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30.ギルド・Creator's Home

 リィリーをルノーチの東門で待っていてもらい、一人で街中に入る。

 【迷彩】は外してある。

 すぐに、何人かのプレイヤーが気づき、近寄ってくる。

 足を止めて、適当にあしらっているとちょっとした人だかりになってきた。

 一度、転移でルノーチの外へ。


 【迷彩】をアクティブにして、再度ルノーチへ。


「ずいぶんと人気者ね」

「何でだろうね。今日、ログインしてからこんな感じ」

「それで、さっきの変な実験が役に立つの?」

「そう。上手く行くと良いけど」


 と、オレが消えたことでざわついている人だかりに近寄っていく。

 誰も、こちらに興味を持たない。

 思惑通り!


 急いで、リィリーの元に戻る。


「大成功! リィリーのお陰だ!」

「私は何もしてないじゃない」

「リィリーと今日一緒に出かけなければ気付かなかった! ありがとう!!」

「そう。ただ、そうやって隠れてばかりいるから余計悪目立ちするのよ。きっと」


 うーん、そうかも。


「それじゃ、次は……街の中を二人で歩けるかの……実験……になるわね……。ギルド『Creator's Home』へ行きましょう」



 リィリーの案内で、二人街中を歩く。

 何人かのプレイヤーがリィリーに声をかけてくるが、オレの方には全く興味を示さない。


 彼らの目にオレはどんな風に映ってるんだろうね。


 と、ふとした疑問。

 なんでリィリーは最初からオレを認識出来てるんだ?

 パーティーメンバーだからか?


「リィリー。一回、パーティ解除してもいいかな? 実験」

「え、良いけど。解除したらジンがわからなくなるの?」


 リィリーがメニューを操作して、パーティを解除する。


「見えてるよ?」


 そうか。パーティーは関係なしと。


「良かった」


 後は、フレンド登録してあるかどうか、かな。

 システム的に判断できる様な材料は他に思いつかない。




「さ、ここが、『Creator's Home』よ」


 と案内されたのは、武器、鎧、それから服、フラスコ、そしてコーヒーカップのイラストを散りばめ、Creator's Homeを筆記体で書かれた看板が掲げられた、店だった。

 たしか、クラウディオスもこの近くだったな。


 リィリーがドアを開け先に中に入と「おかえり」と言う声が聞こえる。


 中は、カウンターとテーブルが並んでいて、喫茶店のようになっている。

 そして、壁に、剣や盾、鎧が並んでいる。


「ちょっと、そこに座って待ってて」

 と言われた、カウンターの椅子に腰を下ろす。


「『Creator's Home』へようこそ。

 リィリーの、お友達、ですか?」


 と言って、カウンターの中に立っていた男性から声をかられる。


「ええ、まぁ」


「そうですか。仲良くしてあげて、ください。

 私は、ギルド『Creator's Home』のサブマスター、ミック、と云います」


「はじめまして。ジンといいます」


「ここは、生産職の集まったギルドです。裏には、共同の、作業場があり、一般の人でも、利用可能です。

 あちらの、壁に並んでいる物は、キルドメンバーが作った、品々です。

 もちろん、オーダーメイドも、承ってます。

 まぁ、一番の目玉は、私の、コーヒーと、目玉焼きトーストの、セットです。目玉だけにね」


 と言って小さく笑う。

 リィリーはどこ行った? ちょっと、この兄さんと二人にしないでくれ。



「おまたせ」


 と奥から、リィリーが戻ってくる。

 タオルを頭に巻いた男性と一緒だ。


「はじめまして。『Creator's Home』マスター、海猫だ」

「はじめまして。ジンです」


「さて、先に今日手に入れた素材の精算をしちゃおう。

 私の方は、【魔血晶石】が手に入ったから、残りは全部ジンの物でいいかな?」

「え、【魔血晶石】は君の分。残りは二等分にしてよ。あと、オレの分は今のところ使いみち無いから全部買い取りしてもらえると嬉しいんだけど」

 後半は、海猫さんに向けて言った。


「わかった。そうしよう。検品してくる」

 海猫さんが、すぐに返事をする。そのまま奥に戻っていった。


「取り分が全然釣り合ってないよ」

「まあまあ、オレの方も色々収穫があったからそれで十分」

「十分じゃない気がするけど。じゃ、今度何かでお返しするわ」


 と言って隣りに座る。



「さて、実験の内容を説明してくれる?」


 オレは、かいつまんで【迷彩】スキルの説明をした。


「何で私は平気なの?」

「フレンドかどうか? かなーと思ってるんだけど。

 さすがに、好意がある、悪意があるて言う感情をシステムが判断してるとは思えないし」

「……ジンは、私が君に『好意』を抱いているとでも言いたいのかしらー?」

「え? いや、そんなつもりで言ったんじゃないけど……」


「お待たせ」

 いいタイミングで海猫さんが戻ってくる。変な空気になりかけていた。


「これが、ジンさんの分、で、こっちがリィリーの分」

 オレと、リィリーの前にウインドウが浮かび、素材の買い取り金額が表示される。

 横目で見ると、リィリーの方が金額が少ない。


「リィリーの方は、依頼品の加工費と素材分抜いてるからな」


 なるほど。そういう事か。オレはOKにタッチする。


「そう言えば【魔血晶石】を何に使うか教えてくれないか?」


 リィリーに尋ねる。


「あれ、言ってなかったっけ? ここにいる海猫さんに武器を作ってもらうの。ほら、闘技大会の賞品、アイテムカタログの中に特別素材セットって言うのがあって、それも使った、オーダーメイド品」

