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123.状況共有会

 キョウの町が開放され二日が経った。


 昨日は、各々事後処理があるとのことで、一日置いて今日改めての状況共有。

 議題の中心はもちろん、ジャンヌ。


 月子さんの家に集ったのは、スランド、鹿島さん、二式葉。

 そして、月子さんにプリス。


 リビングで、月子さんの焼いたシフォンケーキを食べながらの会議。


 二式葉は、膝の上にプリスを座らせている。


「では、時系列順に振り返ろうか」


 進行役は鹿島さん。


「まず、シシメタン伯爵の配下として王城に現れる。

 これは、映像越しにスランドとジン君も確認している」


 オレとスランドが、ケーキを食べながら頷く。


「シシメタン伯爵を通して、聖剣の貸与を将軍に要求。

 しかし、将軍側はこれを拒否」


「無いものは貸せないからな」


「結局、独力で結界を解くと約束しシシメタン伯爵以下は王城から退去。

 その後、待ち伏せしていたジン君に接触」


 頷くオレ。


「接触中に、外部からの干渉によりキョウの結界が崩壊。

 そして、町中にモンスター出現。

 スランドはルノーチへ」

 キョウのモンスター掃討が進む中、ルノーチにジン君の姿をしたジャンヌが出現。

 王座の間へ侵入するも聖剣の奪取は至らず。

 と、まぁこんな感じかな」


「シシメタン伯爵の元には戻ってないのか?」


「戻ってない様だ。それどころか、伯爵が今回の黒幕はジャンヌだと切り捨てそうな雰囲気さえある」


 ふむ。


「とは言え、既に伯爵に対する王の心象はよろしく無い。

 ま、これは余談だが」


「場合によっては、NPC間で戦闘に成りうるか?」


「そこは、将軍側の態度次第だろうね」


「織り込んでおいた方が良いと思う」


 二式葉と鹿島さんのやり取りを、スランドが締め括る。


 鹿島さんは、王宮の剣術指南役。

 スランドは、将軍家直属の諜報部。

 二式葉も、将軍家直属の私設警備兵。


 それぞれ、ゲーム内での立場があるのだろう。

 ゲーム内のパワーバランス如何によって、今後の行動に影響がある。

 そういう事だろう。


 面倒だな。


「で、そのジャンヌに接触したのが、ジンと言う訳だ」


 一同の視線がオレに集まる。


「そこは詳しく聞かせて欲しいね。UMA級の人物だ。

 会談の時点で、僕も接触を試みたんだけどね……」


 えっと……。

 記憶を探る。

 つい先日の事なのに、その後の出来事の方がインパクト大きかったからな。


「向こうは、オレの名前を知っていて、通りに立つオレに自分から近づいてきた」


「向こうからしたら、邪魔者リストの何番目か、ひょっとしたら一番上かもしれないからな」


 スランドが洒落にならないことを言う。


「で、名前を尋ねたら、ジャンヌ、と答えた。

 立ち話も何だからと言うことで、中央通りの茶屋へ移動」


「逆ナンだな」


 いやいや、そう言う茶化し方止めて。マジで。

 二式葉を睨む。


「で、何者かを尋ねたんだ。

 そしたら、『他人よりゲーム知識があるプレイヤー』そう答えた。

 向こうは、オレが運営の回し者じゃないかと疑っていた節があった。

 そこは、はっきり否定したけど」


「それはな、私も疑ってるぞ?」


 二式葉の言葉にスランドが頷く。

 何でだよ。


「ま、そこは確かめようが無いからな」


 待て。


「お前ら、そういうこと言う訳?」


「冗談だ」


 いや、冗談には聞こえなかった。全然。

 二人を睨んでから、話を続ける。


「で、ジャンヌの目的を聞いた訳」


「魔王の復活か?」


 二式葉が、若干目を輝かせながら問う。

 膝の上でプリスが露骨に嫌な顔をする。


「そうなんだけど、それが最終目的でなく、魔王を蘇らせて、そしてそれを打ち破る。

 そんな事がしたいらしい」


「面白そうじゃないか」


「……面白くない」


 素直な感想を述べた二式葉に、プリスが反論する。


「ん、そうだな。不謹慎だった。ゴメン」


「そ、魔王の復活と共に町という町を破壊し尽くすって言ってたからな。

 愉快な展開にはならないと思う」


「ふむ。彼女の目的がはっきりした訳ですね。

 ま、信じるならば、ですが。

 印象としては、どうでした?

