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13.フィールドボス戦

 待ち合わせはセンヨーの西門。

 時間通りのはずだが、二人は既に到着していた。


「やっほー」

 楓が相変わらずの元気っ子ぶりで大きく手を振る。


「さて、出発前にそれぞれの戦闘スタイルを確認しようか。

 オレは、訳あって一撃食らうと死に戻る紙防御なので、基本魔法で中距離から攻撃」

「ふぇー、さすがジンさん。斜め上を行くピーキーさですね」

「よく、それでボス攻略出来ましたね」

 と、楓と桜。

 まぁ、その辺は色々と工夫してるからな。


「で、二人は?」

「私は近接アタッカーです!

 素手でボッコボコでっす!!」

 へー、意外。

「あと、ミーちゃんが、中距離からの攻撃役です。

 たまに体当たりとか、噛みつきとかもします」

「キュ!」

 得意気に尻尾をパタパタとふるミーちゃん。

 というか、召喚士って後衛でサポート役のイメージがあったんだけどな。


「私は、回復専門です。

 この後お見せしますが、召喚獣が主に攻撃担当してます」

 と、桜。

 まぁ普通そうだよな。


 ところで、楓が豪華なネックレスをつけているのだが、オレの記憶に間違いがなければ確か。


「そうです。

 この前のクエストで取り返した首飾りです!

 今日冒険者ギルドで、ルノーチまでの送り届けるというクエストを受注してきました!

 せっかくなんで装備してみました!

 似合いますか?」


 馬子にも衣装てやつかな。

 豚に真珠とは言うまい。


「それでは、出発しましょう」

 剣呑なやり取りが始まる雰囲気を察したのか知らないが、桜が力強く言った。


来たれ、契約獣(サモン・モンスター)

 桜の召喚術。

 伝説のモンスターのお目見えである。


「おぉ……」

 嘆息が漏れる。

 圧巻である。

 大きさこそ、馬より二回り位大きい程度ではあるのだが、青緑色の鱗に覆われた全身。二本の角が生えた頭。蝙蝠の如き翼。

 まさにドラゴンである。

 召喚されるとすぐに桜に顔をすり寄せる。

「私の召喚獣、【ドラゴンベビー】のプラムです」

 ベビーということは、まだ大きくなるんんだろうな。


 背中にはいつの間にかミーちゃんが乗っている。


「攻撃方法は?」

「噛みつきと尻尾での叩きつけです。

 ただ、ちょっと小回りが効かないので、この辺の敵はちょっと苦戦してます」

 それは、そうだろう。

 一番初めの戦闘フィールドだ。小型の敵が多い。


「なるほど。でもまぁ、十分そうに見えるけど」

 デカイは正義だろう。


「じゃ、パーティーを組もう」

 メニューを開いて二人にパーティ承認を送る。

 承認と同時に二人のLV、HP、MPが表示されるがなんと、二人のレベルは12。オレより高いじゃないですか。




 三十分程かけて、ボス出現エリアの少し手前まで来た。


 ここまでの二人の戦いは?

 全く危なげなかった。


 レベル差もあるのだろうが、順調に敵を葬っていた。


 前衛は楓とプラム。

 プラムは桜の言うとおり、小さな敵に若干苦戦する様子を見せつつも、尻尾を振り回して敵のHPを散らしていく。


 圧巻は楓である。

 素早く敵に突っ込み二手三手と攻撃を繋げていく。俗に言う流れるような攻撃というやつだ。

 あれひょっとしたらリアルスキルなんじゃないか?

 この先気軽にからかうのやめよう。


 ミーちゃんは中距離から火の玉を出して攻撃。

 ほぼ出番が無いが、桜が回復魔法をたまに飛ばしている。


 オレ? 最初は中距離から魔法攻撃しようかと思っていたけども、楓の戦い方を見て、楓に【火熱(ヒートボディ)】を掛けたり、死角からの攻撃を、【氷盾(アイスシールド)】を防いだりとサポート役に回っている。




「いやー、御見逸れしました」

 実際、オレがいなくてもボス攻略できそうである。


 今は、ボス戦前の小休止。


 楓と桜がお弁当を作ってきたというので、それをみんなで食べている。

 天気が良いのですっかりピクニック気分だ。


 遠くで他のパーティーが戦っているのが見える。


「それは、私の料理の腕前に対してですか?」

 楓がドヤ顔で聞き返す。


「うん。

 このサンドイッチも美味いのだけれど、楓の戦い方にも驚かされた」


「ん、聞きました? 桜ちゃん。ジンさんが人を褒めましたよ!?」

 オレを何だと思っている? 褒めるところはちゃんと褒めるさ。


「そういや、桜の回復魔法はどうやって取得したんだ?」


 桜が使っている神聖魔法。初期の取得可能スキルには無いのだ。

 オレ自身が回復を必要としない戦闘スタイルなので、取得するかと問われると微妙なのだが、ここ先必要になるかもしれない。

 アンデット特効の魔法とかありそうだし。


「あ、これは教会で祝福を授かると使えるようになるんです」


 なるほど。盲点だった。


「役割分担がちゃんと出来ていて、二人はいいコンビだな」

「お、どうしたんですか? 急に。

 今ならまだ、パーティーメンバーに余裕ありますよ?

