135.修業の成果
「お帰りなさい」
「すいません。長々と留守にして」
「でも、その成果はあったって顔してるわね」
「そうですね。どうにか」
翌日、リビングで月子さんに帰宅報告。
「お尻叩いた私が言うのも、変だけど、流石にこんなに長期間留守にするとは思わなかったわ」
苦笑いを浮かべながら、月子さんは続ける。
「私とプリスちゃんはまぁ良いけど、リィリーちゃんはちゃんとケアしなさいね」
へ。
「は、はあ」
リィリー、ね。
ケアも何も……。
一歩近づくと、一歩下がる。
彼女が二人の間に明確な線を引いていて、それを超えることを頑なに拒絶する。
そんな感じなのだ。
その線が、無くなったと錯覚したのは運営ペナルティの時。
でもそれは、オレの勘違いだったようだし。
そんな会話を交わしていると、リィリーとプリスが下りて来る。
「おはようございます」
「おはよー」
「「おはよう」」
■■■■■
「完敗……」
ルノーチの闘技場。
リィリーと二人。
『修行の成果を見せなさい!』
と言うことで模擬戦。
三戦全勝。
華を持たせる、とか言う次元ではなかった。
【ジン】 #LV.100
HP:164
MP:1376
STR:70
VIT:60
AGI:383
DEX:288
INT:521
MIN:196
SP:80
スキル:
【長剣】【細剣】【短剣】【棍棒】【体術】
【二刀流】【溟剣・二刀流】
【火魔法】【雷魔法】【土魔法】【風魔法】
【溟術】
【眼光】【隠遁】【集中】【気配察知】【千里眼】【転移】【突進】【跳躍】【技能融合】【除霊】【取憑】【死霊契約】【戦禍の天秤】
【言霊の宿る手】【術式融合】【死霊使役・詠唱破棄】【変装】【偽装】【完全耐性】【幸運】
【臨死】【絆】【不屈】【完全装備】【覚醒】【討ち滅ぼす力】
称号:
【解呪者】
【魔導実践者】
【技能体得者】
【夜と死の神の神使】
【夜と死の神の祝福】
【雨の女神の祝福】
【優良健康体】
【千死者】
【全てを討ち滅ぼす者】
今のステータス。
レベルは、見事カンスト。
それに加え、【覚醒】による、スキルの性能向上。
これが大きい。
常に使用している、【気配察知】に性能向上により、余程の多段攻撃か、不覚を取られる事態でなければ攻撃を食らわない。
さらに、【溟術】の攻撃力向上している上に、【討ち滅ぼす力】によるダメージ上昇も大きい。
つまり、戦闘に於いてはおまけの48時間が大きすぎる程の成果となっているのだ。
リィリーには悪いが、【不屈】を発動させる事すら彼女には難しいだろう。
まあ、手の内を知っている、と言う事が大きいと言えるのだが。
「信じられないぐらいに、パワーアップしてる……」
「それだけ、大変だったんだよ」
まさに、苦行。
最初は何度止めようと思ったことか。
「私も行こうかな……」
「オススメしない」
「何で?」
オレは、鍛錬の間の特徴を余すところ無く説明する。
感じた苦しみを誇張しながら。
「何で一緒に連れて行ってくれなかったの?」
その話を聞いた上でリィリーの感想。
「え。
ごめん。
思いもしなかった」
「バカー! 私は貴方の侍者、配偶者なのよ!?」
そう言えば。
「そこまで考えてなかった。
……でも、結果的に120時間、二人っきりっていうのは流石に問題じゃないかな」
多分、ログイン時間とか完全に合わせないと駄目だし。
「それの、どこが問題なのよ!
半月以上放って置かれるよりそっちの方が良かった!
今から行く!」
そう言って、立ち上がるリィリー。
うへぇ。
それは、勘弁。
「や、今からは無理です。
せめて、ジャンヌを何とかしてから……」
だって、リアルが20日以上拘束されるんだもん。
「……そう、よね……
よく考えたら、強くなっても見合う敵がいないわ」
諦めて、座り直す。
「オレは、魔王を倒そうと思ってる。
それだけの力を、あそこで手に入れられたと思う」
納得しかけた、リィリーがジト目で睨む。
「そういう、事を、事前に、ちゃんと、話して、よ!!」
オレの二の腕をガシガシ叩きながら抗議する。
止めて。
マジで、死んじゃうから。
HPが、危険水域!