 本心を言っているように感じましたか?」


 暫し、考える。

 と言うか、記憶を辿る。


「……嘘は言っていなかったと思います」


 自分の目指す、最悪な世界を楽しそうに語っていた。

 あの姿は、飾りのない本心だと思う。


「ならば、阻止しないと……。

 それで、後は?」


 えーっと……。


「仲間に誘われた。断ったけど」


「潜り込んでみれば良かったのに」


 その発想は無かった。

 流石、スランド。忍びの者。


「勘弁。

 で、姿を変化させながら、しつこく誘ってきた。

 最初は、小さい女の子。

 次は、リィリー」


『私!?』


 接続していたボイスチャット越しにリィリーが驚きの声を上げる。


『何それ?聞いてないんだけど!』


 言ってないからね。


「五月蝿い。加わりたいなら顔を出せ!」


 二式葉がオレを睨みながら言い放つ。


『絶対にイヤ!!』


 昨日からリィリーは自分の部屋に篭もりっきりだ。

 理由は明白。

 運営ペナルティによる、『色♡ボケ』鉢巻。

 一晩置いて冷静になったのか、10時間経過するまで出てこないそうだ。

 残り数時間のはずだけど。


 因みに、オレの額も同様。

 なので、昨日から月子さんの家からは出ていない。


 今日は、仕方ない。

 知ってるメンバーだけ、そう割り切った。


「その、ジャンヌの化けたリィリーはお前から見てどうだった?」


 スランドが真剣な目で尋ねる。


「……そっくりだった。

 急に現れたら、全く見分けが付かないと思う」


「そうか……厄介だな……」


「対応策が必要そうだね」


 うん。確実に。


「それは、追々考えよう、で?」


「その辺りで、結界が崩れた。

 で、逃げられた」


「捕まえようとはしなかったのか?」


 二式葉の疑問は最もだろう。


「……したんだけどね」


『抱き合ってたもんね!』


「待て! 抱き合ってはない! 被害者だ」


 全員が、何かを言いたそうな目でオレを見ている。


「リィリーちゃんの姿をした子に迫られたら仕方ないわよね?」


 月子さん、それ、フォローになってません! 全然。


『私の姿してなかったー』


「と言うことが起こりうるので、彼女を見抜く手段は早々に見つけないと不味そうですね」


 鹿島さんが、苦笑しながら言った。

 その視線の先は、オレの額ですね?


「その後かしら? モンスターが来るって言ったのは」


 あー。

 それも言わなきゃいけないか。


「そうですね」


「何故分かった?」


 二式葉の鋭い指摘。


「……警告があった。ジャンヌから」


「ん? 逃げたんだろう?」


「……通信で」


「通信って……まさか……」


「フレンド、登録した……」


『「「「はぁ!?」」」』


 全員が一様に驚きの声を上げる。

 そして、上からバタンバタンと物音が聞こえる。


「ちょっと!! どういう事!?」


 吹き抜けの上から、怒気を孕んだリィリーの声が落ちてくる。

 天の岩戸が開いたようだ。




 仮想ウインドウを開いて、フレンドリストのジャンヌを表示する。


「信じられない……」


 鹿島さんが、絶句する。


「ホント、信じられない! 今すぐ消して!!」


 下りて来たリィリーが叫ぶ。

 鉢巻は、まだ外れてないけどな。


「待て。感情的になるな。

 これは、敵に繋がる唯一の線だ」


 そう、スランドが、リィリーに言うが……。


「もう、何なの? 普通、フレンド登録とかする?」


 いや、だって……。

 何かあると思うじゃん?

 いや、やましい意味じゃなくて。


「ちょっと、通信してみろ」


 二式葉さん?

 この状況で、よくそんな事が言えますね!?


 しかし、全員がオレの顔を見ている。

 拒否権は、無さそうだ。


 仕方ない。

 メニューを操作し、全員に音声が聞こえるようにして通信を繋げる。


 しかし……。


「繋がらないな」


 ジャンヌは通信に出なかった。


 これ以上、波乱が起きなくてよかった。

 オレは、少しホッとした。


「ふむ。しかし、敵に繋がる糸であることは間違いない。

 出来れは、このままつなげておいて欲しいのだけれど」


 鹿島さんが、リィリーの方を見ながらそう言った。


「別に、私のフレンドじゃないからジンが好きにすれば良いですよ」


 ケーキを食べながら、リィリーはそう言った。

 言葉とは裏腹にその顔は不満でいっぱいだったが。


「話を戻そう。

 キョウへの襲撃があった。

 で、その間、お前らは何をしていたのだ?」


 二式葉が、オレをリィリーを見ながら問う。

 それ、聞く必要ある?


「それを聞くのは野暮じゃない?」


 月子さんが楽しそうに言う。


「気の迷い!」


 カチャン!とティーカップを机に置きながらリィリーが言い切った。


 あ、あげた組紐で髪を結んでる。


「その後、ルノーチにジンになりすましたジャンヌが現れた訳か」


「見分けは?」


「付かなかった」


「いや、オレが城の中にいたらおかしいだろ」


「今考えるとそうなんだがな……。

 で、まんまと私の目を欺いて、ジャンヌは聖剣がある王座の間に辿り着いた訳だ。

 ジンから通信があり、慌てて後を追った時には既に聖剣の前に立っていたよ」


 スランドは、小さく溜息を付く。


「だが、その聖剣を手にすること無く、奴は立ち去った。

 『そうか。これは準備が必要か』そのような事を、呟いていた」


「聖剣を目の前にしながら諦めたのか」


「聖剣は、選ばれた人にしか動かせないの」


 そう言ったのは、プリスだった。


「そうなのか?」


 二式葉が、膝の上のプリスに尋ねる。


「そう」


「選ばれた人って? 将軍家の人間?」


 その問にプリスは首を横に振って答える。


「違う。聖剣が選んだ人だけ。今まで動かせたのはエアス様だけ」


 ふむ。

 ジャンヌが持ち去らなかった理由がこれか。


「魔王の復活は、ひとまず阻止された。

 しかし、ジャンヌもまだ、諦めたわけでは無さそうですね」


 鹿島さんが、そう締めくくった。

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