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32.クエスト受理

「よう。親父」

「ん、ああ、兄ちゃんか。準優勝だってな。おめでとう」

「親父のおかげだよ」

「心にも無いことを言いやがる。で、何の用だ? いい加減、クエストの一つも受けないか?」

「それは、また今度な。胡散臭い依頼回されたら溜まったもんじゃない」


 ここは、センヨーの冒険者ギルド。オレの隠れ家だ。口にしたら目の前の親父に塩撒かれそうだけど。

 サービス開始当初より、プレイヤーが増えているみたいだ。

 皆、壁にはられているクエストを調べている。


 迷彩は、NPCには影響無いのか。良かった。

 まさか、目の前の親父から『好意』を寄せられてるって事は無いよな。……無いよな?


「じゃなんでここにいるんだよ。毎日毎日。ここはお前の家じゃねーぞ」


 そういや、昨日も来たっけな。


「いや、親父だったらこの辺の冒険者に詳しいかなと思って」

「はぁ?」

「手練の冒険者に心当たりないか?」

「手練って、この辺の冒険者は強くなったら、みんなルノーチの方へ行っちまうからな。ここにしつこく顔出してんのは兄ちゃんぐらいのもんだ」

「あー、やっぱりそうか」

「まぁ、一人心当たりが無いわけじゃないが」

「お!」

「ここしばらく顔を見せてる奴なんだが」


 と、ここで親父が言葉を止める。


「もったいぶるなよ」

「これ以上知りたかったら、この依頼をどれか一つ受けるんだな」


 何だよそれ。


 親父から三枚の紙が渡された。

 そこには依頼の詳細と、難易度、報酬が書かれている。



 クエスト:【栗猪の肝採取】 #難易度 D+

 南の山岳部に、岩砕猪というモンスターが居る。

 稀に、栗のみを食べ育った個体がおり、その肝が珍味であるらしい。

 ぜひ、食べてみたい。

 報酬:40,000G


 クエスト:【灯石採掘】 #難易度 D+

 南の山岳部により、灯石という石が採取してきて欲しい。

 モンスターの増加で打ち捨てられた坑がある。

 その奥まで行けば採掘可能だ。

 報酬:35,000G


 クエスト:【東の森の調査】 #難易度 C-

 東の森に複数の人影の目撃情報がある。

 野盗などと思われるが、調査団を結成し、詳細の調査に向かう。

 アジトを突き止めた場合は、別途報酬を与える。

 報酬:60,000G



「なあ、これ、受けなきゃダメか?」

「受けんでも構わんが、その場合、紹介は無しだ。

 悪い話じゃないぜ? 普通は難易度Eからランクを上げていかなきゃ受けれない高ランク依頼だ」

「そんな依頼が何でオレに?」

「ぶっちゃけ、こなせる人材がいねーんだわ。理由はさっき言った通り」


 なるほど。高ランクの依頼ほど難易度が高く、相応にプレイヤーのレベルも必要となる。

 ただし、そんなプレイヤーは既に皆ルノーチに行っていると。

 そんな、依頼がこのギルドにある事自体ゲームデザインとして間違っている気がするが、もしかしたら掘り出し物的なクエストかもな。

 再度、三つを見比べる。

 【栗猪の肝採取】、これは、レアドロップだろうな。昨日リィリーと行った作業。ちょっと連日は避けたい。

 【灯石採掘】、灯石という、鉱石? には興味があるが、【採掘】スキルがない。

 となると、【東の森の調査】になる訳だが。


「【東の森の調査】てのは、盗賊倒せばいいのか?」

「いや、そこまでしなくていい。盗賊だってわかりゃ、衛兵団か、規模によっちゃ騎士団様なりに出張ってもらう。

 これはその事前調査だ。ここの衛兵が先導するから、同行するだけでいい。

 人が集まっても集まんなくても、四日後に出発の予定だ」


 なんか、きな臭くないか? 難易度と内容が合ってない気がする。


「治安維持名目の公的な依頼つーことで、ランクが高くなってんだよ。こっちも適当な人間送るわけに行かねーんだ」


 なるほどな。

 受けるなら、これだが。


「ちなみに、受けて調査に行かなかったらどうなる?」

「出入り禁止だな」


 それは痛いな。ここはオレの隠れ家だし。


「うーん、どうすっかな」

「兄ちゃん、たまにはオレのために働こうって、心意気はないのかい?」


 親父が呆れたように言う。


「施設を使わしてもらってるだけで、親父に対しては特に」

「お前、意外と非道いやつだな。そんな態度だと後悔するぜ?」


 何かもったいぶった言い方だな。


「お前さんの大好きな迷宮、まだ秘密があるんだぜ?」

「ほう!」

「働き次第によっては教えてやらんこともない」

「乗った!」

「お前、本当に現金な奴だな」


 親父のジト目なんかもらっても嬉しくないが。


「じゃ、詳細はコレに書いてあるから。仲間、連れて来ても構わんぞ」


 と言って渡された紙を受け取る。


