋がっている。南部は海に面している。


 暫くは、三体のボスを討伐しつつ、プリスとレベル上げだな。

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