18.第一回闘技大会 二回戦
『第一回、闘技大会!
二回戦!! 第一試合!
白銀の重騎士! オクター VS 鎖のサディスト! ジン!!』
歓声に若干ブーイングが混じってる気がするが気のせいか?
と言うか、勝手に読み上げを変えるな。誰がサディストだ。
中央に近づき重戦士と握手を交す。
「いやースゴイ魔法だったね。アレはオレでも耐え切れないかな」
「いえ、彼にはちょっと個人的な恨みがあったもので。あんな戦い方はもうしませんよ」
「そうか。なら多少は見せ場が作れるかな」
などと軽口を言うが、目は笑っていない。当然勝つ気でいるのだろうな。
こう言う相手には、「勝つのはオレですけどね」と、煽っておく。
カウント[0]とともに重騎士は、盾を構えこちらに突進してくる。
遅い!いや、装備を考慮すると驚くべき速さではあるのだが、本気のミノタウロスとは比較にならない。
まぁ、比較対象がLV30オーバーのボス相当な時点で可哀想な話だが。
「迅雷」
牽制の一撃。雷光が重戦士の体を突き刺す。
が、勢いは止まらない。
おいおい、多少はダメージ入ってるよな?
そして、彼の間合い。
大盾の影から、斧槍の一撃を振るってくる。
横っ飛びで交わしつつ、「火柱」。
魔法を直撃させる。
が、それも、さして効いている様子がない。
硬いなー。
バックステップで一旦距離を取る。
そこに再度盾を前に出して突進をしてくる。
相手の狙いは……。
「シールドバッシュ!」
「岩楯」
盾による体当たり。
それに対し、オレは自分の足元からモノリスを隆起させる。
武技の勢いそのままに壁に激突する重騎士。
その瞬間、オレは壁の上から跳躍し、重戦士の後ろへ降り立つ。
重戦士は、己の武技をそのまま全身で受け止めた形となり、流石に動きを止める。
「氷柱」
重戦士が体制を崩したままこちらを振り返った時、既にオレの手には氷の細剣が握られていた。
【氷柱 カスタマイズ・モード・レイピア】。勝手にそう命名した。
本来、発動後、つらら状の氷塊が標的に向かい飛来していく術であるが、術式分解によって、移動距離0となり、氷針はその場に留まる。
形状は可能な限り剣に近づけた。
ただし、刃がついていないので突くことでしかダメージは与えられない。
それを握りこみ自らの手で操る。
「疾風突き」
細剣の武技を放ち、重戦士の鎧の隙間に氷針をねじ込む。
この大会にむけて編み出した、切り札その一。
武技と魔法の融合。【アーツ・オブ・マナ】。
勝手にそう命名した。
本来の魔法の威力に、武技による攻撃力の上乗せを加えた一撃である。
……が、耐え切った?
オレの読みだとこれで終わりの筈なんだが、本線まで勝ち抜いてきただけある。タフだな。
重騎士は崩れた体制に一撃を食らってなお、斧槍を振り回し俺に攻撃を加えてきた。
「氷盾」
斧槍の軌道の先に氷の盾を出現さ、軌道を逸らす。
氷盾は一撃で光の粒子となり消滅するが、その隙に再度距離を取る。
流石に警戒して突撃はして来ないか。
持って後一撃だろう。そちらが来ないならば、こちらから行かせていただく。
「纏風」
AGIを向上させる補助魔法。
魔法のスキルレベルが、7になった段階で習得した。
ちなみに、今のところ各系統も取得している魔法は細かな特性こそ違えど、同じカテゴリに属する魔法になっている。
LV1は全て攻撃魔法、LV3は防御魔法、LV7は補助魔法と言った具合だ。
「氷柱」
再度右手に氷針を構え、重騎士に向かって飛ぶ。
「疾風突き」
が、これは大盾によって止められる。
しかし、こちらのスピードに対応できていない。
その勢いのまま体を重騎士の横までスライドさせ、横手から左手を彼の鎧の隙間に押し当て「鎌鼬」。
こちらが本命。風魔法を食らわせる。
それが止めとなった。
『勝者!ジン!』
メノゥが宣言すると、会場は割れんばかりの歓声が聞こえる。
一回戦と比べて雲泥の差だ。
うん。祭りはこれが正しいよね。
控室に戻る。
桜と楓からの激励のメッセージと、他の試合を観戦しながらお弁当その三、ハンバーガーに手をつける。
次の相手が決まった。
ニケさんだ。
その戦闘スタイルは?
AGI重視の細剣使い。
手数の多さで勝負してくる。
正直、やり辛い。
一手一手は軽いので、普通であれば多少の被弾は必要経費、と割り切る戦いも出来ようが、オレの場合その一手が確実に致命傷。
まぁ、戦いようはある。切り札もまだ残っている。
やれるさ。




