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21.運営

 翌日、ログインすると闘技場の控室だった。

 へー、この部屋、そういう機能もあるんだ。

 ずっと使えるのか後で受付に確認しよう。


 メッセージが五件。

 一つは昨日の白ゴス、リィリーからのフレンド申請。

 あの後すぐ送ってくれたようだ。

 申請を受理して、返事が遅れたことに謝意を添えてメッセージを送る。


 二つ目『闘技大会準優勝おめでとうございます』という、運営からのメッセージ。

 開くと賞金と賞品として『アイテムカタログ★4』が入っていた。


 三つ目、ニケさんから近々会えないかというメッセージ。

 一旦後回し。


 四つ目、楓から今日祝勝会について、ログインしたらメッセージ欲しいとのこと。


 五つ目、『運営から重大なご連絡があります』というメッセージ。

 開くと、いきなり仮想ウインドウが展開する。


[転送を開始してよろしいですか?

 YES / NO]


 なんだこれ?

 素直に、YESに触れる。


 あっという間に、景色が切り替わる。

 立っていたのは、会議テーブルと椅子が並んだ部屋。会議室か?

 ファンタジー調ではなく、現実のオフィスのような風景。


 壁際に三人の女の子が並んでいる。


 一人は、メノゥだな。

 後二人は知らない顔。


 そのうち一人が口を開く。

 頭の両脇で髪の毛を束ねている。


「ジン様。急なお願いにもかかわらず、お呼び出しに応じて下さいまして、ありがとうございます」


 どこかで、聞いたことがある気がする声だ。


「只今、責任者が参りますので、どうぞ掛けてお待ち下さい」


 と、椅子に手のひらを向ける。

 と同時に椅子が自動で後ろに下がる。


 なんだろうね。このかしこまった異様な雰囲気は。

 オレは椅子に腰掛けながら三人に尋ねる。


「メノゥさんは会っているけど、他の二人は初めてですよね?」


 と、その返答を待たずに机を挟んだ向かいに一人のアバターが出現する。


 スーツを着て、メガネを掛けている。


「お待たせしました。

 あ、掛けたままで結構です。

 私、C2Oの運営責任者、氷川賢介(ひかわ けんすけ)と申します」

 自己紹介と共にウインドウが開き、顔写真と名前、肩書が表示される。


「運営、責任者?」


「突然のことで驚かれているとは思いますが、まずは闘技大会準優勝おめでとうございます」


 と言いながら椅子に腰を掛ける。


「失礼かとは思いますが、座って話をさせていただきたい。

 それでですね、非常に難しい問題が発生しておりまして、昨日闘技大会でジン様が使用されたスキル。

 そちらについて現在他のプレイヤー様から多数の問い合わせをいただいております」


 と言って仮想ウインドウを表示する。

 そこには、『スキルの件』『瞬間移動スキル取得条件について』『瞬間移動てどうやって取るんですか』などといった題名のメッセージが並んでいる。

 軽くスクロールしても終りが見えない。件数を数えるのも面倒そうだ。


「本来であれば、こういった情報は攻略情報となりますので、私共運営側からそれに対する返答を差し上げることはございません。

 ですが、今回ジン様が取得使用しておりました、瞬間移動につきまして、いささか問題がございまして、こうしてご足労願った次第です」


 まどろっこしい。


「氷川さん」

「はい」

「多分、僕はあなたより年下です。なんで、その話し方やめて下さい。

 何が問題で、どうしたいのかを簡潔にお願いできますか」


 氷川さんは深々と頭を下げる。


「わかった。

 実は、君の瞬間移動、バグ技なんだ。

 で、以後禁止として、スキルを消去したい。

 君には申し訳ないが。

 で、その代わりの補償を相談できないかと、こういう訳だ」


 あ、なるほど。

 チート級の破壊力だとは思ってたけど、事実チートだったのね。


「バグっていうのは?」


「スキルの融合はそこにいる、ゲームシステム全般を監視しているAIのモイカが管理している」


 モイカと呼ばれる長髪のアバターが頭を下げる。


「実際は、融合元のスキルの特長やゲームバランス等々を考慮の上に決定される」


「で、君がやった、千里眼と転移の融合。狙い通りだと思うが、座標を指定することでそこへアバターを転移させることに成功している。

 ただし、本来であれば千里眼に座標情報を引き出す機能なんか無いんだよ。アレはシステム情報でプレイヤーに開示されるべき情報でないからね。

 それでは、なんで君だけそんな事が可能だったのか。

 その答えが右目の眼帯さ。

 聞けばそのアイテム、アレィが授けたものらしいが、装着してるのに右目の視界は覆われてないだろ?

 実はそれ、システム的にそうなるよう処理してるんだが、本来そんな事は許容してないんだ」


 とここで、氷川が三人の方に顔を向ける。


 すると、両脇で髪の毛を束ねた子が

「この姿でお会いするのは初めてですね。アレィです。この度はご迷惑をお掛けしました」

 と言って深々と頭を下げた。


 やっと、アバターできたのか。良かったね。


「その結果」

 氷川さんが話を続ける。


「君の右目の異常処理と千里眼が掛けあわさり、システム内部から情報を引き出すようになった。

 その状態で、更に転移が組み合わさり、想定外の瞬間移動の完成となったわけだ」


 へー。


「よく、調べましたね」


「昨日! 寝ないで検証したからね! ちょっと問い合わせが尋常じゃないから!

 スタッフも! 気づいてたのなら言ってくれればいいのにさ!

 『いやーだって、面白くないっすか?』ときた。面白く無いよ!! 全然!!」


 大変そうだな……。


「スマン。取り乱した。

 で、もちろん補填はするが、君の瞬間移動、無かったことにしてもらえないか?」


「補填の内容は?」


「まだ、決めかねている。と言うか何せ前例が無い。

 急に聞かれても困るかもしれないが、要望はあるかい?」


 しばし考え、とアレィを指差す。


「アイツ、殺していいですか?」

「ふぇぇぇぇ??」


 泣きそうな顔でアレィは情けない声を上げた。

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