133.聖杯
ログインし、改めてメッセージを確認。
14通。
多いな……。
運営からイベントと新マップのお知らせ。
これは、良いや。
他に、楓から[ミーちゃんがクラスチェンジしました……]と言うメッセージ。
しかし、何故か今回は画像が付いてない。
会いに来いと言うことか?
それと、ジャンヌから……。
[ねぇ、何してんの?]
[無視しないでよ]
[通信出てよ]
[何で無視すんの?]
[怒ってる?]
[イベント頑張ってるじゃん]
[ねえ、通信出てよ]
[何でそんなにイベント頑張ってるの?]
[無視しないでよ!]
[おーい]
[魔王開放しちゃうぞー]
何、この人。
怖い。
まじ怖い。
でも、放っておいたら続くんだろうな。これ。
仕方ない。
ジャンヌに通信か。
イベントって何の事だ?
『うわ』
何だ、その反応。
「えっと、何か御用でしたでしょうか?」
『散々無視しておいて、何それ』
「いえ、暫くメッセージも通信も遮断されてまして、今まとめて確認した所です」
『え、そうだったの? 何? 牢屋か何かに入ってた?』
「似たような感じです」
『何でそんな畏まってるの?』
怖いんだよ。お前が。
不気味なんだよ。
「あの、御用は何だったでしょうか?」
『何だっけ? 忘れちゃった』
何なの? コイツ。
マジで。
「用が無ければ切りますが、そう言えば魔王の方は諦めてませんか? まだ」
『諦めてないよ! 着々と準備を進めてるよ!』
「……次は何をするつもりですか?」
『聖杯を使って魔王の封印そのものを無効化しちゃうよ!』
はぁ??
「え、ちょ、何それ?」
『え? 何って次の計画だけど? 自分が聞いたんじゃん!』
「聖杯って何よ!! 聖剣は?」
『だって、聖剣無いんだもん。他の手を考えないと。
あれ? 言ってなかったけ?』
聞いてねーよ。
そもそも、お前が計画ペラペラ喋ると思ってないからな。
こっちは。
『そっか、言ってなかったか。だから呑気にイベント頑張ってたのか』
「いや、そういう訳では無いんですけどね」
『本番はこれからだからね! 楽しみにしておいてね!!』
そこで、通信が切れた。
スランドは、インしてないか……。
ひとまずメッセージ。
[ジャンヌから情報あり。狙いは聖杯とのこと]
送信。
はぁ、聖剣の為の72時間は何だったのだろうか……。
頭を抱えながら、階段を降りていく。
リビングには誰も居ない。
いや、物音が聞こえる。
キッチンか。
そちらに顔を出す。
キッチンに立つのは月子さんかと思ったら違った。
エプロン姿のリィリーだった。
なに、このシチェーション。
最高なんだけど。
「おはよう」
「あら、お帰り」
「ただいま」
半月以上前と、全く変わらない反応。
「朝ごはん、無いわよ?」
「うん。それは良い」
連絡も何もしてなかったから。
「月子さんは?」
「今日はお休み。お茶くらいは淹れるから座って待ってて。
プリスももう直ぐ起きてくると思う」
「わかった」
リビングに座って待つこと暫し。
「とーう!」
叫び声を上げながらプリスが落ちて来た。
「おはよう。久しぶり」
相変わらず元気だな。
「お、放蕩息子。帰ってきたのか」
く、生意気な。
しかし、反論できない。
誰だ、こんな言葉教えたのは!
「なープリス。聖杯って何だ?」
「聖杯? 王家に伝わる宝の事?」
「王家か。じゃ、キョウにあるのか」
「うん。アレはこの世界で一番力を持つ道具。だから王様しか使っちゃいけないの」
「へー」
「常識!」
く。
生意気に拍車が掛かってないか?
「はい、お待たせ」
リィリーが朝食を運んできた。
パンと、ベーコンと目玉焼き。
そしてサラダ。
ちゃんと、三人分。
あれ?
無いって言ってたのに。
いや、目玉焼きが半分になってる。
リィリーが自分の分を分けてくれてるのか。
何なの、この子。
「何笑ってるの?」
嬉しさの余り、頬が緩んでたか。
「いえ。有り難くいただきます」
「いただきまーす!」
「はい。どうぞ」
リィリーが分けてくれた朝食をありがたくいただく。
「で、高みには登れたの? イベントはトップみたいだけど」
「ん、とりあえずカンストした」
「あ、そう。でも、初期組は大体カンストしてるわよ?」
う。
痛いとこを。
「あと、強そうなスキルも幾つか」
「ふーん。ま、二十日間も留守にしてたんだしね」
リィリーがジト目で言う。
「ジン、十倍返し、忘れてる」
プリスも不満そうに言う。
「十倍返し?」
何だっけ?それ。
「ほら、ジンはこういう人なのよ。プリス」
「非道い! ケーキ食べたのに」
ケーキ?
リィリーに救いを求める様に視線を投げる。
「バレンタイン」
ぼそっとリィリーが答えを教えてくれた。
「ああ!」
そうだった!
「忘れて無いよ!」
とは言った物の、何も準備してない。
そもそも、お返しを送る日はもう十日以上前だ。
どうしよう……。
「今日一日スイーツ巡りで良いわよ。ジンの奢りで」
「やった!」
「はい。何でも好きな物をお食べ下さい」
何でもご馳走します。
後で、海猫さんに素材を買い取ってもらおう。
二十日分のドロップアイテム。
「そう言えば、イベントって?」
「え? ランキングイベント? 今、トップみたいよ」
「何それ」
「え。お知らせ来てたでしょ?」
あ。
さっき飛ばした奴か。
そうか。
やたらと、お団子なるアイテムがドロップすると思ったらこれか。
しかも、トップなのか。
しかし、ラストスパートをかけるつもりは無いんだよな。
イベント期間は後二日残ってるんだが、ここからどこまで落ちるだろうか。
朝食後、ルノーチ、そして、キョウのスイーツと言うスイーツを彼女たちは梯子し食べ歩いた。




