37.少女
「でさ、オレも始めることにしたんだ。C2O」
と、田中が購買のパンを食べながら報告する。
共に昼飯を食べているのは、級友の田中と秋元、倉本だ。
「まずは、オレが色々教えてやるから」
先輩面をするのは秋元。こいつもC2Oのプレイヤーであることが昨日判明した。
「なんだよ、結局そっちにしたのか」
不満気なのは倉本だ。
曰く、彼はC2Oでは無い、Wisdom and Courage Onlineと言うゲームをプレイしており、そのシステムはC2Oによく似ているとのこと。
「で、どんなプレイをするつもりなんだ?」
秋元が尋ねる。
「ん、やっぱ魔法かな。いや、近接アタッカーも捨てがたいな」
「先輩として、アドバイスすると、魔法は属性絞った方が良いぞ。近接はタンク不遇説が出てきている。今のところ攻撃力優先が良いみたいだ」
「まぁ、どのゲームも不遇職はあるよな。地雷スキルとか」
「秋山は何やってんだ?」
「オレ? 正に不遇職のタンク」
「へー。それはご愁傷様。じゃ、佐倉は?」
オレ? なんだろう。純魔法職でもないし、近接と言うには紙防御だし。
控えめに言っとくか。
「器用貧乏?」
「何で、疑問形なんだよ」
「佐倉は今レベルいくつなの? 相当やりこんでんだろ?」
「15」
「あれ、そんなでもないな」
「まぁ、ソロで気ままにやってるからな」
「へー、その気があるならウチのギルド入るか? 田中も入るんだぜ」
「考えとく」
「何か、楽しそうだな。オレもそっちやろうかな」
倉本が悔しそうに呟いた。
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ログインをする。
泊まっていた宿屋の一室。
昨日と違うことが一つ。
目の前に何も言わぬ少女の瞳。
これは、プリスなのか?
オレが、救えなかった少女。
オレが、殺してしまった少女。
何も言わず、ただオレを見ていた。
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放課後、興奮げに田中が話す。
「いや、あの動画、マジヤバいだろ!」
「だろ?」
そう答えるのは秋山。
倉本とオレには何の事かさっぱりわからない。
「何の話だ?」
「秋山にさ、C2Oのイベントの動画、教えてもらったんだよ。闘技大会のダイジェスト」
「まぁ、スタイル決めかねてるていうからさ、アレ見てもらうのが、一番わかりやすいだろうと思ってな」
「なるほどな」
「何それ、オレでも見れるの?」
闘技大会は、全試合見てたので話についていけないのは倉本だけか。
「後で送るよ」
「マジヤバいから見ろって。瞬間移動とかしてるから」
したね。
「アレ、後から運営が禁止にしたけどな」
「あとさ、氷の剣とか振り回してんの」
そうね。
「掲示板でも条件判明してない謎スキルなんだよ。アレ」
「挙句、そいつを倒して優勝するイケメン剣士の無双っぷり」
女だけどな。
「腐女子に一番人気らしいぜ」
「でもな、オレが一番感動したのはそこじゃない!」
何だ?
「惜しくも三位になった、美女二人だ! あの人達とフレンドになりたいぜ!」
二人ともフレンド登録してる。ついでに、イケメン剣士も。
「ま、フレンドになれるかどうかはこれからの頑張り次第じゃないかな。二人共有名人だし。
もうすぐ、団体戦の大会があるから、そこで活躍すればワンチャン」
「マジか! オレ、暫く休校するわ」
馬鹿か。
「佐倉は大会参加すんの?」
「んー検討中」
「そうか。ちなみに前回は参加したのか?」
「ああ、したよ」
「お、結果は?」
「あと一歩だった」
「そうか、そうか」
何か納得したらしい。
優勝まであと一歩だとは気付いて無いだろうな。
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何故、何も言わないんだ?
恨んでいるのだろう。
憎んでいるのだろう。
当然だ。
オレが殺したのだ。
オレが。
あの時、守れていれば。
クエストに連れださなければ。
クエストを受けなければ。
出会わなければ。
まだ、生きているはずだった。
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「ヤバいね。アレ」
倉本も田中と同じようなことを言う。
「スキルとかさ、オレのやってるWCOに似てんのよ。それだけにヤバさがわかる。あそこまでぶっ飛んだのはいないな」
「いやいや、こっちでも、ぶっ飛んでるのはトップ連中だけだぜ」
「あとさ、気になったのがAIの出来な。
あの、進行してたのAIだろ? 実はこっちでも似たようなイベントが会ったんだけど、どことなく似てる気がしたんだよな」
「偶然だろ? それか、開発元が同じか近いところとか」
「気になって調べたんだけど、特に関連性無いんだよな」
「でもさ、NPCの出来は凄いよな。予想以上に会話が成立する。というか、向こうから話題を投げてくる」
田中が興奮気味に話す。休みはしなかったようだ。
まぁ、休んだところでプレイ時間には制限があるから、意味ないのだが。
「それな、オレもはじめは驚いたよ。たかがAI。プログラムでしか無いのに生きてるみたいだなって」
そう。NPCなんて、たかがAI。
演算上の存在でしかない。
そこに、命など、無いのだ。
はじめから、生きてなどいないのだ。
「どうした? 神妙な顔して」
「別に」
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この世界に、生と死は存在しない。
全てプログラムでしか無い。
だから?
それが分かったところで、目の前の少女は救われない。
いや、救われないのはのオレの方か?
「……消えてくれ……」
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