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31.生産職のアイドル

「どうぞ、ごゆっくり」

 と、ミックがカウンター越しに飲み物を置いた。


「こちらは、サービスです。当ギルド、自慢の、アイスコーヒーです」


 遅くね? 飲み物出すの。


「どうも」


 席を立つタイミングを逃した。


「今日は、リィリーと二人だったのか?」

 海猫さんが真面目な顔で聞いてきた。


「え、ええ」


 アレ? 怒られたりしちゃうパターン?


「アイツの戦い方、どう思った?」


 ん? 何それ? 正直に言って良いもんかな。


「えっと、オレの印象ですけど、ちょっと痛々しいなと思いました。

 盾役は必要だし、攻撃受けても回復すればいい、ていうのはわかってはいるつもりですけど」


「うん。そうか。

 初めはな、リィリーと更紗が二人で素材を集めて服を作ってたんだが、そのうち生産職のつながりで更紗がオレたちと仲良くなった。もちろん、リィリーも一緒だ。

 それから、生産職連中何人かでパーティーを組んで、リィリーと素材集めに行くことが多くなった。

 生産職てのは、基本的にあまり戦闘スキルをあげていない。パーティーの攻撃の中心はリィリーになることが多い。

 気がついたら、前線で一人体を張る、そんな戦い方になっていた。

 必然、色々なパーティーの誘いが来てレベルの上がりも早くなる。

 ますます周りは、リィリーに頼っていく。

 オレたちとしては、リィリーに常に最高の装備を提供する、と言うことで彼女に最大限の感謝をしているつもりではあるんだが……。

 しんどい戦い方を強制しちまった様な気がしててな……。

 ここにギルドを構えたことで素材の持ち込み、買い取りもある程度の目処が立ちそうし、周りの攻略ギルドの面々と協力していくような体制も取っていけそうだ。

 だが、それももうちょっと時間がかかるだろう。

 だから、それまで、たまにでいいんだが、アイツと一緒に狩りに出かけて気分転換をさせてやってくれると、ありがたい」


 うーん、ゲーム内とは言え、人をまとめていくのはあちこちに気を使う必要があるんだろう。

 大変だな。

 まぁ望んでやっているのだろうから気にしないが。


 リィリーにしても、今の戦い方を苦に思っているようには見えなかったが。


「オレは別に構いませんよ」

「そう言ってもらえるとありがたい」


 近いうちに今日の素材で作る武器を見せてもらう事になるだろうし。



「それと、二式葉と何があった?」


 下衆いニヤケ笑いを浮かべながら聞いてくる。


「別に何もありませんて」


 ごまかすようにコーヒーを口に運ぶ。


「襲われそうにでもなったか?」


 ん!

「ゲホッゲホッ」

 コーヒーが、気管に入って、むせる。どう言う仕組みだ?


「男と女がいて、その間に、秘め事が、あるのは、必然。

 それを、覗こうとするのは、野暮、ですよ。マスター」


 ミックが芝居がかった顔と、言い方で海猫さんを(たしな)める。

 この人、こんなキャラだった? しかし……。


「二式葉が女性って知ってるんですか?」


 二人に聞く。


「まあな。大抵の奴は勘違いしてるし、アイツも別に正そうとしないから俺等も言わないが」


 うん。オレも勘違いしてたしね。


「実は、二式葉から、次の闘技大会で組んで欲しいと言われまして」

「おぉ? そりゃー、随分とおっかない組み合わせだな」

「いや、でもさすがに二人だと厳しいですよ。優勝したい、て言ってるんで」

「二人?」

「オレも二式葉もソロメインでやってきたんで、他に組めそうな候補が居ないんですよ。

 海猫さんたちのギルドの常連とか、知り合いで、実力あるソロ専の人とか知りません?」


 二式葉が納得するような。


「うーん、どうだろな。ソロ専自体、そんなに居ないんだよな。知ってる限りで、四、五人てとこか。まぁ、みんなクセのある連中だが。ただ、紹介て言っても、フレンドになってる訳じゃないからな。

 もし、近々顔を出すようなら、それとなく伝えて見ようか」

「そうしていただけると助かります」

「ただなー、お前さんはともかく、二式葉が組みたがるかは分からん」

「二式葉も、常連なんですか?」

「ああ、それもあるし、オレはアイツとリアルで知り合いだったりする」


 ほう。そう言う接点が合ったのか。じゃ、二式葉のことはオレよりわかってそうだ。


「じゃ、可能性のありそうな人が居たら紹介して下さい」

「わかった。まぁ、期待しないで待っててくれ。ちなみに聞いた話だが、ソロ専だとルノーチに来るのがそもそも厳しいらしいぞ。特に後衛職」

「え、そうなんですか?」

「ああ。あの西のボス、取り巻きの数が多いだろ? 例えば、弓使いとかはどうしても手数が足りなくなるらしい」

「ほう。じゃ、センヨーでくすぶってる逸材がいるかもしれませんね!」


 仮にそんなプレイヤーがいたとして、問題はどうやって見つけるか、なのだが。



■■■■■



「と、言うわけでオレの方でメンバーを探してみようと思ってる」


 ルノーチの外れにある食堂。

 場所が中心から外れているためか、プレイヤーの数はそう多くない。


 二式葉と二人、カウンターに座り、昨日の相談の続き。


「わかった。それで良い」

「まぁ、メンバー見つかる保証はないけど、ダメだったらその時は二人で参加だな」

「……良いのか?」

「ああ、優勝は難しいかもしれないが、本戦出場ぐらいはいけるんじゃないかな」

「そうか」


 二式葉は、今日会ってから一度も目を合わせていない。


「そういや、二式葉って今、LVいくつなんだ?」

 リィリーが21だったな。

「28」

「すげ。参考までに教えてほしいんだが、いつもどこで狩りしてるんだ?」

「特に決めてない。その日の気分」

「へー。今日は?」

「南のボスを倒しに行く」

「は? ソロで?」

「ああ」

「何それ。オレも行きたい」


 すごく、興味ある。


「駄目だ」

「何でよ?」

「昨日、思い出したくもないほど嫌なことがあった。そのストレス解消。思いっきり暴れる。お前が居たら、邪魔だ!」


 キッとオレを睨む。

 そのストレスの元は、ひょっとしてオレですか。

 酔って絡んできたのはそちらだろう。自業自得だ。


「そうですか。いつかお手並み拝見させてくださいね」

「考えとく。話はもういいか?」

「おう。頑張ってな」

「あんな奴、刀の錆にもならん。大会の件は礼を言う」

「いいよ。また連絡する」

「ああ」


 と言って、二式葉は席を立った。



 残されたオレは、カウンターで一人、アイテムカタログを開く。

 まだ見ぬロマン武器を求めて。

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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