「へー。斧?」

「それは出来上がってからのお楽しみー」


 あ、そう。


「海猫さんは鍛冶屋なんですよね? オレもそろそろ武器が欲しいなと思ってるんですけど、ちょっと相談に乗ってもらえませんか?」

「お、いいぞ。何が欲しい? 剣か?」

「そこも悩んでるんですよねー。リィリーに言わせると『変』な戦い方らしいんで、それならいっそ、ロマン武器とかもありかなーと思ったり」

「いいねぇ、ロマン武器。オレ的にはショーテルとかオススメだぜ! ただな、オーダーによってはモンスター素材だけだと無理だ。リィリーみたいにアイテムカタログとか持ってりゃ話は違ってくるが」


 持ってる。というか、まだ、じっくり見てないな。


「え、持ってるでしょ? それとも、もう何かに交換した?」

「は? 何でこいつがカタログ持ってるんだ? 今のところ闘技大会の入賞者しか持ってないはずだぞ?」

「だから持ってて当たり前じゃない」


 海猫さんが露骨に眉間に皺を寄せる。


「あの、いきなりで失礼なんですが、フレンド申請してもいいですか?」

「ん、構わないが」


 海猫さんに申請を送ると、すぐにメニューを開いて受理してくれた様だ。


「ありゃ? そうか、ジンてのは準優勝者、鎖のジンか! 何で気づかなかったんだろうな……。目の前にいるのに」


 どうやら【迷彩】が通じるかどうかは、『フレンドかどうか』で確定のようだ。


「ふーん、便利なスキルね。私も欲しいわ」

 リィリーが納得したように言った。


「どういう事だ?」

 海猫さんの眉間が皺を寄っている。


「いや、なんか、人だかりが出来てゆっくり街を歩けないんで、フレンドにだけ、オレとわかるスキルを使ってました」

「あー、昨日から有名人だもんな」

「それにしても、異常だと思いますけどね」

「まぁ、大体予想がつくが、スキルの取り方教えろって連中か、嫉妬してる連中、あとは、二式葉との事を聞きたいって連中だろ。掲示板が大騒ぎだったからな」

「え、そうなんですか?」

「おうよ。クロノスを一撃で吹き飛ばす動画をニケが公開して、その直後に二式葉とお前さんが運営に捕まってるて話になったからな」

 海猫さんは笑いながら説明してくれた。

 なるほど。そういう事か。ニケさんが動画見せるのはてっきり同じギルドのメンバーくらいだと思ってたが、甘かった!


「二式葉って闘技大会優勝者でしょう? 運営に捕まるって、乱闘でもしたの?」

「そこはオレも興味があるねー」

 海猫さんがニヤニヤしている。何か、含みがある言い方だ。


「いや、大したことじゃないよ。別に言う程でもない」

「大した事じゃなきゃ運営なんで出てこないでしょ」


 リィリーが食い下がる。

 が、言える訳が無い。


「それよりも、オレの武器。何か強くてカッコいいやつ、出来ませんか?」


 強引に話を戻す。

 リィリーが、不満そうだ。


「うーん、お前さんの戦闘スタイルに合った武器ねぇ。そもそも、武器要るのかい?」

(つば)迫り合いとか、したいじゃないですか」

「オレから見れば、あの氷の剣と盾の使いっぷりが十分ロマンだよ」

「そんなもんですかね?」

「今日ね、一緒に戦ってわかったけど、ジンの戦いっぷり、多分、自分で思ってる以上に凄いよ。だって、ゴブリンまとめて引き付けながら私の方に盾飛ばしてたじゃない」

「やってたね。うん」

「普通は、そこまで出来ないから。そもそもクールタイムがあるから、魔法の連打自体、凄い事なんだよ。

 それより、防御なんとかした方がいいかもね。最後、一撃で死にかけてたじゃない?」

「あの時は、助かりました」

「防御上げるとなると、どうしても敏捷性が犠牲になっちまうからな。あの戦闘スタイルだと、その両立は難しそうだな」


 あちらを立てればこちらが立たず、よく言ったものだ。


「もうちょっと悩んでみます。武器が欲しくなったら改めて依頼に来ます」

「おうよ。任せろ」

「さて、私はそろそろログアウトの時間ね。ジン、今日はありがとう。本当に」

「うん、またね」


 笑顔で手を振りながら、リィリーはギルドの奥に消えていった。

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