17.第一回闘技大会 一回戦
闘技大会本戦。
遅刻することなく控室で出番を待っていた。
開会式での選手紹介前に舞台へ転送されるとのこと。
メッセージを確認しながらその時を待つ。
桜と楓から激励のメッセージ。
そしてニケさんからも、お互いがんばりましょう的なメッセージが届いていた。
そう。ニケさんも本戦に駒を進めていたのだ。
そして、インフォとともに闘技場へ転送される。
げ、オレ、トップバッターか。
『西のボス、ソロ討伐の噂は本当か? 今大会のダークホース!ジンンンーーーー!!』
メノゥの声が満員の闘技場に木霊する。
メノゥが、小さく手のひらを上に上げるジャスチャーを繰り返している。
こういう事か?
オレは右手を突き上げる。
一瞬のどよめきの後、「「「「「うぉおおおおーーーー」」」」」と言う声が会場を震わせる。
その後、次々と十五人の本戦出場者が紹介される。
見知った顔は二人。
一人はニケさん。
もう一人は、忘れもしない楓から首飾りを奪っていったあの男。
紹介文はこうだ。
『ギルド、クラウディオス所属! 紅蓮の魔術師! モーリャー!!』
ニケさんのギルドメンバーなのか。
それにしても馬鹿だなぁ。紅蓮の魔術師とか、自分の手の内晒してどうすんだろうか?
ま、オレはその手の内すらリサーチ済みなのだが。
本戦で当たることを祈る。
なにせ奴は、オレの絶殺リストの堂々第一位に位置しているのだから。
全員が闘技場に転送された後、本大会のトーナメント表が発表される。
神に祈りが通じたのか、初戦の相手は願い通りのモーリャーであった!
簡単に死ねると思うなよ?
控室でオレは、楓から貰った弁当を食べながら初戦のプランを練る。
相手の出方は大体予想が付いている。
実はルノーチ周辺で経験値稼ぎをしている時に、偶然仲間と狩りに出ている奴を見つけたのだ。
そして、いずれくる復讐の時に備えて【千里眼】でその戦闘スタイルをしっかりと観察していたのだ。
その機会が、思うより早く訪れた。
オレは忘れていない。あの時、楓がオレの後ろで小さく震えていたことを。
楽に死ねると思うなよ?
『第一回、闘技大会!
一回戦!! 第一試合!
紅蓮の魔術師! モーリャー VS ダークホース! ジン!!』
メノゥの声と歓声が闘技場に響く。
中央で向き合い握手する。
「やぁ、いい勝負を期待するよ! 正々堂々戦おう!」
奴が爽やかな笑顔で声を掛けてきた。
こいつ、オレのこと忘れてるな?
じゃ、その期待を裏切るとしようか。
お互いに距離を取り、中央のカウントが[0]になる。
と同時に、奴が火魔法を放ってきた。
何が正々堂々だ。
オレを中心に奴の攻撃魔法による火柱が立ち上り、そして消えると同時に驚愕の表情が張り付く。
奇襲にも近い攻撃魔法を受けて、なお、オレは無傷で立っていた。
【水幕】。魔法に対する耐性を向上させる魔法である。
奴の攻撃魔法ぐらいではノーダメージになるよう調整済み。
得意の魔法攻撃が防がれた感想はどうだ?
まぁ、サービスはここまでだ。
「石槍」
足元から剣山を出現させて串刺しにする。
そして
「火熱」
剣山に対して熱魔法を施す。
複数の石槍に全身貫かれ、更に、その石槍全てから熱による継続ダメージを受け続け、ジワジワと何も出来ないままHPを全損させた。
『勝者! ジン!』
メノゥが宣言するが、会場は静まり返ったままだった。
やり過ぎた? いや、そんな事は無い、はずだ。
控室に戻ると、楓からメッセージが届いていた。
[ジンさん。やり過ぎです!ちょっとドン引きです。
会場では完全にヒールの雰囲気になってます。
でも、でも!
ありがとうございました!!]
そうかぁ、やっぱりやり過ぎたか。まぁ反省はしない。
が、次からはちゃんとした試合をしよう。
控室で楓の弁当その二を食べながら他の試合を観戦する。
一つ目はサンドイッチだったが、今度はホットドックだ。
オレの二回戦の相手が決まった。
重鎧に大きな盾、戦斧を装備した重戦士。
タンクタイプだろう。
相手はオーソドックスな近接剣士タイプだったが、試合時間五分の間に決着がつかず、HP残量による判定勝ちとなっている。
さあ、ここからは大味の魔法は封印だ。
術式分解で今見た対戦相手に合わせ魔法を再構成していく。




