20.第一回闘技大会 決勝
『第一回、闘技大会!
栄えある、優勝者を決める闘いが、今! 始まる!!
弱者は切り捨てる!! 両手の黒剣が舞う!! 孤高の剣士! 二式ォォォォ葉ァァァァ!!
底が知れない! 隠した右目の眼窩に何がある!? 鎖のサディストォ! ジィィィンンーーー!!』
割れんばかりの歓声が上がる。黄色い声が多い気がするのは二式葉に向けたものだろう。
メロゥのテンションも天井知らずである。
別に右目に魔眼とか邪気眼とか隠してないから。
単に君の同僚の嫌がらせだから。
中央で相対する。
無言で握手。
映像で確認したよりも小柄な体から、しかし、今までの誰よも迫力感じる。
こちらを見て、口元に笑みを浮かべる。
しかし、目は笑っていない。
互いに距離を取る。
カウントが[5]から開始される。
[3]……[2]……[1]……[0]!
と同時に、二式葉に向かって全力で間合いを詰めるように駆け出し、「纏風」。
走りながらAGI を強化する。
そして、二式葉の間合いの手前に左手で60センチ程のモノリスを出現させる。
モノリスに足を掛け、二式葉の頭上へ跳躍する。
両手に氷針を出現させて頭上からの強襲!
相手が両手の長剣でこちらの攻撃を受け止めた瞬間、「迅雷」
雷魔法を叩き込む。
そして、着地と同時に右手を振るう。
【風圧】が、相手を突き飛ばす。
間髪入れずに左手を振るい、【鎌鼬】で体勢を崩したままの二式葉へ追撃を掛ける。
その一撃を受けつつ、相手の目がこちらを見据える。
間髪入れず二発、三発と【鎌鼬】を見舞う。
しかし、寸前で交わした二式葉はそのままこちらに突きを繰り出す。
後ろに下がりつつ、彼我の間にモノリスを出現させるが、構わず長剣を付き伸ばしてくる。
モノリスの阻まれその長剣は辛うじてオレの鼻先で止まる。
一瞬、オレが安堵した瞬間、隙が生まれたらしい。
二式葉はモノリスを飛び越え、両手の長剣をオレ目掛けて打ち下ろしてくる。
両手で氷盾を出現させながらその剣戟を凌ぐ。
ニの手、三の手の追撃。
下がりながら盾を出現させて捌く、が、手数が多い。
捌き切れない。
向こうも察したか、止めとばかりの突きを繰り出してくる。
【瞬間移動】。
飛び先は二式葉の頭上。そこへ上下逆さまに姿を表わす。
両手に氷針を出現させ、重力に身を任せる。
が、二式葉がコチラを見ずに体を翻して横へ飛ぶ。
気づかれたか……。
地面に落ちる、その前に強襲する二振りの黒剣を浴び、呆気無くオレのHPは全損した。
『勝者!!二式葉ァァァァァァッ!!!』
控室に転送されたオレに、遠くからメノゥの絶叫が耳に入る。
ふぅ。負けたか……。
いや、十分か?
楓からメッセージだ。。
[準優勝おめでとうございます!!
祝勝会やりますよ!!]
続いて桜から。
[残念でした!でもすごかったです!!
ちなみに私の財布も潤いました(^^)]
祝勝会はバッチリです!!]
そうですか。そうですか。
二式葉にも賭けてたのかな?
まぁ、喜んでもらえたようで何より。
〈ポーン〉
〈これより閉会式を開催します〉
〈表彰される方は転送されますのでご注意下さい〉
とインフォ。
再度、闘技場へ転送される。
闘技場の上にはメノゥと、二式葉、ニケさんそしてもう一人、白ゴスの女の子。
白ゴスの子が、オレを凝視しているのは気のせいか?
『それでは、第一回、闘技大会の成績上位者の表彰です!!』
メノゥが右手を上げながら叫ぶ。
『第三位!!
麗しのレイピア使い! ニケェ。
そして、白百合姫! リィリー!!』
うぉぉぉぉぉと言う野太い歓声が上がる。
二人が手を上げて歓声に応える。
『第二位!
鎖の魔法剣士! ジンーー!』
歓声に若干黄色い声が混じっている気がする。
気のせいじゃないよね!?
右手を高々と掲げる。
『そして!
栄えある優勝者!!!
最強! 孤高の剣士! 二式葉ー!』
割れんばかりの大歓声が轟く。
静かに右手を上げて応えている。
そして、オレは右手を差し出し
「おめでとうございます。完敗です」
と、試合の賞賛と試合の感想を伝える。
「……ありがとう。いい試合だった」
静かな声で、確かに答えてきた。
ニケさんとリィリーも続く。
リィリーがオレに向き直り、満面の笑みで、オレの右手に両手を添える。
「はじめまして! リィリーです!
とっても! かっこよかったです!!
後でフレンド申請しても良いですか?」
なんか、気に入られてしまったみたいだ。
歓声に混じってブーイングが聞こえる。
「ええ、構いません。
リィリーさんの戦いも魅力的でしたよ」
そんな感じで第一回闘技大会は幕を下ろした。
その後オレは、桜と楓にメッセージで翌日祝勝会をする約束をし、ログアウトした。
ルノーチはどこも凄い人出だったみたいだし、今日ウロウロしていたら流石に目立ちすぎるだろう。
それに何より、疲労困憊だったのだ。




