19.第一回闘技大会 準決勝
『第一回、闘技大会!
準決勝!!!第一試合!!
ギルド、クラウディオスNo2。麗しのレイピア使い! ニィケェェェェェ
対するは!
ベールを脱いだ遠近自在の魔法剣士! 鎖のサディスト! ジィィィンンーーー!!』
また長くなってるなー。
中央でニケさんと相対、右手を差し出す。
「一回戦の彼、一応同じギルドのメンバーなの。
あんな風に傷めつけられたら、あまりいい気はしないわね」
ほう、ちょっと怒ってらっしゃる。
ふむん。仲間として見るのであれば、奴が何をしているか承知の上ということか?
「反省はしてないですよ? 当然の報いです」
「そう、残念ね。試合が終わったら何があったのか聞かせてほしいものね」
と言ってオレの右手をパンと、軽く弾いた。
おや、嫌われたか?
まあいいさ。仇討に付き合うつもりはない。
闘技場の端に立ち、試合開始を待つ。
カウント[0]と共にニケさんがこちらに向かってくる。早い。
「纏風」
こちらもAGIを向上させ迎え撃つ。これでスピートはおそらく五分。
試合終了までは、効果が継続するよう調整済みだ。
間合いを詰めたニケさんは、その勢いでオレの顔を目掛けて、細剣を突き出してくる。
上手い。攻撃と呪文の詠唱妨害両方を狙った手だろう。
しかし、上体を反らして、その一撃を避ける。
そして、無言で右手に氷針を出現させてカウンターをニケさんの体に突き立てる。
予想外の反撃に距離を取るニケさん。
切り札その二。
手の動きだけで魔法を発動させる、オレが生み出したスキルである。
【技能融合】文字通り、スキルとスキルを融合させ新たなスキルを創造するスキルである。
融合に使えるスキルは取得済みのスキルのみ。
融合に使うとそのスキルは消滅する。SPを用いることで再取得は可能。
融合後のスキル効果は、融合前のスキルの特性を元にするが、結果は事前に判明しない。
また、火と水魔法といった背反する組み合わせの融合は出来ないようだ。
例えば料理と製薬を融合させて、薬膳効果のある食事を作るようなスキルを作ろうとし、料理と製薬を融合させた場合、望み通りの結果を得られるか、それとも薬に料理の特性を付加するようなスキル、つまり薬を煮たり焼いたりすることでその効能を変化させるようなレシピを考案する、というなんとも微妙なスキルになるかは、融合してみて初めて分かるのである。
まぁ、ダメだったら使わなければ良いのだが。
SPの消費を考えるとちょっとしたギャンブルである。
で、今オレが発動したスキル。
【言霊の宿る手】。
これは、【高速詠唱】と【手信号】を融合させたものである。
予め定めた手の動きに合わせて、魔法が発動する。
効果は単純。その分使い勝手は素晴らしい。
呪文を口にするより発動までの感覚が短い上、両手で同時に発現が可能。
さらに、融合で一度消滅した【高速詠唱】も取り直しているので、矢継ぎ早に魔法攻撃を仕掛けることも出来る。
「纏風」
ニケさんが唱える。
あちゃ、使えたか。可能性は十分にあったが今までの戦いで使っていなかった。
つまり、向こうも切り札を切ってきたわけだ。
AGIを強化させたニケさんがあっという間に間合いを詰め、細剣による連続突きを放ってくる。
左手を使い、その突きの軌跡に先に氷の盾を出現させていく。
紙一重で躱しながら、右手に氷針を出現させて、なんとか反撃を繰り出す。
が、相手の細剣に弾かれるや否や氷針が砕け散る。
そう、【氷柱】は元々対象に突き刺さると同時に消え去る魔法なのだ。
いくらパラメータを操作してもその特性だけは無くせない。
つまり、純粋な剣と違って、切り結ぶということが出来ない。
が、それも逆手にとってしまえば良い。
空手になった右手を、構わずニケさんへ伸ばし、再度氷針を出現させる。
氷針はニケさんの肩口に突き刺さり、砕け散る。
その勢いのまま、ニケさんと距離を取り、細剣の間合いから逃れる。
しかし、それを許さずニケさんは追撃をかけてくる。
左手を小さく動かす。
【岩楯】。
ニケさんの進路のその先へ、10センチほどのモノリスを出現させる。
足を取られたニケさんは大きく体勢を崩し、前のめりに転びかけるが、かろうじて体勢を立て直しこちらに向き直る。
マズい。
ニケさんの口が動く。
「鎌鼬」
ニケさんから放たれた風の刃は、しかし先程までオレがいた空間を通り過ぎるだけだった。
ニケさんの背後、オレは両手に氷針を出現させ、彼女の背に突き立てた。
そして、それが止めとなった。
切り札その三。
【瞬間移動】。
【千里眼】と【転移】の融合スキルだ。
【転移】は予め定められた場所へしか移動できない。
システム的に座標が固定されているのであろうと仮説を立てて、であれば、座標を指定すればそこへ転移できるではないか?
【千里眼】越しに見える、座標と思しき数字の羅列が正にそれではないか?
その結果は、ご覧のとおり。
自分の視界の中限定ではあるが、好きなところへ飛べる。ちょっとチート級のスキルである。
『しょ、勝者!ジン!』
メノゥが宣言する。会場はどよめきに包まれていた
控室へ戻る。
メッセージは二件、
楓[あっとひとつ!あっとひっとつ!!]お気楽だ。
桜[絶対優勝して下さい!]のメッセージとスクショが付いている。
見ると、配当表とオレの名前が書かれた用紙。掛けてやがったのか。
負けても恨むなよ?
最後の弁当、おにぎりをほうばりながらもう一つの準決勝を観戦する。
対戦しているのは、白いゴシック調の洋服に身を包み、でっかい両手斧を振るっている女の子と、二刀流で黒い長剣を振り回している長髪の剣士。
確か、剣士の方はソロNo1とか言われていたはず。
と、ニケさんからもメッセージが届く。
[完敗!
ずいぶんと色々な隠し玉を用意してたのね。
是非大会後に、ゆっくり話を聞きたいわ。
あと一つ。悔しいから絶対優勝しなさい!!]
ふむん。いつものニケさんだな。
試合前のあの剣呑な空気は何だったのか。
闘技場の方は早々に決着がついたようだ。
勝ち上がったのは二刀流の剣士。
強敵だな。
手数ならニケさんより上。近くで切り結んだら勝ち目は無いか。
切り札は? もう無い。
【瞬間移動】は決勝までとっておきたかったのが本音だ。
ま、あとはやれるだけやってみよう。
何故か、脳裏にミノタウロスの顔が浮かんだ。