 美少女二人と美味しい料理もついてきますよ。

 更に、ミーちゃんをもふもふする権利もついてきます!」


 うーん、それはそれで楽しそうなのだが、この少女二人に挟まれていると掲示板が炎上しそうで気後れするなぁ。


「まぁ、心惹かれないわけでも無いが、今は遠慮しておくよ。

 さて、そろそろボス攻略と行こうか」

「「はい!」」




 オレにとっては二度目となる、西フィールドのボス、シルバーウルフ戦。


 布陣と戦い方は今まで通り。

 楓とプラムが前衛でボスの相手をし、オレ含め他の面々はサポートに回る。



 楓とプラムでシルバーウルフを挟みこむような布陣で攻撃を加え、シルバーウルフのHPバーの一つ目を全損させた瞬間、シルバーウルフが遠吠えを上げる。

 それに呼応するように、グレイウルフという雑魚モンスターが出現する。

 その数、十二匹。

 うち、半数がプラムに向かう。

 楓をシルバーウルフに専念させたい。オレが前に出て、残り半数を引き付ける。

 六匹が次々と飛びかかってくるが、【気配察知】で躱しながら、装備した短剣の一撃を食らわせていく。

 相手が距離をとった瞬間に攻撃魔法を叩き込む。


 プラムは何度か狼の噛み付きを喰らってはいるものの、桜の回復があるので大丈夫だろう。



 十二匹全部を仕留め終わると同時に、楓がボスのHPバー二本目を消滅させた。


 そしてグレイウルフの群れが再び出現する。


 その数、三十六匹。


 うち、プラムとオレに十二匹ずつ向かってくる。

 残り十二匹は?


 マズい。

 ボスと対峙している楓に、背後から襲いかかろうとしている。


石槍(ストーンスピア)

 オレに向かって来た十二匹は強化調整済みの土魔法で、剣山を出現させてまとめて串刺しにする。

 針山に刺さり、動きは止められたが、HPは残っている。

 そこにすかさずミーちゃんが火炎攻撃をお見舞いし一匹ずつ葬っていく。


 その様子を横目で見ながら楓の方へ駆け出す。

岩楯(ストーンシールド)

 楓に向かっていた十二匹と楓の間にモノリスを出現させる。


 止まりきれず、狼達は石壁に激突していく。

 そして、そこに火柱を出現させる。


 これでオレのMPは枯渇した。

 が、仕留め損ねたか!?

 一匹が石壁の影から楓に飛びかかかる。


 身を投げ出して楓の背中と狼との間に体を滑り込ませ、狼の体当たりに合わせて短剣を突き立てようと動く。

 そして、狼の体当たりを受けた瞬間に視界が暗転した。



 次の瞬間、オレはセンヨーの中央広場に立っていた。

 迷宮以外で初の死に戻り。


 メニューを開く。

 楓と桜はまだ戦闘中のようだ。

 最後の短剣は届いたのだろうか。


 オレのステータスは全て九割減となっている。

 ヘルプによると、時間経過に合わせてステータスは回復するが、全開するまでに二時間かかるらしい。

 しばらく戦闘は無理か。


 【転移】で、ルノーチに飛ぶ。


 西の平原から続く門の外で、二人が来るのを待つことにした。




 どれくらい待っただろうか?

 遠くに青緑の巨体が目に入る。

 おそらくプラムだな。

 そして、その下に二人の人影を認める。

 メニューから死に戻りしていないのは確認出来ていたが、なんとか討伐出来たみたいだ。


 向こうもこちらに気づいた様で、楓とミーちゃんが駈け出してくる。


 軽く手を振り、答えるが、楓は速度を落とさず全力でオレに抱きついてきた。


「うぉ」


 飛びかかられた勢いを逃すように体を反転させながら、楓を受け止める。


 楓はオレの胸に顔を埋め、


「ジンさん! ジンさんが、うぅ、死んじゃった。ジンさんが」


 泣いてんのか!?

 落ち着け。ここにいるから。死んでないから。

 死んだけども。


 楓の頭を撫でて、落ち着かせる。


「お疲れ。なんとか討伐出来たみたいだな」


 やってきた桜に声を掛ける。


「はい。ジンさんのおかげです。でも……」


「ん、まぁ気にするな。

 オレの方はステータス異常ぐらいで損害は無い。

 二人がここまでこれたんだからそれで充分だよ。

 さて、そろそろ落ち着いたなら離れてくれないかな」


「ありがとう、ございました」


 桜が顔を上げ、少し上気させながら言った。


 オレは、二人と二匹に向き直り、改めて言う。


「ボス攻略、おめでとう。

 ようこそ、戦都ルノーチへ」

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