<ポーン>

<クエスト【東の森の調査】を受理しました>


 ギルドの椅子に座り、メニューを開いて確認。

 開始時間が追加されている。

 追加可能人数は五人まで。つまり、最大六人パーティまで可能か。まぁ誰も誘わんけど。


 仲間探しはこのクエストの後、ということになる。


 クエストに備えて、桜からMPポーションを買い付けておこう。

 大会前に依頼したきりだ。メッセージを送っておく。

 多分、ルノーチで待ち合わせだろうから、あっちでレベル上げでもしてるか。

 散々悩んでアイテムカタログから、強力なアイテムも手に入れたことだし。


 アイテム:【戦神のお守り】

 パーティー内取得経験値増加。

 対象レベル30まで


 これだ! 二式葉、リィリーと比べてもオレのレベルは低い!

 コレを使うことで、その差を埋めるべく迅速なレベルアップが可能となるのだ!

 まぁ、対象レベルが30までと、本来想定していた闘技大会準優勝者のレベル層からしたら微妙極まりない一品だろう。

 ただ! オレにとっては十分魅力的なのだ!!


 と、自分に言い聞かせている。


 ロマン武器は、いくら考えてもロマンにしかならず、それならばと、微妙なラインと知りつつ実益を取った。

 まぁ、序盤に大活躍しそうなので、不要になっても買い手はいるだろう。対象がパーティー内という、親切設定だし。

 という、言い訳と打算の産物なのだ。


「ねえ、その服、どこで買うの?」

 不意に声を掛けられた。


 見るとそこに、NPCの少女が立っていた。

 NPC側から話しかけてくるのは、珍しいな。


「ルノーチにいる服職人だ」

「いいなー。私も欲しい!」


 NPC相手でも、商売はしてるよな。


「親にルノーチまで連れて行ってもらえ。中央通りのCreator's Homeてところだ」

「連れてってよ」


 扱いに困って親父の方を見る。


「その子は、教会で面倒見てる、プリスて子だ。今日はシスターのお使いで依頼を届けに来てくれたんだよな」

「うん!」

「そうか。えらいな。お使いが終わったら帰らないとな」

「シスターがね、お使い終わったら夕方まで遊んできていいって」


 生憎、オレは遊び相手じゃない。


「そうか。じゃ、お外で遊んできな」

「ねぇ、冒険者さん。私をルノーチに連れてってくれない?」

「はぁ?」

「その服屋さんも行きたい!

 ルノーチに行ってみたかったの!」


「大きくなってから自分で行ったら良い」

「プリス、もう大きいよ!」


 どう見ても、ちびっ子だろうが。


「まぁ、連れてくだけなら、そんなに難しくないが」


 【転移】で一瞬だから良いのだが、勝手に連れてったら誘拐にならんかね?


「本当!? やったー!!」


<ポーン>

<クエスト【少女の護衛】を受理しました>


 ありゃ、クエストだったか。


「おい、何勝手盛り上がってるんだ。そんなことシスターが許すわけ無いだろ」


 親父から忠告が入る。


「そうか。じゃ、まずシスターに会いに行かないとまずいかな」


 と、応えながらメニューを開いてクエストを確認。



 クエスト:【少女の護衛】 #難易度 C

 少女をルノーチまで無事に送り届けること。

 ※スキル【転移】使用不可

 ※依頼破棄不可

 期限:9月15日



 ん、転移不可って、マジかよ。それに難易度が高い。どういう事だ?

 目の前にプリスをじっくり観察する。

 分からん。

 ただ、とても嬉しそうなことだけは伝わった。


「プリス、シスターのところに行こうか」


 黙って行ったら誘拐になっちゃうしな。


「うん!」


「ちょっと待て。プリス、これをシスターに渡してくれ」


 と、親父がプリスに封筒を手渡す。


<ポーン>

<『プリシア』が、パーティに参加しました>


 プリスの案内で教会まで連れて行ってもらう。


「そう言えば教会で、神聖術を教えてもらえるんだっけか」

「そうだよ! プリスも使えるよ! どんな傷もすぐ直せちゃう!」


 おお!

 待望のヒーラーだ!

 ま、こんなちびっ子連れてったら二式葉に叩き斬られそうだが。


「プリスは、どうしてルノーチに行きたいんだ? 服屋さんか?」

「お墓参り」

「誰の?」

「ママと、パパ」


 しまった。教会で面倒見てるって、この子は孤児という事か。


「そうか」


 それっきり、黙ってしまったオレの横で、プリスは鼻歌を歌い始めた。

 もちろん、知らない歌。

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新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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