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122.戦いの最中

 もうやだ。

 ケツは痛いし、頭には変な鉢巻巻かれてるし。


 でもね、一瞬ちょっと前の天国気分と、同じ鉢巻巻いているリィリーを見ると全てが許せる。不思議。

 と、思ってるのは実はオレだけだったりしないだろうか。


 リィリーは、たった今三人で撮ったスクショを仮想ウインドウに表示していた。


「ねぇねぇ、見て見て。バカみたい!」


 そう言って嬉しそうに笑う。

 確かに、バカみたいな絵面ではあるのだが、何でそんなに楽しそうなんだろう。


「暫くこのままだからね」


 ゲーム内で10時間は。


「うわー、誰にも会えない!!」


 そう楽しそうに答える。


「月子さんの家に引きこもる?」


 そう、提案してみた。

 人前に出れないのは、オレも同じだ。


 しかし、オレの視界の端に通信が入った事を知らせるアイコンが踊る。

 それも、緊急を示す、赤。

 相手は、二式葉。


「二式葉から緊急だ」


「私にも繋いで」


 急に真顔になったリィリーに頷きながら、メニューを操作。


「ジンだ。どうした?」


 二式葉の通信に返事をしながら、リィリーにも接続を飛ばす。


『ヒーラーが足りない。そちらの戦況如何では少し回して欲しい。どうだ?』


 苦戦しているのか!?

 しかし……。


「スマン、訳あって前線から離れている」


『何!?』


『リィリーです。ひとまず、月子さんにも繋ぐわ。攻撃の手は足りる?』


 そう言いながら、メニューを操作するリィリー。


『どちらか、来れるか? NPCをフォローしながらの戦いになる』


『OK! 私が行く』


 え、行くの?

 変な鉢巻巻いてるんだよ? 忘れてない?


『はい。こちら月子』


 月子さんにも繋がる。


「ジンです。二式葉達へ回復役を回す余裕ありますか?」


『大丈夫じゃないかしら。私とプリスちゃんで良ければ向かうわ』


『助かる!』


『その代わり、ジン君こっち来れるかな? ちょっとサポート必要そう』


 先程、レベルが低そうなプレイヤーが何人かいたように見えたが、そのサポートだろう。


「……向かいます」


 リィリーが戦線に復帰する以上、オレも戻らねばなるまい。


 通信を切る。


「早速人前だ……」


「鎖のジンさんが今更格好を気にしてもしょうが無いでしょ?

 さ、行くわよ!」


 そうは言うけどさ……。



■■■■■



 キョウの町、南西。

 町中での戦闘の様子を千里眼で上空から把握する。

 出現しているモンスターは、鬼火、小鬼、天狗……。


 百鬼夜行か!


 戦闘を継続しているのは雪椿達のギルド、こちらは問題ない。

 雪椿、ネフティスを中心に、他の面々も相応にレベルが高そうだ。


 桜楓組、流石にプラムは町中では無理か。しかし、楓とミーちゃんを攻め手として桜がちゃんとフォローに回っている。


 そして、冒険の導き手のパーティー。

 やはり、レベルが低いか?

 防戦一方となっているプレイヤーがちらほら。


 おそらく、そこまで敵のレベルは高くない。

 ただ、数が、多い。

 そして、町中での戦闘。制限も多い。


 月子さんとプリスは既に二式葉のサポートへ向かったはずだ。


 戦闘が行われていない路地を選んで通りつつ、秋丸の元へ。


「遅くなった! フォローする、溟盾(クリスタルシールド)


 秋丸に声を掛けつつ、冒険の導き手の面々の周囲に、まとめて盾を出現させる。


「来たか。助かる」


 最前線で盾を構えていた秋丸が、こちらを振り返る。


「……オイ、人が戦ってる時に何やってたんだよ」


 一瞬でジト目になる。


「別に。と言うか、一瞬で理解できるお前もどうなのよ?」


 経験者か?


「うっせ。アレ? お前二刀流じゃ……」


 今、溟剣(クリスタルブレード)を出現させているのは右手だけ。

 左手は、腰、いや、臀部を抑えている。


 まだ、イタイです……。


「……タイキック、か?」


「ああ……」


 秋丸は全てを悟ったようだ。

 急に温かい目になる。


「イタイよな……」


「ああ、イタイ……」


「オイ、そこのバカ二人! 語り合うのは戦闘終わってからにしろ!」


 ヨーコから、激が飛ぶ。


 はいはい。


「オレ、あんまり動かないからよろしく。

 その分、サポートはするんで」


 そう言って、一歩下がりつつ、敵集団に向かって広範囲に溟風(ダークブリザード)を発動させる。


 視界は奪った。

 皆、襲いかかれ!




「ジンさん、それって……」


 楓がオレの顔、と言うか鉢巻を見て絶句する。

 こちらの敵はあらかた片付いた。


「何でもない。気にするな」


「気にしますよ! 何やってるんですか!?」


「人が戦っている間にイチャラブとか、死ねばいいのに」


 桜さん、聞こえてます。


 さて、向こうはどうか?


 月子さんに通信。


「ジンです。こっちはあらかた片付きました。そっちの様子は?」


『こっちも大体終わりました。今、リィリーちゃんが二式葉に絡まれてるわ』


 月子さんが楽しそうに言った。


「了解です。では切ります」


『はーい』


「あっちも片付いたみたいだ」


 周りにそう伝える。


 そう言えば、スランドは大丈夫か?


『どうした?』


「そっちの様子は?」


『変化無し』


「ん、そうか。なら良い。こっちは大体駆逐した」


『は? ……お前、今何処に居るんだ?』


「キョウだけど?」


『キョウ? 何時移動した?』


 は?


「30分ぐらい前だけど?」


『じゃ、今さっきここに来たのはお前じゃないのか?』


 オレが?

 行ってない。ずっとここに居るけど?


 ……。


「それ、ジャンヌじゃないか?」


『ジャンヌ?』


「フジコだ!」


『ッ!? 一度切る!!』


 出し抜かれた!

 ルノーチへ、そう思ってしかし、城内に入る方法が無いことに思い至る。


 ここは、スランドに任せるしか無い。

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