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143.浮遊機構

 どれだけ早く飛ぶのかわからないが、置いて行かれないようにしないとな。


 しかし、リィリーは微動だにしない。


「行く、よ?」


「うん……」


 大鎌デスサイズに腰掛けたまま、動かないリィリー。


 まさか……。


「浮く……だけ?」


 コクン、と頷くリィリー。


「……移動は?」


 静かに首を横にふるリィリー。


 ……。


「降ります……」


 そうだ。


「ちょっと待って!」



 オレは、急いで町中の道具屋に駆け込みロープを購入し戻る。

 買ってきたロープを腰に括りつけ。片方をリィリーに渡す。


「馬車?」


 うん。そうね。


「流石にちょっと悪いわ」


「良いから。急ぐよ」



 リィリーを引っ張りながら雪道を進む。

 ちゃっかり、プリスがリィリーの横に座ってるが、まあ良い。


 これはこれで、使い道があるのだから。


「がんばれー」


 プリスの気の抜けた応援が聞こえる。


 急ごう。

 誰のかは定かで無いが、満月が雪の上に残る足跡を映し出していた。



「さて、ここから飛び降りようと思うんだ」


 女子二人を引きながら、雪中行軍。

 少し、余分に時間がかかったが、それもこれで挽回できる。


 切り立つ崖の上。

 目指す封印は、崖の下にある。


 本来、崖沿いの道を時間をかけて降りていかなければならないのだが……。


「落ちたら、死んじゃうと思うけど?」


 リィリーの疑問も当然。

 実際、塔から落ちて死に戻ったこともあるしな。


「その鎌使えばどうにかなるんじゃないかな?

 ちょっと、降りて」


 リィリーから鎌を受け取り、柄の両端にロープをくくりつける。

 水平にすれば、オレがぶら下がるのに丁度いい。


 これで、谷底まで一気に下りていこう!


 と言う、作戦。


「え、本気?」


「うん。本気だけど?

 さ、乗って」


「プリス、いざとなったら助けてね?」


 リィリーは覚悟を決めて鎌の上に乗る。

 その鎌から垂れ下がるロープをつかみ、谷の上に押し出す。


「え、ちょ、まだ心の準備が!」


 ロープを掴んで崖からジャンプ。

 大丈夫。

 心の準備はオレも出来てない。


 ……。


 ふわり、ふわり。


 ゆっくりと、ゆっくりと谷底に下りて行く。


「結構、ゆっくりね」


「……そうだね」


 ヤバい。

 これ、時間かかりそう。

 どうしよう。

 重りを追加すれば良いのか。


 ロープから、片手を離してメニュー操作。


 一番重いのは、と。


 聖剣を出現させ、右手に掴むと同時に勢いを増して落下を始める。


「え、きゃ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 リィリーが絶叫を上げる。

 オレは、声を出す余裕すらなかった。




 地面が、見えた。

 聖剣を放り投げる。


 雑に扱ってスイマセン。


 鎌の浮力が戻り、一瞬、体が浮き上がるような感覚。


「ひゃあぁぁぁ」


 リィリーが再び、叫び声を上げる。


 オレの足が、地面を捉えた。


 月夜のアクティビティ、終了。



 地面に刺さった聖剣を回収。


「どうだった?」


 リィリーに努めて明るく尋ねる。


「次は、明るい時にやりたいわ」


 えー。

 気に入ったの?


「……勘弁」


「えー」


 しかし、大幅に時間を短縮できた。

 再び、リィリー達を引きながら、封印のある場所まで。




 予想通り、封印の石碑は破壊されていた。


 そして、地面にはその先へ続く足跡が二組。

 おそらく、ごく最近のもの。


「誰か、呼ぶ?」


 リィリーが鎌から下りながら尋ねる。


「いや、状況の確認を優先しよう」


 何が起きているのか。


「わかった。付いて行くわ。靴はもう良い」


「ん、了解」


 覚悟を決めたリィリーに、頷きを一つ返し、オレは足跡の続く先へ走りだした。

 千里眼を飛ばし、さらに先の様子を伺いながら。




「この下だね」


 雪原に、ひっそりと佇む小さな祠。

 雪上の足跡はそこで途切れ、祠の中の地下へ続く石階段の上で濡れた靴跡に姿を変えた。



 リィリー、そしてプリス。

 二人と視線を交わし、一度頷き合って、そして、急ぎ足で階段を下っていく。


 この先に、ジャンヌがいる。



 地下二階分程、下った先に突然、開けた空間が現れた。


 バスケットコート、四面程か?


 柱などは無く、床、そして壁、天井。

 全てが石造りになっている。


 明かりなど見当たらない天井は、しかし、全面が発光し地下の空間に光を与えていた。


 その空間の中央。


 氷、いや、水晶か?

 透き通った、巨大な六角柱状のオブジェの中に、淡く青い光を放つ、正六面体のキューブ。


 そして,その前に二人の人影。


 うち、一人がこちらを振り返る。

 クロノスさんだ。


 もう一人は、長い黒髪の女性。

 初めて見る姿ではあるが、間違いなくジャンヌだ。

 水晶に向かい、何かの儀式を行っている。


 最悪の最悪、魔王の復活には至っていないか?


「来たか」


 クロノスさんが、吐き捨てるように言う。


「ただ、一足遅かったな」


 ジャンヌの姿越しに見える、水晶に亀裂が入る。

 一刻の猶予も無さそうだ。


「クソ!」

「ジン!」


 駆け出そうとした、オレをプリスが呼び止める。


 何だ?

 振り返る、オレにプリスが早口で続ける。


「私を、あそこに召喚」


 そうか!

 メニューを操作し、プリスの召喚を解除。


 視線の片隅で捉えた水晶は、全面をヒビに覆われるている。


 水晶が砕け散るのと、その直ぐ側、ジャンヌとキューブを遮る位置へプリスを再召喚したのはほぼ同時だった。


「な!邪魔だ!」


 ジャンヌの声が響く。


 オレと、リィリーが急いでそこへ向けて駆け出す。


 プリスは、青いキューブを奪うように両手で抱きかかえる。


「プリス!」


 走りながら、叫ぶ。


「返せ!」


 ジャンヌがプリスを捉えようとする。


 しかし、プリスはキューブを抱えたまま飛び上がり、こちらに飛んでくる。


 よくやった!


 渾身のドヤ顔で、親指を立てるプリス。

 そこへ、ジャンヌの放った魔法が襲う。

 しかし、オレの飛ばした溟盾(クリスタルシールド)がそれを遮る。


 異変は、その直後だった。

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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